(剣山からの縦走ルート側にある三嶺の鎖場)



三嶺の本体に登る山道は、急斜面が続く一本道です。


ちなみに、三嶺の日帰りルートとしてよく用いられる名頃登山口からの山道には鎖場はありません。


剣山からの縦走ルートのみに存在します。


この岩はその登り坂の第一関門であり、ここから鎖が始まります。



ここの岩場は距離こそそんなにありませんが、急斜面なので重い荷物を背負っていると結構しんどいかも知れません。



登り切ると、ここから再び急斜面に山道が続きます。



天狗塚が見えます。


本当は2日目の朝に、三嶺ヒュッテからここに向かうつもりだったのですが、体力と水分がそこまで残されていませんでした。



登った岩場の上。


あまり高いところが得意ではない私は、怖くて下を覗きませんでした。



ここからフーフー言いながら、しばらく登って行きます。


山頂が見えるところまで来ました。


まだこんなにある。


すでにこの時点で、水が無くなってしまいました。


喉がカラカラです。


ここから再びクマザサが群生しています。


ゆっくり登りながら脚元をよく見ると、時々そのクマザサの葉っぱに朝露が降りているのを見つけました。


喉の渇きに耐えられなかった私は、クマザサに着いている朝露の水滴を舐めました。


驚くことに、クマザサの朝露はとても甘く感じました⁈


そう言えば、ベトナムやカンボジアなどで水蓮の葉っぱに溜まった朝露を小舟に乗った若い女性が器に集めておられるのをテレビで見たことを思い出しました。


その水で墨を擦ると良いと聞いたことがありますが、あの水も飲むと甘いのでしょうか?


他のクマザサの葉も舐めようと、水滴が付いているのを探してみます。


濡れている葉をよく見ますと……私の顔にたかり続ける小蠅や小さな虫もその葉っぱに留まって、その朝露を吸っているではありませんか⁈


このような水のないところでどうして虫が生きていけるのか?


不思議でなりませんでしたが、朝露などを吸って水分補給をしていたのですね。


知りませんでした。


先客がいて舐めれないことを悔しがる私。



斜面が急なので、鎖やロープが垂らされています。


私は渇きと疲れもあり、獣のように四つん這いになって登って行きました……。


登るのにどれくらいかかったのか?


よく覚えていませんが、水場で水を汲むことだけを考えながら、這うように登り続けた私は……。


ついに2日がかりで目指してきた、念願の三嶺の山頂に到達しました。


朝から歩いてきた山々を振り返ります。



下の写真中央に見えるのが、山頂から見た出発地点の剣山の次郎笈。



チリチリと私を焼く直射日光を肌に感じながらも、何とも感慨深く周りを見渡します。


ここが標高1894メートル。


三嶺は、日本200名山のうちの1つに数えられます。


ここからの360度を見渡せる風景と高度感は、四国山地の中でも1位、2位を争う見事な景色、美しい風景だと言われています。


以前に、

富士山に登った時には、他に人を連れて行きましたが、今回は1人でやり切ったことに意義を感じています。


お釈迦さまは、伝道に旅立つ弟子に向かって、


「汝、2人連れで行ってはならない。道は必ず1人で歩みなさい。修行者は自らを島のようにせよ」


と、仰ったと言われます。


集団に属さない独立自尊の姿勢こそ、お釈迦さまの説かれる実践の根本精神なのです。


短いながら、日頃の心の垢が少し払われた想いがしました。



山頂より天狗塚を眺めます。


途中、斜面が大きく山体崩壊しているのが分かります。


古に、剣山より山中を歩いて天狗塚まで到達した修験者はおそらく、


「あんた、あそこまで行ったんかいな!すごいなあ!あんたは天狗やなぁ!」


と自然、天狗の称号と仲間からの称賛を受けたに違いありません。



この時、すでに午前9時30分をまわっていました。


名頃登山口より上がってくる仲間を待つ間、足を引きずりながらも、お待ちかねの水場を探しに行くことにしました。


続く→