はいはい〜、今回の振り返りは作品を彩ってくれたキャスト陣について書こうと思います。今回は本当に素敵なキャストが集まってくれました。我ながらベストな配役だったと思っております。短い少人数なシーンが連続していたため、本当にキャストの力が大切でした。また、脚本的にも役者が行間を埋めたり深めたりする部分が多く、みんなたくさん色々なことを考えてくれました。皆様の感想に「どの役も主役みたい」とか「全部の役が輝いていた」というものが多かったのは本当に役者の尽力の賜物です。私は稽古場でみんなが色々やってくれているのを見て笑っていただけですから。

まずはAチームのみんなからです。

 

○天野国生役:丸山正吾

我が劇団の看板俳優であり、私の最も信頼のおける役者であり、良き相談相手。今回は座長としてもチームをよく引っ張ってくれていました。そして演出助手としても私の至らない部分を補ってくれていました。助かりました。本当は無責任な立場で自由気ままに演技させればさせるほど輝くタイプの役者。なので責任ある立場だった今回は稽古途中で色々気にしすぎて、演技も硬くなっていた時もありましたが、終盤以降はしっかりとやりつつもハチャメチャにやるところは大いに暴れまわってくれたと思います。なんか新しい丸山を見た感じでした。大人になったなと。でもやっぱりハチャメチャな彼の演技は継続して欲しいのでこれからは良いバランスを保って欲しいなと思っておりましたが、今回はその片鱗を見せてくれたのではないでしょうか。今後、益々楽しみが増えましたね。

 

○椚沢みのり役:さいとう雅子さん

まぁこは、私の大好きな女優さんです。演技の仕方とか動きとか全てが私の好み。彼女を見ていると色々とやらせたくなってしまう。3年前?の幸福レコードの時とは比べ物にならないくらい上手くなったというか芝居が豊かになったと思います。どんなにメチャクチャにやってもちゃんと血の通ったキャラに見えてしまうのも魅力の一つですね。でも、お芝居はものすごく繊細で芝居的な嘘がつけない素直な女優さんでもあります。Aチームの公演は毎公演お客様が暖かくそして柔らかかったのですが、おそらく彼女の雰囲気や佇まいがそのような雰囲気を作り出すのに大きく貢献していたのだと思います。みんなを自然と笑顔にしてしまう稀有な才能を持ったそんな女優。でもそれだけに止まらない繊細でそれでいてとても人間臭い彼女の感情表現は本当に圧巻だと思います。これからもたくさんご一緒したいですね。

 

○竹河礼音役:髙木聡一朗さん

抜群の存在感、キレのある立ち振る舞い、そして魅力的な特徴ある声、俳優としての魅力をたくさん持っている。それだけではなく座組を明るく円滑にする能力にも長けている。本当になくてはならない存在。今年18本?ぐらい舞台をやっているそうですが、彼が引っ張りだこな理由がよくわかりました。だって、色々な面で座組にいて欲しい人ですもん。今回、合流が最も遅かったのですが、そんなものどこ吹く風。もう本番迫ってるのにバンバンぶっ込んでくるし・・・私はそんな役者さんが大好きです笑。「とにかく現場に何か持ってきて欲しい」というのが演出をする上で私が役者に求めるものなのですが、今回は珍しくそのことを顔合わせの時にみんなに伝えました。それを実行し続けてくれたのか、はたまたただ楽しいからやっていただけなのかはわかりませんが、稽古終盤でかなり慣れてきていた私に良い刺激をたくさん与えてくれました。そして後輩である魔王:寺田真珠ちゃんのお世話もたくさんしてくれました笑。またぜひご一緒したい!

 

○椎本詩役:寺田真珠さん

カオス、ただただカオス。今回、この作品がある意味ものすごい作品になったのは、魔王:寺田真珠を初めて舞台に上げた作品であるということも大きいでしょう笑。オーディションというか面談で会った時は、ものすごく器用で柔軟な女優さんというイメージだったんです。しかし、稽古を進めていくうちに「??」という部分がたくさん出てきて「こんなに面白い素材を角を削ってしまうなんてもったいないし、お客様に失礼だ」と思い、彼女の素材を存分に生かす方向で演出をしていきました。そして面白いことにAチーム全体がそのように考えて彼女を見守ってました。なんて素敵でお人好しなメンバーなんでしょう笑。まぁこと並び、Aチームの雰囲気は彼女の影響が大であったことは間違いありません。あなたの初舞台を演出できたことは私の誇りです。すごく楽しく演出させてもらいました。また一緒にやって、彼女の新たな一面も発掘したいものです。

 

○浮橋千尋役:小林加奈さん

言わずと知れたほぼジャックメンバー。すでにボブジャックの公演には欠かせない女優さんです。抜群のテンポ感、頼りになる存在感、無駄に色気のある雰囲気。今回は今までに比べて出番の少ない役どころでしたが彼女には関係ありませんね。存在感バキバキでした。国生という役のことを考えると実はものすごく重要な役。千尋に目がいかないと国生に目がいきませんから。千尋が輝いてくれたおかげで、実はエピソードが少ない国生に色々な付加価値を与えられていくという構成だったわけです、今回の脚本が。Bチームの竹石くんが演じた尋史もそうでしたが、今回の物語の影のMVPは間違いなくこの役でした。それをしっかりと、そして驚くほど自然に演じてくれた小林さん。悪いことは言わん。早く劇団員になりなさい。

 

○賢木雪華役:古野あきほさん

なんでしょう?彼女からはすでに大物感が漂っています。以前のブログにも書いたことがあると思うのですが、出会った頃の彼女の演技には壁があったんです。それが最近ではベルリンの壁崩壊のごとく、全く見当たりません。まあ、去年のこの世の果てまでぐらいからその片鱗は現れ始めていたのですが笑。彼女の今回の役は本当に完璧だったんではないでしょうか。そんな彼女も実は稽古中、たくさん苦戦していたんです。でもそうなることはわかってました。だって脚本上は、あんな感じの性格の役ではなかったので。もう少し不思議ちゃんサイドのキャラでした。でも、稽古が始まってあきぽんがあのキャラを持ってきた時、私は「よし!」と思いました。すでに私の想像を超えていたからです。これは上手くいけば面白いキャラになるぞと。稽古終盤近く、ようやく全てを掴んだ彼女からは、もう社長令嬢という風格すら漂ってました。今のところ、彼女の天井が全く見えません。とても楽しみな女優さんです!

 

○賢木幹也役:アジェンダ・サマトゥーラ(日本名:山口峰範)さん

以前、私が外部演出した舞台でご一緒した役者さん。その頃から不思議な面白さがあり、私の大好物な役者さんでした。とにかくあの顔の濃さ!山口くんの顔だけで白飯3杯はいけます。そんな彼も、今回は大変だっただろうなあ。とにかくよく絡むあきぽんと山下真琴ちゃんがセリフ覚えるのも早いし、演技を固めてくるのも早い。山口くん「やべ〜、俺も早くやらなきゃ」と焦っていたのではないでしょうか。でも持ち前のガッツと顔の濃さで二人に食らいつき、あの強烈な性格を持つ雪華と桃に囲まれながらもなんとも言えない掴み所のない不思議な存在感を醸し出していました。賢木家の抜群のバランサーだったのではないでしょうか?賢木家は行間を埋めなければいけない部分が多かったので大変だったとは思いますが、あきぽんとのコンビで、よく乗り越えてくれたと思います。次はもう少し楽をさせてあげたいので、インド人役でオファーします。

 

○水橋桃役:山下真琴さん

もうこのお方もミスパーフェクト。立ち振る舞い、視線の送り方、セリフの抑揚、間やテンポ、本当にお見事でした。彼女にはほぼ何も言ってません。全て彼女が作り出してくれたキャラです、桃は。私、サボってたわけではありませんよ笑。だって、彼女がどんどんやってくれるので私はただ見て本当に些細な微調整をするだけでよかったんですもの。多分、本当に色々な役をやれるんだろうなあと惚れ惚れして見ておりました。今回私は、皆様にこの「山下真琴」という女優をぜひ知って欲しかったんです。もっともっと色々な団体さんの舞台に上がって欲しい。それほど芝居を見ていたくなる女優さん。もちろん、うちにもぜひまた出て欲しいし、「誰かいい女優いない?」と他の団体さんから問い合わせが来たら、絶対に彼女の名前を上げます。ボブジャック男性陣、実は彼女の芝居にメロメロなんです。本当に素晴らしい女優さんです!

 

○関屋楓役:長橋有沙さん

今回、一番泣かされた女優さん。もちろん芝居で。本当に彼女の芝居は生っぽい。決していわゆる「リアル」なお芝居をしているわけではないと思うのですが、本当に生っぽい。だからこそ奥が深い。笑顔、寂しそうな顔、泣き顔、怒り顔・・・今回の作品で様々な表情を見せてくれました。出会った頃から才能は感じておりましたが、ここ1〜2年の成長が著しい。今回、稽古や本番を通じて幾度となく彼女の芝居に心揺さぶられました。彼女の芝居の好きなところは「狂い咲き」なお芝居ではないところ。どんな感情表現にも「抑えようとして抑えきれずに漏れ出てしまう」というところがあり、私はそういう感情こそ美しく、人に見せる価値があり、そして難しい表現だと思っています。常にそうではないと思いますが、感情は複雑な方が良い。そして彼女はそれがとても上手い。心揺さぶられるわけです。また絶対出て欲しいなあ。

 

○クマオ役:蜂巣和紀さん

インパクト、迫力、何気に鋭いツッコミ、そして楓を一生懸命守ろうとする姿勢、色物キャラなのに最後はお客様の涙を誘う演技、本当にすごかった。体の大きさも相まって見ていて本当に頼もしい役者でした。普段からめっちゃいいやつなんですよ、彼は。クマオというキャラに色々なものを持ち込んでものすごく豊かなキャラにしてくれました。楓との影芝居について色々注文を付けたのですが、長橋さんと話し合ってすごく細かいところまでやってくれたのもやはり物語に厚みを出すことに非常に貢献していたと思います。怖い役から面白い役、そして今回のような優しく繊細な役も全て無理なくやれるのは本当に素晴らしい。演出家としてこれほど頼もしい役者はいませんよ。表情もまたいいんだよな〜。アンケートにもやたらと「クマオがいい」と書かれていました。私の心にもお客様の心にも色々な衝撃を与えたハッチ。また是非ご一緒したい!

 

○須磨今日一役:榊原雄さん

まだ実は舞台3回目という雄くん。それゆえまだまだ荒さはありますが、彼はとにかく一生懸命。でも大変そうな素振りは一切見せない。いつも楽しそうに演技をしている。お芝居が大好きなんだろうなあと見ていて気持ちいい役者。こういう人はどんどん良くなっていきますよ。稽古序盤、彼には一番色々と言ったかも知れません。しかし一切下を向くことなく努力してくれました。演出家もやはり人間です。こういう真摯な態度で稽古に挑んでくれると「とにかく彼を良くしたい!」という感情が芽生えるもの。彼の一番優れている部分はそういう部分だと思います。現場を一つ終えるごとに確実にそして加速度的に成長していく役者。彼のまっすぐさは芝居にも出ていて、楓のために奮闘する姿には胸を打たれました。心の中でいつも今日一を応援しておりました。大きな劇団さんに所属しているので今後ビッグになるかも知れませんよ〜。またよろしくね。

 

○明石康乃役:片岡由帆

劇団のお母さん的ポジションであり、私にも諸々意見してくれる存在。今回もたくさん助けてもらいました。私は演出する上であまり細かいところまで気にしない人間なんですが、彼女はそういう細かい部分で見落としてはいけない部分をものすごく指摘してくれる。足を向けて寝れません。芝居も決して気張らず、ほんわかとでも芯があって人間の奥深さをいつもさりげなく出してくれる。決して前に出ていくタイプの女優ではありませんが、しっかり芝居の根底を支えてくれる。今回も色々な立場で座組を支えてくれました。みんなにも小言を言ってくれるので座組がなあなあにならない。本当にお母さんですね。普段は素直に感謝の気持ちを伝えられないですが、今回もありがとうございました!

 

○田中一路役:渡辺宏明

劇団の特攻芝居担当・・・だったのも今は昔ですね。今回のなべくんのお芝居は本当に彼の成長を感じる素敵なものでした。最後の雪華を説得するシーンは特に何か特別なことをやっているわけではないのですが、ものすごくグッとくるお芝居を見せてくれました。今までのなべくんからは考えられない芝居。そして彼の芝居を客観的に見る能力はかなり信頼できます。稽古中も客観的な意見が聞きたくて、いつもなべくんに意見を求めていました。そして何と言ってもミスをしないというのが本当に毎回素晴らしいと思います。絶対セリフを噛んだりもしないし。演出サイドにとって実はこのミスをしないというのが一番ありがたいのです。彼とは長いですが、本当に成長を感じさせてくれた作品となりましたね。今回は自信を持って褒めてあげたいと思います。

 

 

Aチームは本当に早い段階で一回仕上がりました。通しもたくさんしました。その中で一回落ちてしまい、みんなで悩み、そして本番に向けて再びグーンと上がったのでやはり本番に入ってからの安定感は抜群でしたね。何があってもブレることがなかった。回を重ねるごとにだんだんハチャメチャになっていきましたが、それもブレない安定感が根底にあったからこそなせる技だったんだと思います。この作品の本当の素敵さを見せてくれたAチーム。とにかく頼もしいチームでした。全体的なバランスも最高だったなあ。本当にみなさんお疲れ様でした!!

 

次回はBチームについてです。