彼氏のケータイを見せてもらうための一言9パターン
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いきなり問題です。


許可なく、他人の携帯のメールを見た場合、どのような罪に問われるか。


これについては、結論からいうと、犯罪になりません。


考えられるのは、信書開封罪(刑法第133条)ですが、メールは信書ではないため、構成要件に該当しません。


それでは次の問題。


日ごろから夫Aの浮気の疑惑を抱いている妻Bは、Aが就寝中であることをいいことに、Aの携帯の着信履歴等をみた。そこには、Bの知らない女性Cとのメールのやりとりの記録があった。激怒したBは、着信履歴や未開封(Aがまだ閲読していない)のCからのメールをみて、これをすべて削除するとともに、住所録の電話番号やメールアドレス等も削除した。このとき、Bの罪責如何?


前述したように、Bには信書開封罪は成立しません。


プライバシー侵害の問題はありますけれども、直接それを処罰する規定はありません。


問題は、着信履歴や未開封のメール、電話番号やメールアドレスを削除したこと。これについては、何らかの罪に問えそうです。


器物損壊罪(刑法第262条)・・・といいたいところですが、その前に私用電磁的記録損壊罪(刑法第259条)の検討が必要です。なぜなら、刑法第262条が「前3条(刑法第258条から第260条)に規定するもののほか」とあることから、私用電磁的記録損壊罪にあたれば、器物損壊罪の検討は不要になるからです。


まず、「権利又は義務に関する」かどうかを検討する必要があります。

→なお、条文は「権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を毀棄した者」とありますが、「権利又は義務に関する」が「他人の文書又は電磁的記録」まで修飾するのか、「他人の文書」しか修飾しないのか、一応争いの余地はあると思います。仮に、前者なら、「権利又は義務に関する」電磁的記録を損壊しない限り、私用電磁的記録損壊罪は成立しませんし、後者なら「電磁的記録」を損壊すれば、私用電磁的記録損壊罪の構成要件には該当することになります。

 ただ、普通に考えて、電磁的記録も文書に準ずるものとして扱われていることから、「権利又は義務に関する」が「他人の文書又は電磁的記録」まで修飾すると考えるのが素直でしょう。以降、この見解にたちます。


単なる事実証明のための文書等は同罪の客体にはなりません。


メールの内容が、単なるデートや食事等の約束でしたら、「権利又は義務に関する」にはあたりません。しかし、「マンションを買ってあげる」とか「店を出す資金を貸してあげる」などでしたら、贈与・消費貸借契約の内容であるため、「権利又は義務に関する」にあたりえます。

→もっとも、公序良俗違反で契約自体が無効となる余地はあるが、それでも外見上は契約の体裁がある以上、「刑法的」には「権利又は義務に関する」ということは可能。


仮に、「権利又は義務に関する」にあたるとして、次は「電磁的記録」にあたるかどうかです。


定義は刑法第7条の2にあります。


携帯は一種のコンピューターであり、中に記憶装置が内蔵されています(別の場所のサーバに記録されていても同様)。


メールや住所録、着信履歴はまさに「記録」であり、これが「電磁的記録」にあたることは間違いないと思います。


電磁的記録の場合の毀棄とは、データの損壊や抹消等も含みます。


これは、いわゆる効用喪失説に立たなくても、「毀棄」にあたりうるでしょう。


そうすると、本件では私用電磁的記録損壊罪にあたると考えることができます。

→浮気調査のためという理由で違法性阻却されるとは考えづらい。


仮に、メールの内容が「権利又は義務に関する」ものでなかった場合は、私用電磁的記録損壊罪には該当しません。


この場合は、器物損壊罪の検討をします。


効用喪失説に立った場合、携帯自体を物理的に破壊しなくても、器物損壊罪は成立しますが、履歴等を削除しただけでは携帯としての効用は喪失されていません


そうすると、器物損壊罪も成立しません。


メールの内容が「権利又は義務に関する」ものであるかないかの違いでここまで差があるのは不当だ、そのように感じる人もいるでしょう。


しかし、刑法第259条は条文上「電磁的記録」をカバーしているのに対して、刑法第261条は「電磁的記録」をカバーしていません。条文上は「他人の物」としか書いてありません。


「物」とは、有体物をいい、固体・液体・気体をさします。情報やデータの類は「物」ではありません。


条文に書いていない以上、罪刑法定主義の観点からいくら当罰性があっても処罰はできません。


つまりいくら、データを削除しても、携帯そのものの効用が喪失したと評価しない限り、器物損壊罪は成立しないことになります。


もっとも、携帯のデータのみならず、アプリやらソフトやら携帯としての必要な機能まですべて削除してしまった場合は、もはや当初の携帯としての機能は著しく損なわれたので、効用喪失されたと評価でき、器物損壊罪が成立しうることになります。


<<参照条文>>


刑法


第7条の2 この法律において「電磁的記録」とは、電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。


(信書開封)

第133条 正当な理由がないのに、封をしてある信書を開けた者は、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。


(私用文書等毀棄)

第259条 権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を毀棄した者は、5年以下の懲役に処する。


(器物損壊等)

第261条 前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。