抗がん剤のように全身治療ではなく
局所治療にしては放射線より弱い
という特徴があるためか
標準治療となっていながらも
長年存在を軽んじられてきた
温熱療法(ハイパーサーミア)
免疫チェックポイント阻害薬の登場で
今、かなり注目されています
今回の日本癌治療学会でも
一つのセッションとなっていました
ちなみに、
ハイパーサーミアというのは
がんの温熱療法全般をさします
このようなゴッツイ機械による
治療だけをさすのではありません
がん温熱療法を行っている身として
かなり気になる講演でした
まず、
がんハイパーサーミア(温熱療法)は
なぜがんに効くのか?
という話題から
①がん細胞は熱に弱い
元々それが狙いだったと思いますが
今では他の作用も分かっています
②酸性環境で抗がん作用が高い
これはちょっと分かりにくいかも
固形がんでの話になりますが
急速な増殖に間に合わせようと
酸素や栄養を供給するために
がん専用血管を急いで作ります
めちゃくちゃ突貫工事なので
しっかりした血管は作られず
がんは低酸素、低栄養状態になり
酸性の環境になります
がん細胞が酸性環境にあると
抗がん剤や放射線が効きにくなります
温熱治療は逆で
酸性環境でこそ効果を発揮します
併用することで
放射線や抗がん剤の弱点を補い
相乗効果を発揮するのが温熱療法です
③がんの血管透過性を亢進する
がんに対して温熱療法を行うと
薬剤ががん内部に到達しやすくなり
抗がん剤の効果が高まります
④上皮・間葉系の移行を抑制する
難しい単語が出てきましたね!
説明するのがかなり難しくて
一般の人への説明・理解は諦めます
ものすごくはしょって言うと
転移を抑制する働きがある
と言うことです
⑤がん免疫を亢進させる
今回一番盛り上がっているところです
(一部の学会でだけですけど…)
がん免疫における温熱療法併用の
利点はたくさんあります
1.免疫細胞の活性化
これは昔から知られていることで
特にNK細胞が活性化します
以前のブロブでも書きました
2.抗原の増加
免疫ががん細胞を見つけるための
目印を抗原と言いますが
温熱療法を行うと細胞が死滅し
がん細胞から漏れ出た抗原が増え
がんを見つけやすくなる
3.キラーT細胞の腫瘍内への浸潤を助ける
免疫療法が効果を示さない原因に
がんの周囲にバリアが存在しており
T細胞が腫瘍内に入り込めない
(=T細胞ががんを攻撃できない)
という現象がよく見られます
温熱療法を行うとバリア越えて
T細胞が入り込めるようになり
免疫療法の効果が表れる
ということが分かっています
4.PD-L1の増強効果
これが最も新しい知見です
オプジーボやキイトルーダなどは
PD-L1をターゲットにしています
ただ
がんによってはPD-L1が少なく
効果が弱いという特徴がありました
温熱療法を行うとPD-L1が増強され
ICI(抗PD-1)が効きやすくなる
ということが最近分かりました
がんを死滅させるほどの温度でなく
39~42℃くらいの温度でも
この変化が起こるようです
発表では
ICIが効かなくなった後
温熱療法を併用したところ
再び効くようになった
という症例も報告していました
免疫チェックポイント阻害薬の登場で
再び盛り上がってきた温熱療法
次回のブログは
各がんに対するエビデンス編
です
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