いつだって、俺に心地よい空間を提供してくれるキースに、俺は 甘えた。
「君が言ってくれればいつでも会いに行くよ!」
俺には月に何度か、究極に寂しくてたまらなくなる夜がある。
「キース…、」
試しに呟いてみた。
「ワイルド君…?」
5秒。
直ぐに返ってきたメールに泣きそうになった。
彼の言葉通り、キースはいつでも本当に待っていてくれた。
その次の夜も、また次の夜も。
「寂しかったのかい?」
「待ちきれなかったのかい?」
俺はキースの言葉に甘える…、あまえる…。
「ワイルド君」
「虎徹くん」
「虎徹…、」
あぁそうだ、それ…俺の、名前。
いつもの無邪気な声とは違う、
ひどく大人びた、低い声が脳内に響く。
もっと、聞かせて…。
心地よい柔らかな声が俺の身体を熱い何かで満たしていく。
「おいで。」
両手を広げて迎えてくれるキースに抱き付く。
背中に腕を回して、肩口に顔を埋めて、
肺いっぱいに息を吸い込めば、俺の大好きな愛する人のやさしい香りで胸がいっぱいになる。
キラキラ光る柔らかなハニーブロンドに指をからめてクシャクシャと掻き乱す。
何処までも透き通った綺麗なブルーアイに映る俺に嬉しくなる。
触れ合う肌からじんわり伝わる体温が愛おしい。
トクトクと聞こえる鼓動に耳を傾ければ、途端に押し寄せる安堵感に目蓋が重くなって…。
愛されていると、感じた。
もう、離れられそうにない。
それからもキースは飽きもせず、俺と一緒に歩いてくれた。
道の途中途中で立ち止まっては寄り道し、色んな人に手を伸ばして掴もうとする俺に、愛想も尽かさず、いつも傍で手を繋いでいてくれた。
けれど、バニーに伸ばした手を見て、少しだけ瞳を伏せた…ように見えた。
俺は見て見ぬフリが出来ない。
手を伸ばさすにはいられない。
けど、キースの手も離したくない。掴んでいて欲しい。
なんて我儘で自分勝手な俺。
嘘をつくのも、隠すのも嫌いで、正直に気持ちを伝える。
流石にもう、一緒には居てくれないだろうと、覚悟もしていた。
届いた手紙を恐る恐る読み進める。
「私は、君の手は掴まないよ。」
やっぱり…。
覚悟はしていたけど、いざはっきり言われてみると、やはり辛い。
「そのかわり、私が君を両手で抱きしめるから、
君の両手は君が差し伸べたいと思った人に差し伸べてくれ。」
言葉が出なかった。
俺なんかよりずっとずっと大人で、広すぎる心を持った青年に、言葉が出なかった。
どんだけお人好しなの。
バカなの?それとも天使なの?
この時の衝撃が強すぎて、今でも俺はこの言葉が忘れられないでいる。
それと同時に、俺の心もはっきり決まったんだ。
キースを、このキース・グッドマンを全身全霊愛そうって。
バニーちゃんを送り出して、キースを両腕で抱き締めたとき、
キースは俺の元を離れることを考えたりもしたことがあった、ということを話してくれた。
辛い思いを、させていたに違いない。
それでもずっと、変わらず俺の傍にいてくれたことに感謝の言葉しか出てこない。
よくよく考えてみれば、俺はキースにステイをさせてばっかりな気がした。
だからせめて、伝える言葉は惜しまないことに決めた。
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