一旦、いじめが始まると、それは、学校と変わりがなかった。教師と保護者の存在がない分、かえってあからさまだ。大人も子供も変わりがない、同じ人間だ。いつものように割りの悪い仕事を押し付けられ残業をしていると、いつの間にか課長と二人きりになった。課長は、年功序列で課長職を得ているというのが職場内の評価で、その通りだと私も感じている。若い頭角を表わしている社員は、課長を小馬鹿にするようなことがある。感性も衰えているのか、鈍いのか、課長はただ一人私にも公平に接してくれていた。あと少しで定年の課長は私の父より年上である。
そんな課長が突然○○君ちょっと、と私を呼んだ。私に仕事の進捗状況を聞き、そうか、もう少し頑張るか。と言った。普通と同じ部下としての扱いを受けたのが嬉しい。自席に戻って、課長の言葉を何度も心で繰り返していると、これまでされてきた仕打ちが怒濤のように押し寄せ、涙が止まらない。課長と二人と思うと声を出して泣き始めてしまった。
二人に対する私の関わりに落ち度があったのかと思い、これまでの関わりを初日から丁寧に何度も振り返った。この時のことかな?という事はいくつかあったが確証は持てなかった。
やがて実態が少しずつ見えるようになってきた。
私を避けるのは、職場の女性全てだった。これに気付いた頃、職場の男性社員は、初日と変わりなく接してくれたが女性社員の異変を察した若い男性社員は、避けるようになっていった。
それは、配属されて10日ほど経ったある日、本当に突然始まった。異変は同期入社の深雪と一年先輩の茜さんに表れた。深雪とは、同期として、困っていることや職場の情報を交換して、仕事帰りは食事をして明日も頑張ろうね。と励ましあってきた。いい人と一緒で良かった。と思える関係になりつつあった。茜先輩は、誰もがうらやむような美人で職場の花。そんな素敵な先輩が、新人の私が困っていることを察知し、優しく教えてくれた。茜が話しかけてくれるだけで同性なのにドキドキした。それは、深雪も同じで、二人の一年の目標だった。一年後には、茜先輩みたいになれるかな?と言い合ってきた。
そんな二人が私のそばに近づかなくなった。私から歩み寄って話しかけても、これまでのことがなかったかのように他人行儀である。茜と深雪は、これまでと同じ素敵な先輩と可愛い新人である。