残暑はや 色の抜けゆく 日の落ちて
―保坂加津夫
暦上では「立秋」も“濃霧昇降す”末候となり、この週末は、これから海や山の行楽地へと、残暑に追われるように繰り出す人の波で賑わうことでしょうが、いかがお過ごしですか?
銀座通りのビルの8階に“料理の鉄人”道場六三郎氏の“懐食”『みちば』があります。
さて、初秋の頃に見上げた雲は、“夏の盛り”と“終わり”の印なのだと漠然と思いますが、
たとえ空に柔らかく包み込む太陽に染められた“ちぎれ雲”が浮かんでいても、年を追うごとに厳しくなるこの残暑には、空を眺める余裕すらなく、「ツクツクボウシ」の哀しげな鳴き声だけが、耳につくこの頃ですが、
この夏の終わりを告げる風物詩でもある「ツクツクボウシ」とは、夏に一番遅く発生する“蝉”で、
夏の暑い盛りから秋の始めまで、一日中“ツクツクオーシツクツクオーシ”と鳴き、その声から「オーシンツクツク」とも呼ばれています。
また、鳴きはじめの前奏が、“ジュクジュク”と聞こえることから、「熟柿が生った」と、“柿のもぎ時”を知らせるという言い伝えもあり、
「寒蝉」とも書き、どちらかというと夏から秋にかけての“蝉”で、寂しげに鳴くともとられ、「つくづく惜しい」とも聞こえるという説もありますが、
古来より、人々は心や状況によって、この蝉の鳴き声をいろいろに聞き分けてきたように思います。
『みちば』は、高名な道場六三郎氏による創作和食の店で、鉄人の創る“究極の和食”を銀座にて味わえます。
グラスが掛けられた豪華なカウンターと、“鏡の間”のようなゴージャスな店内
『みちば』は、の新しい提案をつねに続けてきた“鉄人”道場氏の、新しい世紀に向けた「六三郎流食文化」の“発信の地”で、クオリティにこだわった「六三郎流プリフィクススタイル」で“究極の創作和食”を食せます。
ところで、古典に於いては、万葉集で“蝉”を詠んだ歌は10首ありますが、うち9首が“ひぐらし”で、
この当時の“ひぐらし”は早朝、もしくは夕刻に鳴く・・・
つまりその名のとおり、“日が隠れている時に鳴く”と思われていますが、実際には、暗い林の中や曇天では、
一日中鳴いていて、雄の鳴き声は「カナカナカナ・・・」とか「ケケケケケッ・・・」と聞こえることから、「かなかな」とも云いますが、聞く人に涼感や物悲しさなどを感じさせ、
「ひぐらしは 時と鳴けども 片恋に たわや女我れは 時わかず泣く(万葉集巻十 )」などの歌には、
“ひぐらし”でさえ、鳴く時を定めて物悲しく鳴くのに、人恋しくて、手弱女の私は時を分かたず泣く・・・と、
切なく泣き続ける“片恋い”の歌に詠み込まれています。 http://homepage2.nifty.com/manyou2001/semi.html
http://allabout.co.jp/contents/sp_obon_c/ceremony/CU20040810A/index/
そんな、“ひぐらし”について、『万葉集名物考』の中では・・・
「さて今、俗に日くらしと呼ばれる蝉が二三種ある。
和名・抄茅蜩、和名・比久良之小青蝉也とあるのは誤りである。
万葉に詠まれた日晩は本草にあるサク蝉である。
と云うのは巻十、十五、十七に萩、女郎花などと共に詠んだ歌が多いからで、和名では「あかせみ」とも「あきせみ」とも云う。
今も阿波では古名を伝えてこの蝉を「日くらし」と云い、筑前では「ゆうせみ」と呼んで居り、八月の始め頃より鳴く。翅は赤黄色で透き通って居ない。未の刻(2時)より後によく鳴く蝉である。
和名抄の比久良之と云うのは大きさ六~七分で体の色は薄黒く黄色と緑の条があり、翅は長くて透き通って居る。この蝉は必ず申の刻(4時)より鳴き、その声は低く早朝より鳴くこともある」(現代文に書き換え)
と述べていることから、この当時の“日暮れに鳴く蝉”は、全て“ひぐらし”と呼ばれたのではないか・・・
と、想像されますが、
また、万葉集のほぼ一世紀後に成立したとされる『和名類聚抄』に収録されて居る“蝉”の名称は、
無末世美(ムマセミ・ウマセミ)、比久良之(ヒグラシ)、久豆久豆保宇之(クズクズホウシ)、奈波世美(ナハセミ)の4種ですが、
中でも、「クズクズホウシ」は今の「ツクツクボウシ」と考えられ、ちなみに、この「ツクツクボウシ」については、
その昔、この声は「ツクシコヒシ」だという説もあり、
筑紫(九州の古名)の人が、遠國で病氣のために亡くなり、その魂魄が一匹の秋蝉となったものとされ、「ツクシコヒシ、ツクシコヒシ(筑紫慕はし、筑紫見たし)と絶え間無く叫んだと云う伝説があります。http://www.zennokyo.co.jp/field/kw/kw3.html
クオリティにこだわった「六三郎流プリフィクススタイル」のメニューは・・・
白身が中心の“お刺身盛”
“焼き松茸”と“銀杏”は、早、秋の味覚・・・
『懐食 みちば』は、日本料理の歴史を創り続ける道場氏の新たな食文化を発信するお店として、母の手料理の温かさと、“鉄人”の創造力を見事に調和させ、“懐石料理”をプリフィクスにすることで、楽しさは広がり、心までも満たされる幸せな味です。 http://www.kaishoku-michiba.jp/
浮雲に 乗りて残暑の 去るらしき
―田中潮音
まだまだ残暑が続くとの予想ですが、それでも、徐々に秋の足音は聞こえ始め、空には入道雲から、秋の“浮雲”に変わる・・・
そんな雲に“乗りて”、もうすぐ“残暑”が去りゆくことと祈っておりますので、どうか「ヒグラシ」や「ツクツクボウシ」の鳴き声に、ふと夏の終わりの寂しさを感じられるような初秋のよき週末をお過ごし下さい。