桜色に 衣は深く 染めて着む 花の散りなむ のちの形見に
―紀有朋
暦の上では“清浄明潔”なる「清明」を迎え、春風に満開の桜の匂い立つ頃となりましたが、
今まさに春たけなわの今朝はいかがお過ごしですか?
お陰さまで『由美』では、開店28周年目の“春祭り”初日を、
馨しき桜花と胡蝶蘭一色の華美な“桜色”に包まれた中で、
無事に迎えられましたことと心よりお礼申し上げます。
彩さんよりお祝いの盛花
さて、掲歌は「古今和歌集」春歌上の終りの歌ですが、
“桜”本来の薄い色を敢えて「深く染めて着む・・・」と表現しているのは、
「うつろわないように・・・」との想いを籠めて詠んでいるかのようで、
実に名残り惜しい様を表していますが、
ただ、この時代に“桜色”と言う染色名があったのか・・・?
またこうした色は男性もつけるものなのか・・・?
或いは、この“桜色”とは、紅花で薄く色付けた色なのか・・・?
それとも桜の幹から採った色なのか・・・?と、
今も諸説様々ですが、取りあえず、「単に桜にこのまま包まれていたい・・・」と言う気持ちが、
“衣”という言葉を導いたように思いますね。http://www.milord-club.com/Kokin/kan/kan02.htm
ところで、今でこそ、日本を代表する春の色となった“桜色”ですが、
私たちが日頃から目にしている色彩の多くには、
日本特有の植物にちなんだ“和名”をもっているのも多く、
古来から日本人が“色”に関して、それだけ趣を深く感じていたということでしょうか、
浅葱(あさぎ)、朽葉(くちば)、萌葱(もえぎ)、青丹(あおに)、猩猩緋(しょうじょうひ)、
群青色、海松色(るみいろ)、女郎花(おみなえし)、錆御納戸(さびおなんど)、
蘇芳(すおう)、緋(あけ)、鶸色(ひわいろ)・・・etcなどと、
数え出したら切りがないほど“色々”で、
その“和名”と“色” とを見比べているだけでも楽しくなりそうですが、
中でも“杜若色”や“萌葱色”などといった四季折々の植物の色彩と語感は、
季節の風情や奥ゆかしさを感じさせてくれ、
私たち日本人が古来から授かった感性を呼び覚まさせてくれるかのようですね。
http://homepage3.nifty.com/jc/works/jpcolor.html http://odai.g.hatena.ne.jp/tetsu23/20041105
http://homepage3.nifty.com/jc/works/jpcolor.html http://odai.g.hatena.ne.jp/tetsu23/20041105
故に、この時季には、単に“桜色”の美しさに見惚れてしまうだけではなく、
そのまま自身も“桜色”に染まってみたくなるような想いに駆られてしまいますが、
由美ママは個人的には、同じ“ピンク色”の中でも、
自己主張する“梅”のピンクではなく、
自らは一歩引いて、頬をほんのり染めるような控え目な“桜”のピンク色に
心を奪われることの方が多く、
それは、いつの間にか忘れてしまった日本人の奥ゆかしい“心の色”のように思えて、
「由美満27周年祭」店内の桜はまだ“蕾”・・・
「由美満27周年祭」 伊集院 静先生 http://www.ijuin-shizuka.com/news/index.htm
からの桜は“八重桜”
「由美満27周年祭」 吉川晃司さん http://www.kikkawa.com/
より“胡蝶蘭”
残りなく 散るぞめでたき 桜花 ありて世の中 はてに憂ければ
―古今和歌集
まもなく散り落ちる“桜花”に、“はての憂い”を思う今週ですが、
今日も春風に儚く舞う桜を愛で、『由美』の“めでたき”宴へと出かけて参ります!!!