うわー、すっかり書くの忘れてた!
いかんいかん、これを書かないと自分の中で舞台が終れないので、こっそり更新します。
時間が経った分、いつもより客観的に書けるかもしれませんね。というわけで、ラストホリデイ2015を彩ってくれたキャストの皆の演出サイドから見た感想を。これからの彼女たちの活躍を応援する意味も込めてお送りします。キャストを愛称でお呼びすることをお許しください!

◯三日月マホ役 橋本瑠果さん
初舞台、しかも初演技!そしていきなりの主演。ホント、よくやってくれたと思います。最初にプロデューサーからキャスティングを聞いたとき、正直、「大丈夫か?」と思いました。私が手掛けたアリスインさんの作品の中で、今回の主役『三日月マホ』は一番セリフが多いし、いかにも主役というキャラクターです。まあ、ラスホリではサラとのダブル主演という感じではありますが、台本上はサラよりもかなりセリフが多い。まずセリフを覚えることで精一杯になるんじゃないかと。そして、やはり人気のある子ですから、稽古に参加できる回数も限られて来る。実際、稽古への参加は他のキャストより1週間以上遅くなることが決まっていました。
稽古開始前に事前に一度会って色々話したり、ちょっと台本を読んでもらったりした時に『明るくて度胸があってすごく感のいい子』というのはわかりましたが、それでもやはり『初』ですからね。
前のブログでも書きましたが、私がアリスインさんで演出をする時にとにかく一番に心掛けていることは「お芝居を楽しんで好きになってもらうこと」です。彼女にも是非そうなってもらいたかった。しかし、稽古当初はそんな余裕はなかっただろうと思います。瑠果ちゃんが参加し始めたとき、稽古はもうかなり進んでいました。段取りやセリフなど覚えることもたくさんでしたし、何より舞台をやったことないんですからそこには戸惑いしかないはずです。これはもう仕方ありません。萎縮してしまうのも無理はない。なんとかまず皆に追いつかせたい。しかし本番はそこまで迫っている。私も色々と頭を悩ませました。確かに主役は大切です。でも演劇はそれ以外の役も全部大切です。とくにアリスインさんのような団体で演出を行う時は尚更です。みんな未来のある子たち。何でもいいから見せ場を作り、そこでお客様から生の反応を頂くというのは間違いなく今後の彼女たちにとって財産になるはずですから。限られた時間の中でいかに皆を輝かせられるか?これは私のこだわりでもありますので、他の役の子たちもしっかり稽古をする必要があります。どう稽古を進めるのが一番良いのか…。
散々迷った挙げ句、私は「彼女のために数日稽古の時間を割こう」と決めました。やはり主役が輝いてこそ皆も輝けると思ったからです。他のキャストの子たちにもそれを伝え、みんなに協力してくれるようお願いしました。その間、皆にはそれぞれの相手役の子たちと自主練や話し合いをしてもらうことにし、稽古を進めました。みんなも本当によく協力してくれ、私の目の届かないところや至らない所で瑠果ちゃんをサポートしてくれました。
それに応えるように、メキメキと恐ろしいスピードで吸収していく瑠果ちゃん。そして本格的に稽古に参加してから4日やそこらでセリフも全部覚え、通し稽古が出来る状態になりました!初舞台、初演技でこれって、メチャクチャすごいことなんです!ここら辺りの稽古場のわっしょーーーい!感は素晴らしかったですね。そして、これは情けないことながら結果論ですが、この期間が作品に非常にポジティブに作用しました。このみんなが瑠果ちゃんをサポートする状況、そうまさに劇中のマホと瑠果ちゃんが完全にシンクロしました。そして、この皆から愛される瑠果ちゃんの特性こそ、まさにマホそのものだったのです。
もちろん、短期間でどんどん良くなっていったのは瑠果ちゃんが元々才能ある子だったいうのもあります。しかし、それを遺憾なく発揮できる環境だったのも大きな要因でしょう。ホント、皆には感謝の気持ちでいっぱいです。
さて、瑠果ちゃんについてですが、この子は本当にお芝居の才能がすごいと思います。確かにまだまだ磨くべきところはたくさんあるでしょう。感情を爆発させたり、つながりのある芝居をしたりとかとか。でも、それは経験を積めば自ずとレベルが上がっていくものです。私が彼女を一番評価しているのは、「フラットな状態で舞台に立ち、自分の言葉でセリフをしゃべる」能力の高さです。非常に簡単のようですが、普通はいきなりそんなこと出来ません。これは百戦錬磨の経験を積んだベテランの役者さんになって得ることができる能力です。でも、稀にいるんですよね、そういう才能を持った子が。瑠果ちゃんがまさにそれです。とにかく自然!何も気負いがない。こいつだけは教えることができない能力です。これは私の考えですが、いわゆる『キャラ』もの演技というのはそれほど難しいものではありません。キャラもの演技は自分とはかけ離れた存在ですし、役者としても入り込みやすく演じていて気持ちいいですし、コツさえ掴めばすぱーんと演じ切ることが出来ると思います。一番難しい演技は『普通』に演じること。役所広司さんしかり、売れている役者さんのほとんどがこの『普通の芝居』、『普通の状態でそこにいること』がとにかく上手い。度胸がいいというかなんというか、よくもまああんなフラットな状態で舞台に立てるなあといつも感心して舞台上の瑠果ちゃんを見ておりました。そういったこともあり、瑠果ちゃんには細かい演技指導をあまりしないようにしました。見たい時に見てしゃべりたい時にしゃべる。それが瑠果ちゃんのマホには合ってると。いつの回かは忘れましたが、そのフラットな状態に感情がもの凄く乗っていった時がありましたが、あの回はやばかったです。鳥肌立ちました。そして、本番中ほとんどミスがなかったのも彼女の特筆すべきポイントでしょう。瑠果ちゃんがマホで本当に良かったと思ってます。もうマホそのものでした。
瑠果ちゃんは、これから経験を積めば、間違いなく素晴らしい女優さんになるでしょう。私もこの一回だけではもの足りません!また、絶対ご一緒してその成長の目撃者になりたいと思っております。

…うわー、めっちゃ長くなってしまった。とりあえず今日はこの辺で。