日本人社長報酬トップはセガサミー里見会長の4.3億円
 遊技機器メーカーのセガサミーホールディングスは24日、有価証券報告書に里見治会長兼社長の2010年..........≪続きを読む≫


株式会社の役員報酬は、原則として株主総会で決定します(会社法第361条第1項)。

→もっとも、同条は「定款に当該事項を定めていないときは」という留保があるため、定款で定めてある場合は株主総会による必要はなく、このような会社も多い。


ところが、判例の立場だと、取締役の報酬決定は最高額決定で足りるとする(大判昭5.4.30など)。しかも、一旦決定すれば、それを変更しない限りいちいち株主総会で決議をしなくてもよいとされています(大阪地判昭2.9.26)。


これは受験通説になっていますので、ほとんどの受験生はこの立場に立って書くでしょう。


しかし、それでいいのでしょうか。


通説的見解によると、最高額決定で足りるとするのは、いわゆるお手盛り防止とすることにあります。

→報酬決定はもともと取締役の業務執行権の範囲内である。しかし、報酬決定権をもつ者と報酬を受け取る者が同一であれば、そこに手心が加わり、どうしても水増し、過大評価してしまうおそれがあり、もって会社財産をあやうくしてしまう危険性がある。ということです(これが、「お手盛り」の内容。ここまで書かないと、「お手盛り」の意味をわかっていない、ととられかねない)。

→なお、監査役についても同様の報酬規定があるが、これはお手盛りではなく、監査の独立性維持のための規定。たまに、混同して書く受験生がいるようです。


お手盛り防止を内容を以上のようにとらえる限り、最高額決定さえしておけば、少なくとも会社財産の危殆は株主の責任の範囲ということになり、お手盛りという弊害はない、ということになりそうです。


これだと、取締役個人の報酬がわからなくなります。

→役員報酬は帳簿に記載しなければなりませんので、いわゆる会計帳簿閲覧請求権で開示請求をかけることは可能です(会社法第433条)。ただ、議決権の3%を有していないといけないので、行使には制限があります。それに、株主側からイニシアティブかけていかないといけないので、大企業の場合のようにそもそも3%集めるのすら大変な場合だと、正直どうしようもありません。


委員会設置会社の場合は、報酬委員会が取締役の個別の報酬まで決定します(会社法第404条第3項、第409条)し、決定過程自体も社外取締役を招いてのものですので、ある程度の透明性は担保されます。しかし、そもそも委員会設置会社という形態が少ないということ、設置自体任意であること、委員会設置会社自体に問題解決を求めるのは難しいものと思われます。


お手盛り防止と言うが、お手盛り防止であれば、報酬を好きに決めていいというのは論理の飛躍にも思えます。


といいますのも、個人投資家の多い上場企業の場合、企業経営よりも企業収益、ぶっちゃけ、黒字がどれだけでているかのほうが関心があります。


換言すると、赤字出ているのに、過大な報酬をもらっている役員を許す投資家はそうそういません

→中小零細企業なら、地縁血縁等で会社の財政状況よりも役員の努力や「過去の」功績等をもとに、「現在の」財政状況等から過大な報酬を役員がとっていても別に文句を言うことがない例も多いし、仮に文句があっても、株主によって会社の監督が十分可能なので、株主総会の意思が割と強くはたらき、問題はそれほど大きくない。


今期無配なのに、役員たちは何千万もの報酬をもらっている。


そして、それを追及しようにも、それを知るすべがない。


それはあまりにおかしい。株主をなめた規定ではないのか。


少なくとも、上場企業のように、零細個人投資家の多い会社については、株主による会社管理が十分に期待できない。


 ↓ つまり


会社に対してほとんど発言権のない個人零細投資家たちにとって、唯一の救済は、株式を売却することによる投下資本の回収である。


 ↓ そのためには


上場企業については、そんな個人零細投資家たちに投下資本回収、および、新たに投資家になろうとする者のための判断材料として、できる限りの企業経営に関する情報を開示する必要がある。


 ↓ これは


投資がグローバル化した現代投資社会における社会自体の要請である。その中には、経営に携わる役員たちの経営活動がどのようなものであるか、そして、それに対する報酬がどの程度のものであるかということも含まれる。

 

 ↓ なぜなら


成果に対して過大評価される役員が選任されるような会社であれば、投資家たちは自己の判断で、その会社とは縁を切る、つまり、他者に株式を売却して、投下資本の回収を図ることを考えるからである。


 ↓ さらに


お手盛り防止という観点からすると、役員自身に過大評価をすると、自社の株式の売却が進むことになり、それがひいては自社の株価下落につながることになる。そうすると、株価の下落に対する役員の責任問題にもなるので、過大評価をすることを避けるようになる。


 ↓ したがって


上場企業については、取締役の個人報酬についても開示されるべきであると考える。


ただ、現実問題として、株主自身が個別報酬の決定まですることは、困難かと思いますので、開示の段階にとりあえずはとどめたいと思います。



※某テレビ番組で、取締役の報酬が個別開示されないことについて、憤慨していた個人投資家がいるという報道があったので、「社会的事実として」、個人投資家による個別取締役報酬額の開示要求というものはあるのだろうと推測します。

→社会的事実が存在しないのに、さもそれがあるかのように書くことは大変危険です。

※2010年3月31日の「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」

 役員報酬開示は、役員区分ごとの報酬総額と種類別の総額を記載しなければならない。加えて、連結報酬総額が1億円を超える役員の氏名や役員区分、報酬額なども必要だ。そして報酬額と、その算定方法についての決定方針がある場合には、方針内容と決定方法も明らかにする必要がある。

 具体的には、取締役と社外取締役、監査役と社外監査役が、それぞれいくら報酬をもらっているのか、その報酬は固定報酬がいくらで、業績連動報酬がいくらか、ストックオプションがいくらなのかなどを細かく明らかにしなければならない。


※参考「報酬総額1億円以上の社長は8%--役員報酬の個別開示はなぜ必要か?」↓↓

http://japan.zdnet.com/sp/report/story/0,2000056431,20411862,00.htm


<<参照条文>>


会社法


(取締役の報酬等)
第361条 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
一  報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
二  報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
三  報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容
2  前項第二号又は第三号に掲げる事項を定め、又はこれを改定する議案を株主総会に提出した取締役は、当該株主総会において、当該事項を相当とする理由を説明しなければならない。


(委員会の権限等)
第404条第3項 報酬委員会は、第三百六十一条第一項並びに第三百七十九条第一項及び第二項の規定にかかわらず、執行役等の個人別の報酬等の内容を決定する。執行役が委員会設置会社の支配人その他の使用人を兼ねているときは、当該支配人その他の使用人の報酬等の内容についても、同様とする。


(報酬委員会による報酬の決定の方法等)
第409条  報酬委員会は、執行役等の個人別の報酬等の内容に係る決定に関する方針を定めなければならない。
2  報酬委員会は、第四百四条第三項の規定による決定をするには、前項の方針に従わなければならない。
3  報酬委員会は、次の各号に掲げるものを執行役等の個人別の報酬等とする場合には、その内容として、当該各号に定める事項を決定しなければならない。ただし、会計参与の個人別の報酬等は、第一号に掲げるものでなければならない。
一  額が確定しているもの 個人別の額
二  額が確定していないもの 個人別の具体的な算定方法
三  金銭でないもの 個人別の具体的な内容


(会計帳簿の閲覧等の請求)
第433条  総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主又は発行済株式(自己株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を有する株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
一  会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二  会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
2  前項の請求があったときは、株式会社は、次のいずれかに該当すると認められる場合を除き、これを拒むことができない。
一  当該請求を行う株主(以下この項において「請求者」という。)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
二  請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
三  請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき。
四  請求者が会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求したとき。
五  請求者が、過去二年以内において、会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。
3  株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、会計帳簿又はこれに関する資料について第一項各号に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
4  前項の親会社社員について第二項各号のいずれかに規定する事由があるときは、裁判所は、前項の許可をすることができない。