12月7日〜18日まで池袋シアターKASSAIで行われましたボブジャックシアターvol.21『ノッキンオンヘブンズドア』が無事に全公演終了いたしました。

連日たくさんのお客様にご来場頂き、有難いことに作品の評判も良く、劇団の動員記録を更新する公演となりました。改めて御礼申し上げます。

 

さて恒例の終演後の演出ノート的な意味合いを込めてブログを書きたいと思います。

まずは作品や制作の裏側的なお話から。

 

今回の公演、何と言っても皆様から「どっちのチームも観たくなる」と有難い感想をたくさんいただいた『性別反転ダブルキャスト』のことが皆様も一番お知りになりたいと思いますのでその辺りから書きたいと思います。

実はこの「男女の性別を反転させて芝居を作ったらどうなるんだろう?」ということは結構以前からぼんやりやってみたいなあと思っておりました。私は稽古を見ながら芝居を作っていくタイプの演出をします。例えば「役者Aが役者Bを説得する」というシーンがあった場合、全く同じ内容を「役者Cが役者Dを説得する」にした場合、おそらく違ったものになります。同じセリフでも役者が変われば同じように演出できないというかしたくないというのが根底にあります。それこそ生身の人間が演じる醍醐味だからだと思ってるからです。まあ、でも結果的にはそこまで大きな違いは生まれない。やはり脚本の流れというものは相当強いものなので。ところがさっきの例を「男性が女性を説得する」→「女性が男性を説得する」にするとなんかものすごく変わるのではないか?と思っていました。同じ脚本なのに絶対に同じにならない。というかできない。よく「男性チーム」「女性チーム」のダブルキャスト公演は観たことがあるしそれに近いものを演出したこともあるのですが、結局はどちらかに寄せる感じになってしまう。元々男性だけでやる芝居を女性だけでやる場合はおそらく男性側の芝居に女性側を寄せることになることが多いでしょう。まあそれだけではダメだろうし、それはそれで大変なのですが、この「寄せる」という手法が使えないというのが「男女反転」の魅力であり難しさなのかなあという思いがあり、やってみたいなと思っていました。

元々今回の12月公演はダブルキャストでやる予定だったので脚本の守山に男女反転をやってみないか?と持ちかけ、それに向けた脚本を執筆してもらうことにしました。

ところがここで問題発生。守山が男女反転を意識しすぎて脚本が書けなくなってしまったのです。つまり「男女入れ替わっても成立しそうな話」を考えているうちに「これでは当たり障りのない内容になってしまい、面白い本が書けない」となってしまったわけです。そのため、とりあえずAチームの性別で男女反転を意識せずに書いてもらい、演出サイドでそれを反転させた脚本にするということになりました。いや〜、予想以上に大変でした。なるべく脚本の筋を変えずに男女を反転させるのがなんともまあ・・・。なんとか脚本は反転させることができましたが、やはりBチームの芝居を作るのが大変でした。Bチームのキャスト陣も非常に苦労したことと思います。Aチームでは上手くいく流れがBチームでは上手くいかない。その連続でした。ところが稽古中盤、なんとなく男女反転にも慣れてきた頃に、面白い現象が起きました。稽古を煮詰めていく過程で、Aチームでも上手く芝居の流れが作れないところがあったのですが、そのヒントが反転させた本来の性別ではないBチームの芝居の中から見つかるということが起こったのです。そこからは本当に相乗効果。Aチームを参考にBチームを修正したり、Bチームを参考にしてAチームの芝居を変えたりと色々助かりました。普通のダブルキャスト公演ではどちらかのチームを参考にするとどうしても似通ったものになってしまうことがあるのですが、男女反転だから参考にしても同じものにはならない。「あれ?実は男女反転って普段では気づけない部分に気づけるナイスな公演形態なんじゃない?」と思うようにまでなりました。なので稽古終盤はそれほど大変ではなかったのです、実は。むしろやりやすかった部分も多かった。というのが実情です。意外とオススメの公演形態ではないかと。まあ、今回は非常に良い役者陣に囲まれていたので助かっただけかもしれませんが笑

 

他にも諸々制作過程の裏話的なことといえば・・・、

 

そうそう、今回のお話、最初の守山との話し合いの段階では、楓が主役だったんです。しかも楓周りの話だけの予定でした。認知症のおばあちゃんが引き出しにたくさんの物を残して行方不明になり、その物を頼りにおばあちゃんのことを色々知っていくという孫のロードムービー的なお話でした。その話をたたき台にして色々話し合い、もう少し世界を広げたお話にしようかとなり、探偵を登場させることにし、探偵を登場させたことでもう一つ別の事件も盛り込もうとなり賢木家の話が付け加えられ、二つの事件をなんとなくリンクさせる存在として田中さんが生まれ、探偵側の話を豊かにするために助手、和平探偵事務所、義理の兄弟が生まれました。あとは色々いじってこことここをリンクさせようとか話し合い、プロットが決まっていったんです。

その他、「え?そんな考えからあのシーンが生まれたの?」とか皆様が聞くと驚くような話もありますが、それは秘め事ということで笑

 

あと、今回の舞台セット、お話のあらすじしかない段階で美術さんと話し合って考案したものです。話も何もわかっていない段階で「色んなドアからお話が色々展開していく」という演出にしたくてドアをたくさん作ってもらいました。お気づきになった方もいるかもしれませんが、舞台奥の3つの扉は実は住み分けがされておりまして、客席から見て左のドアは「天国探偵社関連のシーン」真ん中のドアが「楓関連のシーン」右のドアが「賢木家関連のシーン」で使用していました。

 

あとあと、最初のオープニングアクト、元々は映像を使う予定ではなかったんです。本当は暗転でもいいような流れなのですが、「3つの扉を同時に開ける」というのをやりたかったのでアクトを組み込みました。そして最初に稽古場でアクトの練習をした時に、私がボソッと「映像久しぶりに使おっかなあ」と言った時、それを聞いていた民本が嬉しそうな顔をしたので「じゃあ映像使おっと」となったんです。こうやって意外とノリで舞台ってできていくものなんですよ・・・多分。でも、このアクトのおかげでラストのもう一回3つの扉が同時に開くというエンディングに繋がりました。

 

おっと、ダラダラと長くなってしまったので今回はこの辺で。次回は今回の素敵なキャスト陣について書こうと思います。