五月雨の 沢辺のまこも 水越えて いずれあやめと 引き添わすらむ
―源平盛衰記
暦では、“菖蒲花咲く”「夏至」次候となり、寝苦しい暑さで迎えたこんな朝はいかがお過ごしですか?
この時季の花としては、掲歌のごとく、雨に似合う“あやめ”や紫陽花が、艶やかに咲いていますが、昔の日本人は、アヤメ属の花々の総てを“あやめ”と称していたようで、その例としては、似ていて甲乙つけがたい美しさの譬えに、「いずれアヤメかカキツバタ」と言い表します。
掲歌は、源 頼政が“鵺”と云う怪物を退治した褒美に、数人の官女の中から“菖蒲前(あやめまえ)”と云う美しい女性を嫁に賜るとき、ふと困惑して詠まれたものと伝えられています。
玄関と石段
さて、万葉の時代から「あやめ」の“濃紫(こむらさき)色”は高貴な色として、人々に好まれてきましたが、古来、日本では、「花菖蒲」より「杜若(カキツバタ)」の方がより愛され、万葉集にも「杜若」を詠んだ歌は7首登場します。
また、有名なものとしては、「杜若」と云えば、在原業平の歌で「古今和歌集」の中の・・・
―から衣
きつつ馴れにし
つましあれば
はるばる来ぬる
たびをしぞ思ふ
と、“かきつばた”の五文字を、五七五七七の頭に一文字ずつ置いて詠む「折句」と言う手法の歌が思い出されますが、この歌は、まるで“杜若”が初夏に涼やかな花をつけ、そよ風に揺れる光景が、目の前に浮かぶがごとくですね。
「よ志のや」1階のテーブル席のフロアは、今の季節は窓から眩い新緑。秋には紅葉が愛でれます・・・
涼を誘う・・・涼しげな先盆
しかし、やがてアヤメ科の人気は“杜若”から、武家社会の台頭とともに“尚武(しょうぶ)”に通じる“菖蒲”へと変わり、その後、江戸時代にはますます“菖蒲”人気が高まって、葛飾北斎などの浮世絵にも多く描かれるようになりました。
天麩羅と“うなぎ”の挟み揚げ
ところで、“杜若”と“花菖蒲”と“アヤメ”の違いをご存知ですか?
“杜若”は、池や川辺の湿地に生え、青紫や紫、白や絞りなどの花をつけ、花弁は網目なく、真ん中が真っ白な花を咲かせます。
次に“アヤメ”は、乾いた土に育ち、紫や稀に白の花をつけ、特徴としては外側の花弁に黄色の模様があり、網目模様の花を咲かせます。
そして“花菖蒲”は、湿地に育ち、赤紫・紫・絞り覆輪など微妙な色合いの花を咲かせ、またその種は、日本の野生種ノハナショウブから作られた園芸種で、江戸系、肥後系、伊勢系など実に500種以上にものぼる日本特産の花です。http://kyoto.jr-central.co.jp/kyoto.nsf/special/sp_14_2
アスパラの湯葉包み揚げと、“鱧の落とし”梅肉
旬はやはり、ここでも“長い魚”の鱧しゃぶ
“鱧しゃぶ鍋”は、あっさりと美味!
グレープフルーツのゼリー
あやめ 草足に結ん 草鞋(わらじ)の緒
―芭蕉
今朝は、「夏至」の次候“菖蒲咲く・・・”にちなんで、“あやめ”に纏わる話を調べてみましたが、これから、芭蕉の句のごとく、“あやめ草”つまり、“菖蒲の葉”を思わせる色の鼻緒の草履を履いて、新幹線に乗り、東京へと戻りますから、次回の「由美ママ京都編」をご期待下さい。 http://www.k-yoshinoya.jp/