中間省略登記(ちゅうかんしょうりゃくとうき)とは、不動産登記において、物権が順次移転した場合に、中間者への登記を省略し、後に物権を取得した者へ直接登記を移転すること、およびその登記のことである。主に、登録免許税や不動産取得税などを節約するために用いられる。


・・・(以上、ウィキペディアより引用)・・・


平たく言うと


A → B → C と、不動産所有権が移転した場合


登記名義は、A→Cということになるというものです。


中間省略登記は民法と不動産登記法で扱いが異なります。


民法と不動産登記法で扱いが異なる。民法上は、一定要件で中間登記省略請求権(CがAに対して、直接登記名義よこせという権利)が認められますが(最判昭40.9.21など)、不動産登記法では中間省略登記は原則として却下事由となります(不動産登記法第25条第5号、第8号、第9号)。


従来は、契約書ではなく申請書副本添付で代替していましたので、登記官にばれることなく中間省略登記ができました。


ところが、不動産登記法の改正で登記原因証明情報を申請の際に提出しなければならなくなり(不動産登記法第61条)、司法書士が虚偽の登記原因証明情報を提出すると、一発で懲戒処分を食らうため(当然、公正証書原本等不実記載罪に該当する)、事実上中間省略登記ができなくなりました。

→一部例外はある。


このように、中間省略登記が事実上できなくなった現在でも、なお、民法の中間省略登記云々の議論の実益とというものがあるのでしょうか?


ちなみに、宅建業者は自己の所有に属しない宅地又は建物について、自ら売主となる売買契約・売買予約契約を締結してはならないのが原則なのですが(宅地建物取引業法第33条の2本文)、例外的に認められる場合があります(同条ただし書き)。


その例外事由に平成19年改正により、追加されたのが同法施行規則第15条の6第4号です。

→詳しくは条文を見てください。


つまり、宅建業者を中間者とする中間省略登記をいわば事実上復活させたものであるというのが専門家の指摘なのですが、まあ、宅建業者としては手間も登記費用もかかるわけですから、こうした改正は実にありがたいことだと思います。


そうすると、このような例外的な場面での中間省略登記の議論については実益があるのでは?


ただ、宅地建物取引業法施行規則第15条の6第4号は、宅建業者はあくまで一時的な所有者であり、業者が所有権を取得するときにはすでに転売先をみつけているような場合を想定しています(限りなく、他人物売買に近い)。つまり、宅建業者が自己の所有権を主張するというような事例はほとんど想定できないし、また、その資格もありません。ですので、中間者の利益云々を議論する余地はほとんどないのでしょうし、まして、それがまったくの虚偽登記であった場合は別論として、中間者の同意が得られないという場面がどれだけ起こるのかわかりません。


そのように考えると、中間者の抹消登記請求云々を問題として最判昭35.4.21や、中間者の無効主張を問題とした最判昭44.5.2の価値は今後どうなるのでしょうか?





<<参照条文>>


不動産登記法


(申請の却下)
第25条  登記官は、次に掲げる場合には、理由を付した決定で、登記の申請を却下しなければならない。ただし、当該申請の不備が補正することができるものである場合において、登記官が定めた相当の期間内に、申請人がこれを補正したときは、この限りでない。
・・・(略)・・・
五  申請情報又はその提供の方法がこの法律に基づく命令又はその他の法令の規定により定められた方式に適合しないとき。
・・・(略)・・・

八  申請情報の内容が第六十一条に規定する登記原因を証する情報の内容と合致しないとき。
九  第二十二条本文若しくは第六十一条の規定又はこの法律に基づく命令若しくはその他の法令の規定により申請情報と併せて提供しなければならないものとされている情報が提供されないとき。


(登記原因証明情報の提供)
第61条  権利に関する登記を申請する場合には、申請人は、法令に別段の定めがある場合を除き、その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない。

宅地建物取引業法


(自己の所有に属しない宅地又は建物の売買契約締結の制限)
第33条の2  宅地建物取引業者は、自己の所有に属しない宅地又は建物について、自ら売主となる売買契約(予約を含む。)を締結してはならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一  宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得する契約(予約を含み、その効力の発生が条件に係るものを除く。)を締結しているときその他宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得できることが明らかな場合で国土交通省令・内閣府令で定めるとき。
・・・(略)・・・


宅地建物取引業法施行規則


(法第33条の2第1号の国土交通省令で定めるとき)
第15条の6  法第三十三条の二第一号 の国土交通省令で定めるときは、次に掲げるとおりとする。
・・・(略)・・・
四  当該宅地又は建物について、当該宅地建物取引業者が買主となる売買契約その他の契約であつて当該宅地又は建物の所有権を当該宅地建物取引業者が指定する者(当該宅地建物取引業者を含む場合に限る。)に移転することを約するものを締結しているとき。