友禅生産統計 | 銀座きものギャラリー泰三

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一度は袖を通したい着物がここにあります。きもの創作工房 (株)染の聚楽

昨年の友禅生産統計が先ごろ発表されていますが、まあ単純組合統計だけに、必ずしも実態を完全把握しているとは言えませんが、傾向を知ることは出来ます。
これによると昨年の生産は、一昨年より9%強落ちており、総数でついに40万反を割り込みました。昭和46年が確かピークでその時の生産数は、1650万反くらいあったはずですので、ざっと2.2%強くらいまで落ち込んでしまいました。
とんでもない落ち込みですが、そんな中で唯一生産を伸ばしているのがインクジェットによる振袖と、機械捺染の化繊、合繊の着尺です。
これは明らかにレンタル用のキモノであろうと思われます。
インクジェットによる振袖の生産は年間生産数の50%以上ですし、そのほか型染めのものを足すと、97%ほどになり、本格的な手描き友禅の振袖の生産は3%くらいしかありません。
京都の重要な伝統産業に品目でもあった京手描き友禅の生産は、一時期下げ止まった感があったのですが、再び大幅減産となり、全体の生産数の中でも20%もありません。
ほとんどすべての品目で生産が落ちていますが、もっともその減産率が大きいのが黒留袖です。
かつて最も生産の多いのが黒留だったことを思うと隔世の思いが致します。
本当に良い黒留を探すのはますます困難となってくるのは目に見えており、このような生産実態は、職人さんの高齢化などもあって、廃業の加速度的増加を見ることになるでしょうし、良いなと思ったら迷わず今お買いになるべきだというのは本当です。
西陣も同様ですが、真の高級品の生産は10年先はほとんどなく、直近5年だろうという憶測は間違いがないのかもしれません。
手のある職人さんの平均年齢は統計がありませんが、多分70歳を超えていると思われ、後継者はほぼないという状況ですし、加齢からくる品質の低下は避けられないでしょうし、第一材料がなくなりつつあります。
昨年も同じような寂しい話を書いたと思いますが、益々危機的な状況が目の前まで来ていることをひしひしと感じております。
ここまでくると厭世観が漂い、業者としても後継者のないところが多いので(私もそうなのですが)、健康上の理由などもあって、堰を切ったように廃業が増えるでしょう。
キモノを着る人は増えても販売はまだ減り続けていて、レンタルや古着だけが増えていくという現状では、業界としても打つ手がなく、公的な力で技の継承を考えてもらいたいと切望していますが、これといった具体策は見えません。
一生のうちに一度あるかないかという叙勲の席でも、購買力のある人でももったいないからと言って貸衣裳で済ませる人がどんどん増えているという非見識になんの衒いもなく、恥とも思わないという今の日本の状況下では、絵が描けないのも仕方ありませんし、真の上物の生産がそう遠くないうちに不可能となることは現実のものとなるでしょう。
それでなくても作り手の世代交代で、不勉強この上なく、ろくでもないものしか作れなくなっているということも確かです。
業界のピーク時にこの業界に身を投じ、最高から最低までをつぶさに見て来た私としては、そういう不幸なことを生きている間には見たくはないのですが、可能性はあります。
私自身の周りも次々と業界を去っていき、克己心や闘争心も薄れつつあるのも本当ですが、お客様の応援で何とかぎりぎり頑張っているというのが本当のところです。
いつもくらい報告ばかりで残念です。