紙袋に詰まった母の悲しみを感じていると、トイレから戻ってきた。いつもの明るいお母さんの顔。お兄ちゃん、もう大丈夫だから。思いきり泣いてすっきりしたわ。本当よ。今まで泣きたくても泣けなかったんだと思うの。まひろの前じゃ泣けないでしょ。お兄ちゃんにまた助けてもらっちゃった。一年分は泣いたからあと、一年は大丈夫ね。
お母さん、映画見ようか。いいの?おばさんと一緒で?お母さん、でしょ。と言って、紙袋を全て持って歩き始めた。バック一つになった真由美は両手で肘をつかんでついてくる。まひろには、内緒だね。
隣のビルの映画館、平日の昼なのですいている。空いている隣の席に荷物を全て置いて映画を見た。隣の席にいる女性の悲しみを共有してあげたい。そんな思いで手をつないだ。そっと握ると握り返す。力を入れると入れ返す。握った手からお母さん僕がついてるから、と必死に伝えた。いつしか頭が僕の肩に乗っている。何の映画か覚えていないが幸せな時間を共にした。
買った商品の説明を楽しげにしていたと思ったら突然黙りこんだ。表情が暗くなったと思ったら、バックからハンカチを取り上げた。涙を拭きながら、お兄ちゃん、私、病気だわ。テーブルに顔をつけ、泣いている。わかるでしよ。依存症。必要ないのにデパートに来ちゃうの。まひろも気付いてると思うの。
そうか、お母さん買い物依存症なんだ。二人で頑張っている暮らしが限界なんだ。
お母さんしっかりしてよ。まひろちゃんがいるでしょ。いつも家のことしっかりやっているでしょ。
掃除や片付け、庭の手入れをいくらしたって誰も見てくれないの。まひろは、私には勿体ないような娘だけどまだ子供だし面倒みなくちゃいけないのよ。私、毎日誰のために頑張ってるの?あの人は、まだまだ帰ってこないし。
返す言葉がない。
ひっくひっく泣く姿を黙って見ていた。
こんな顔みせられないわ。と言ってトイレに行った。残された紙袋には、真由美の悲しみが詰まっているんだ。
それ以来、週に一度くらいの間隔でお兄ちゃんたすけて、メールが届くようになった。余計な心配をさせないように、理由も付いているが。他愛ないことも多く私の依頼人は、お母さんでもあり、メル友である。
配信され、どうしたの?
と返信すると。
デパートにいるんだけど荷物多くて、持てないの。
分かった。デパートの中でお茶してて、一時間くらいで行くから。
デパートの喫茶店に入り見回すと、お兄ちゃん、ここだよー。と手を振っている。席の周りを専門店の紙袋が囲んでいる。ありがとう、ご馳走するから。上品に盛られた料理を食べる様子を見ながら、紅茶を飲んでいる。そして、楽しいね、デートしてるみたい、と言ってニコニコして一つ一つの紙袋について説明し始めた。