11月26日から29日まで中野ザポケットで上演いたしましたBobjack Theater vol.20『この世の果てまで』が無事に全日程を終了致しました。
千秋楽まで誰一人欠けることなく走り切れたのは、スタッフやお客様など公演を支えてくださった皆様のお陰です。改めて御礼申し上げます。
劇団としてさらに一歩前進できたと思える公演となりました。初日からのダブルカーテンコール、本当に嬉しくそして驚きでした。キャストの1人は既に衣装脱いでましたからね笑。色々なことが報われたような気がした瞬間でした。ありがとうございました。

今回の公演では、私と守山がここ3、4年外部でお仕事をさせて頂いたご縁によりたくさんの素敵なキャストさんと作品作りをすることができました。ラズベリーボーイより小野一貴くんと小西成弥くん、アリスインプロジェクトより高橋明日香さんと古野あきほさんと橋本瑠果さん。むろん常連客演の小林加奈さんと関口あきらさん。優秀な劇団員も増え、本当に楽しくそしてしっかりとお芝居を作ることが出来ました。あ、民本しょうこは劇団員扱いです、もはや。これから自分たちの世界をどんどん広げていき色々な作品に挑戦し続けていきたいところです。『この世の果てまで』は私たちを新しい世界に連れて行ってくれる作品になるような気がしています。それもこれもご声援頂いた皆様のお陰です!皆様がさらに楽しめ感動して頂ける作品を生み続けることでこのご恩は少しずつでもお返ししていければと思います。さらなる精進をいたします!

さて、毎回恒例の終演後の演出ノート的な意味も込めて公演を振り返りたいと思います。まずは今回の『この世の果てまで』の話の制作過程についてなどです。
『この世の果てまで』はvol.15の再演となりますが、結構お話が変わっております。再演するにあたって初演では描けなかった部分や足りなかった部分を守山と話し合い、新しい『この世の果てまで』を練り直しました。一番修正したかったのは「不二人が虹子をここまで愛する理由」でした。初演ではただ不二人が虹子を大好きであるというモチベーションで行動していましたが、どうもそれだけではしっくりこなかった。大いなる愛に相応する何かがほしかった。しかし不思議なもので、虹子が楽士とずっと一緒にいるために自殺してゾンビになるという大胆な行動に出ますが、そこは「愛」ゆえにだけでもあまり違和感を私は感じなかった。まあ、「虹子を思い続ける不二人の行動」と「楽士を思い続ける虹子の行動」の大きな違いはその結果が大きな間違いか間違いでないかですね。私としては「時として人は他人には理解できない動機で間違いを犯す」ということはしっくり来ますが、「時として人は他人には理解できない動機で良い行いをする」ということはしっくりこなかったというのが大きな理由です。私がひねくれているだけかもしれませんが笑。とにかく不二人の想いに厚みを出したかった。そこで不二人と虹子の出会いや過去についての要素を盛り込もうということになった訳です。でもただ回想を入れるだけでは面白くない。なので、ちょっとしたSF要素を取り入れました。そこから派生して、過去の自分を前向きにしたのは未来の自分だったという構成を思いつきました。この修正により物語が豊かになったと思っています。その他、楽士の婚約者や同僚、謎の軍服男とその妻など様々な要素を盛り込み、より群像劇感を増すことにしました。まあ、なぜこれらのキャラクターを追加したかは色々理由がありますがここでは長くなるので割愛しますね。すいません。

今回の皆様の感想で「伏線の回収」というワードがよく出てきましたが、実はこれ、私はすぐに皆様に先読みされるだろうなと思っていました。分かった上で終盤は観て頂こうとプランを立てました。そのため私としては伏線が終盤に向けてどんどん回収されていくということに重きを置かず、人と人とのすれ違いや思惑、そういった感情的な部分を描くことに重きを置きました。結果的にそれが隠れ蓑になったのかもしれませんが、「最後の方で線が一本に繋がっていく感じが爽快だった」というご意見をたくさん頂けたのかなと。うれしい誤算と言うか、すごく勉強になりました。やはり舞台はお客様に観て頂いて初めて完成するということが本当によくわかりました。
その他こだわったのが舞台での役者の立ち位置です。この作品は沢山の人物が出てきますが、実はほとんどのシーンが2~3人と少数しか舞台上に出ておりません。しかも音楽に合わせて皆が走り回ったりするようなシーン以外は大きなシーン的動きがない。キャストたちの演技はエネルギッシュで動的なものだったかもしれませんが、実はほとんど動きがないのです。立って話したり座って話したりのシーンが多い。そのため、舞台のセットとのバランスで立ち位置がなるべく美しくなるよう考えました。なるべく奥行きや高さの差が出るセットを美術さんに設計してもらい、3次元で立ち位置を構成できるようにしました。少人数でも動きがあまりなくても舞台の空間が埋まるように!これが大きなテーマでした。
そして何より、舞台のセットチェンジにはこだわりました。部屋という空間からパーンと開けた山に変わった!という感じを出せるよう美術さんと何回も打ち合わせをし舞台監督さんにもなるべく早く転換できるようにお願いしました。だって、その方がわくわくしますから。この転換を劇場で初めて見たとき、私自身すごくわくわくしたのを覚えています。美術さんと舞台監督さんには頭が上がりません。客席から「お~~」とか「キャッ!」というお客様の声が漏れたのを聞いたとき、思わずガッツポーズをしてしまいました。「さあ、皆様も一緒に冒険の旅に出ましょう」と心の中で叫んでいました。

とまあ、色々やりたいことをやらせて頂いたのですが、それもコレも優秀なスタッフさん、そして何より素晴らしいキャストの皆様のお陰です。今回の稽古場は本当にスムーズに稽古が進み、今までで一番多いくらい通し稽古をすることができました。そのため劇場入り4日前ぐらいに本番が出来るくらいに完成し、そこから皆の慣れが悪い方に出たのか、一旦衰退し、そしてまた上がった状態で劇場入りすることができました。これも初めての経験ですね。そのためか非常にブレの少ない本番を行うことができました。やはり稽古は大切ですね。
というわけで、次回はその素晴らしいキャスト陣について書きたいと思います。