私は、母の血を色濃く受け継ぎ、私から父の面影を推測するのは、困難である。幸せなことに母の美貌を受け継ぎ、幼い頃から東家のメイドに必要なことを母から伝えてもらった。東家のメイドに一も二もなく着任した。
私の父は、先代社長というのが大方の見方であるが、社長の年齢から、そろそろ莫大な遺産相続が絡むため誰も口にしない。
現社長という者もいるが社長婦人が良家の潔癖なお嬢様で、この見方についても誰も口にしない。
また、母が会社で事務をしていた頃、関わっていた何人かの男性社員の一人と言う者もいるが、破格の条件でメイドとして受け入れる際の条件の一つに過去の男女関係の精算もあったのでこれに関しては、母から口にすることは、ないだろう。
また、母の容姿から東家の男性使用人も何人か熱心にアプローチしていたという。その中の一人という者もいる。
また、年間50日の年休で母は各地に旅行しており、その行き先で・・・と言う者もいる。
母が仕事用にあつらえたメイド服は、多種多様だ。色は白黒が主体だが、紫・ピンク系も多く、和服に合わせるエプロンもたくさんある。季節や仕事にあわせて選ぶのも大切な仕事である。東家には、男の使用人も何人かおり、力仕事や、掃除は使用人、料理は調理専門の家政婦がやる。母の仕事は来客の接待と東家の家族の三食の配膳が主だったものであり、それは私も同じである。母には、十分な報酬が与えられており、私は何不自由なく大学を卒業して、そのまま東家のメイドになった。私の父に関することについては、何度か母に尋ねたが、そのうちにあなたにとって本当に必要な時が来たらね、と言って今だに教えてくれない。東家の人間もこの件に関しては、口をつぐんでいる。あるいは本当に知らないようである。
つまりは成り上がりの先代社長がメイドである母に求めたものは、さまざまな雑務だけでなく美しさであった。こんなに美しい女性をメイドとして住まわせているのか、と周囲に思わせたい見栄である。
それを私も引き継いでいるので、東家にいる時には、一部の隙もないように、女性としての美しさを完璧に整える。メイド服もたくさんの種類があり、季節、仕事内容によって着替える。こんな時には、という決まりを母が20年間かけて確立してきた。
先代社長にとってメイドは、高級家具と変わりなかったのだ。
来客に接する時には、必ず洗い立て、もしくは新品に着替える。来客用は、そのどこかに母の魅力を際立たせる工夫がされている。お茶を出す際、腰をかがめた時に下着が見えるのでは、と思わせるくらいの丈の短いスカート。また、胸の谷間が確認できる襟のデザイン。夏場には、下着の存在がわずかながら確認できる薄手の素材の上着。