今年の8月終わり、現存する中で四国最古の木造建築である豊楽寺薬師堂にお参りしてきました。
高知県大豊町のすごい山の中にあります。豊楽寺は日本三薬師の筆頭に数えられるほどの、本来なら有名なお薬師さまなのです。

光蔵寺も山の中のお薬師さまなので、非常に親近感が沸きますね。

最近では、人口密集地の丘の上や平野部のお寺や神社が非常に栄えているので、なんでこんな人もいない山奥にお寺なんか建てたんだろう⁇と不思議がられる方が多くなりました。

しかし、古来では、古い由緒ある格式高いお寺ほど平野部ではなく山の中に建てられました。

一つは、その土地自体に祖霊の地、禁足地としての霊性があること。

これを山中他界の信仰と言います。

もう一つは、平野部を流れる大きな川の上流であることから農事における祈願性、森林伐採によって水産物が取れなくならないように川や海からの恵みを守る神子の森・神域としての役割を担っていること。

これを水源信仰と言います。

おおよそ、この2つの信仰が相まって山奥にお寺や神社が建ち地元の方だけではなく平野部の方々にも大切にされてきたのが、こういう山間部のお寺だと言えます。

しかし、敗戦後に変わった教育により人の価値観が変わり、また農林水産業に携わる人の人口が減少していることなどにより、地方や全国の中山間部は過疎化が進行、現代の日本では衰退の一途を辿っているのが現実です。
豊楽寺は真言宗のお寺で、現存する薬師堂は平安時代末期1151年のもの。ちょうど鎌倉時代に移行する直前くらいに建てられたお堂がよく残ったものです。
大豊町には大杉神社があり、美空ひばりも訪れた御神木の日本一の大杉がありました。樹齢は3000年以上とも言われ、こちらも土佐の古文書などに1000年前には既に巨木であった旨が出てくるそうです。
田舎の家やお寺などは維持が難しい時代に入っていますが、何とか存続して欲しいと願っています。