酒田市の土門拳記念館 |  ギターマニアの兄を持つネットショップ店長のブログ

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  子供の頃から兄を追いかけてギターを練習。しかしどんどんマニアになる兄について行けず挫折。
  今は兄の開発したAyersギター(JP Customシリーズ)を販売するネットショップの店長をしています。
  ちなみに趣味はカメラで、主に風景写真を撮っています。

こんにちは!

 

 

 

 

 

 

 

 秋田に帰る途中、山形県酒田市にある、前からずっと行きかった場所に立ち寄ることができました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 土門拳記念館です。カメラ愛好家の方は、昭和を代表する写真家の土門拳(どもんけん)の名前を聞いたことがあると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この記念館は、飯森山公園内にあり、1983年10月10日に開館しました。酒田市出身の土門拳氏の写真が収められています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 記念館は湖のすぐそばに建てられていて、一部が湖の上にせり出しているようにデザインされています。建築物としてもとてもすばらしいです。ちなみに、この湖の名前は「拳湖」です。彼の名前を取ったのでしょう。岩に刻まれた文字は、当時親交のあった草野心平氏による文字です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 拳湖にはたくさんのカモや鯉がいました。すぐに水辺に行くことができます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 館内から見える庭園は勅使河原宏氏による石庭だそうです。土門拳氏と交流のあった、華道草月流初代家元である勅使河原蒼風氏の長男の作のようです。石で川の流れを表しています。眺めていると心が落ち着きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 館内で作品を十分見ることができました。撮影禁止なので作品は写しませんでしたが、心に焼き付けてきました。彼の写真の特徴は、「ぼかさない」ということです。

 

 

 

 

 

 隅々までカリカリの描写を好み、寺院や仏像だけでなく、人物撮影にもこの手法を用いたので、多くの女優は、あまり彼にポートレートを頼まなかったという話があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 でも、ワタクシは彼の写真を見て、精細な撮影方法に感動しました。「一眼レフはぼかせるからいいよね」と言って、やたらとぼかす写真をみんな撮りたがりますが(ワタクシもその一人でした)、彼は細部までカリカリに描写することにより、その物が持つ魅力を最大限引き出しているように思えました。

 

 

 

 

 

 

 

 今回行って良かったのは、彼が仏像をなどを撮る時、どのようなライティングをしているか疑問だったのですが、館内のDVDを見ていたら、当時のスタッフが、1灯のフラッシュバルブを使用していたことを話していました。

 

 

 

 

 

 

 彫刻家が刀で仏像を彫るように、彼はストロボで仏像の細部まで魅力を引き出せるように「光で彫る」ような考え方で撮っていたとスタッフは話していました。そして、スタッフにはライティングは絶対にやらせなかったと言っていました。彼のこだわりだったのです。

 

 

 

 

 

 実際にどんな風に光を当てていたのか疑問に思ったので、後日、図書館に行ってきました。そしてこの本を借りてきて理解しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 土門氏は、見た目の通りに撮影することモットーとしていたので、ライティングを基本的には使わず、自然光にこだわっていました。お寺のお堂は暗いので、普通の撮影では撮ることができないので、長時間露光撮影をしていたようです。

 

 

 

 

 当時の彼の使用カメラはジナーエキスパート4x5という大判カメラでした。そして、レンズはシュナイダー・ジンマー300mm。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これをF64という信じられない最大絞りにして、時には、1時間もシャッターを開けっぱなしにして撮影していたようです。露出計を嫌がり、経験と勘で露光していたので、弟子たちが「これでは写りません」と進言した時、「そんなもの使ったら、教科書通りの画しか撮れねえんだ!」と怒鳴ったそうです。いやはや、今の常識では考えられない撮影方法ですね。

 

 

 

 

 

 撮影が夜間になると、自然光では撮れないため、この時はライティングを使用したそうです。当時は、フラッシュバルブ(閃光電球)と言って、巨大な電球のようなフラッシュを使っていました。昔の集合写真とかで、カメラ屋さんが手に持って使っていたものです。ピカッと光ると、球が切れるので、一回ごとに交換になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 土門氏は、最大絞りにしたカメラのシャッターを開けっぱなしにし、その間、竹竿の先に電気スタンドの笠を付けたフラッシュバルブを、撮影の最中に一つずつ、いろいろな角度からピカッ、ピカッと順番に当てて撮影していたようです。

 

 

 

 

 

 長い時間シャッターを開けっぱなしにするので、数十個のバルブを順番に交換しても十分の時間はありました。でも、光を当てる角度を一回でも失敗したら、撮影そのものがダメになってしまうので、土門氏はこのライティングを弟子にやらせず、自分でやったのでしょう。

 

 

 

 

 

 上から、斜めからと数十個のフラッシュバルブを仏像に当てて、様々な角度から仏像の周りを発光させていき、仏像を浮かび上がらせたのです。これが、弟子の方が言っていた「光の彫刻」なのです。

 

 

 

 土門氏の言葉によると、「仏像の一面一面が閃光電球の光に浮き出されていくさまを、眼で確かめながら写し撮っていくためである。いうならば、石膏デッサンをするとき、先ず明暗の調子を木炭でとっていくのと同じやりかたをするわけである」とのことです。

 

 

 

 もちろん、今のカメラでこれと同じ撮影方法はできないと思います。

 

 

 

 

 でも、コンセプトがわかっただけでも、ワタクシの撮影への迷いがかなりなくなりました。ギターはただ明るくきれいに撮ればいいというわけではないのです。

 

 

 

 

 商品写真やカタログ用写真としては、ギターの隅々まで明るく撮ればいいと思います。しかし、それはギターを単なる商品としてか見ていない撮影方法だと思います。

 

 

 

 

 

 ギター製作者の熱い思いや、ギター愛の詰まった撮影ではないのです。トップの明るい木の肌、サイドやバックの複雑で美しい杢目、手作りのインレイの七色の美しさ、ギターを愛し、製作者の思いを受け止めてギターのすばらしさを最大に引き出した撮影を行わなければならないと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギターの魅力を最大限に引き出すような撮影方法…、やはり暗い部屋でバルブ撮影をして、遠目にフラッシュかな?

 

 

 

 う~ん、イメージが頭に浮かぶのですが、実現させるのは試行錯誤が必要だと思います。

 

 

 

 

 

 今思っている撮影ができれば、もしかして、ギター撮影の革命になるかも…なんてねウインク

 

 

 

 

 

 でも、今度実験してみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 作品を見た後は、裏庭を歩きました。ちょうど雨もあがって、カメラを持って歩けました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 木のステップが雨に濡れていました。F16のカリカリ描写で隅々まで詳細に写さねば…すっかり土門イズムに洗脳されてます(笑)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 池の対岸に来ました。記念館の裏側が見えます。紅葉もまずまずで、秋の風景を収めました。

 

 

 

 ちなみに、土門氏は35㎜単焦点をよく使用していました。スナップには50㎜か35㎜かという論争が当時あったそうですが、土門氏は35㎜を主張していたのです。ワタクシも今回この場では、35㎜単焦点を使用しています。影響を受けやすいもので…汗。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 35㎜は50㎜よりも当然広く写ります。それで、ただ風景を撮ると、のっぺりとした風景が広がり、メリハリがなくなりやすいので、手前にも撮影物を入れ、景色を密集させて撮りました。ちなみに、手前の撮影物もぼかさないのが土門流です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 拳湖の周りには、100種類以上のアジサイが植えられています。初夏には色とりどりのアジサイが咲くことでしょう。この季節にも来たいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一周して戻ってきました。たのしい撮影散歩でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 記念館を出た後は、有名な山居倉庫へ。ケヤキ並木と昔の米蔵がとてもいい味を出していました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かつて酒田が水運で栄えた時代、多くの米を各地に送っていたことをうかがわせる倉庫群です。明治時代の建物ですが、空調管理にこだわった作りになっているようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここでも、カリカリ描写で土門拳氏に敬意を表しました(笑)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回、土門拳記念館に行って作品を見、自分のカメラ道はまだまだだと実感しました。また精進して、表現力をアップしたいと思いました。そしてギター撮影も極めたいと思いました。

 

 

 

 

 

 写真に興味ある方は、土門拳記念館に一度行ってみることをおススメします。

 

 

 

 

 

 

 

ではまた!