六月例会選句 

一  山里の音断ちにけり田植後

二  母の日や妣の人生偲びをり

三  おしまいの針しっかりと春の縁

四  咲きみちてにせアカシヤとよばれけり

五  片足立ちでズボンはけない更衣

六  結願寺無事に辿りて山つつじ

七  ものの芽にあまねく優し小糠雨

八  早苗田の水筋走る夕野分

九  父母にまず供へけり豆の飯

十  歩みましょう藤の花浪そよぐ日に

一一 熟睡嬰(うまいご)の笑こぼしをり花えりか

一二 野も山も青葉の薫る峡の里

一三 新緑の香に包まれし野の一樹

一四 リラの香に誘われ一歩また一歩

一五 ポポポポとたんぽぽ日和婆(ばば)元気

一六 新茶もむ手のすべすべとしておりぬ

一七 藤娘昔も今も愛らしき

一八 郭公やつかれ集まる足の裏

一九 豆靴をやっとはかせる春祭

二〇 満開の花びら惜しむ庭に佇ち

二一 春の花々みな正直や留守の庭

二二 退院のしらせのありぬ夏燕

二三 裏山をふと見上ぐれば藤の花

二四 懸り藤織りなすタオル美術館

二五 友絶えてふる里遠し栗の花

二六 まだ何も蒔かぬ畑の広さかな

二七 匂ひのせ菜の花畑の波静か

二八 大安吉日四囲の若菜の燃え立てり

二九 旅寝覚めなにやら哀し竹落葉

三〇 ぼうたんの開ききったる匂ひかな

三一 移る世を水に浮べて桜土手

三二 蟻担(かつ)ぐわれもわれもとパンの屑

三三 ぼた餅の落ちてきそうな春の月

三四 牡丹の香に魅せられて立止り

三五 薫風や一口甘し祝酒

 朝倉句会