母に会いに | Dream Lights

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Blieve ! Sea of Dreams
ハーじゅう〜ツェ〜

入口の受付で記帳すると、マスクを渡されました。
3階だと聞いていたので、エレベーターの↑ボタンを押したのに、反応せず・・・
しかたなく、階段を使おうとしましたが、見たところ階段が見当たらない・・・

聞くと、エレベーターは暗証番号を押して作動させるようです。

階段はきっとどこかにあるのだと思います。
まさか、階段がない!?

入居者がエレベーターの暗証番号をわかっているとは思えなかったことと、階段が見当たらなかったことは、ある意味この施設の性格上理解できましたが、ということは、個人としての行動は各フロアで完結しているということになります。

3階ロビーに6~7人の方がテーブルを囲んで座っておられました。
大型テレビが映っているものの、音声はほとんど聴こえないくらい。。。

ほとんどの方がテレビを観ている様子もなく、静かにうつむいて座っている方ばかり。
母もその中のテーブルの端に座っていて、同じように何もせず、下をむいて手を摩っている姿を見たときは、自分の中でも複雑な気持ちになりました。

ここがどこなのか、なぜここにいるのか、母は不安がなかったのだろうか・・・

それにしても、なぜここのお年寄りはみんなそうやって静かにうつむいて座っているのだろう。
ボクが母に話しかけても、誰一人振り向くでもなく、聞こえていないかのように、その状況は変わりません。
認知症と診断され、要介護認定を受けた方だからなのか、あるいは、そういうものなのか、ボクにはこの状況が理解できないままでした。

母は話しかけると、ごく最近の母のままで、『老人ホーム』に入ってから特に様子が変わったということはありませんでした。
ただ、ボクのこともわからなくなるのは時間の問題だと思う。。。
今は、息子の名前はわかるけど、目の前にいる歳食ったボクと、その名前の息子が、すぐには一致しないようです。
ただ一緒に行ってくれた娘夫婦の、孫であるボクの娘のことは、もうわかりませんでした。

父が亡くなって30年近く、ずっと一人で暮らしてきた母は、認知症になりながらも一人で買い物に行き、食事も一人で作り、ずっと同じ生活を続けてきました。
もちろん、このままの状態でこの先も続けていくことは出来なかったのでしょうけど、それでも一人で気を張って生きてきたんだと思います。
今は3度の食事も作らなくていいし、ましてや買い物にも行かなくてもいいわけで、その生活はこれからの母にとって果たしてどうなのか、ボクには何も言う術がありません。

いま置かれている立場を、母はどう思っているのだろう。
父が亡くなっても一人暮らしを選んだ母は、気持ちのどこかに、今の場所も自分で選んだ道なんだと納得しているんじゃないか、そんな気がしました。