ステージ4
(遠隔転移あり)
リンパ節以外の臓器に転移があれば、
ステージ4とされます。
ステージ4の治療は、
15年ほど前まではステージ3と同じでした。
ところが、
イレッサなどの分子標的薬の登場で
治療法と予後が大きく変わりました。
そして、オプジーボなどの
免疫チェックポイント阻害剤の登場で
ここ数年でも大きく変わりました。
ステージ4は手術は行わず、
・従来の抗がん剤
・分子標的薬
・免疫チェックポイント阻害剤
の3つを使用していきます。
上記の使い分けについて説明します
<ドライバー遺伝子異常がある場合>
非小細胞肺がんと分かった時に、
まずドライバー遺伝子の異常を調べます。
ドライバー遺伝子というのは、
がん遺伝子やがん抑制遺伝子といった
がんの発生・進展に重要な役割を果たす
遺伝子のことを言います。
非小細胞肺がん(特に腺がん)では
ドライバー遺伝子異常が起こりやすく、
腺がんの約7割はドライバー遺伝子の
異常が見られます
*扁平上皮がんでは数%程度
そしてドライバー遺伝子の異常に従って
薬剤を選択していきます。
腺がんでみられる遺伝子異常と
対応する分子標的薬
ドライバー遺伝子 |
頻度 |
分子標的薬(発売年) |
EGFR遺伝子 |
腺がんの53% |
第一世代 イレッサ(2002年) タルセバ(2007年) 第二世代 ジオトリフ(2014年) ビジンブロ(2019年) 第三世代 タグリッソ(2016年) |
ALK融合遺伝子 |
全体の2-5% |
第一世代 ザーコリ(2012年) 第二世代 ジカディア(2016年) アレセンサ(2016年) 第三世代 ローブレナ(2018年) |
ROS1融合遺伝子 |
全体の2% |
ザーコリ(2017年) エヌトレクチブ(申請中) |
BRAF遺伝子 |
全体の1-3% |
タフィンラー+メニキスト(2018年) |
ここ数年でかなりの増えており、
これからも増えていく予定です。
<ドライバー遺伝子異常がない場合>
2018年のガイドラインまでは、
PD-L1というタンパクの発現率で
治療法が変わっていましたが、
今年(2019年)に入って
免疫チェックポイント阻害剤が
抗がん剤併用可能となったので、
今後は
免疫チェックポイント阻害剤+抗がん剤
という組み合わせになっていきます。
ステージ4の肺がんの予後は、
2002年までのデータでは
5年生存率が5%ほどでした。
それ以降、特に最近では
分子標的薬の新薬の登場
免疫チェックポイント阻害剤の登場
などから、
ステージ4とは言え
長期生存が夢ではなくなってきました。
特に、第二世代ALK融合遺伝子阻害剤の
アレセンサの治療効果はものすごく、
奏効率 93%
無増悪生存期間中央値 34.8か月
という結果が出ています。
無増悪生存生存期間中央値というのは
病気の治療中の100人を
病気の進行を抑えられた期間順に並べた時
ちょうど51番目の人の期間です。
分かりやすく言うと、
半数以上の患者が
34か月以上
がんの進行を止められた
とうことです。
患者によっては5年間以上
がんの進行を抑えられています。
肺がんのステージ4でも
長期生存できる可能性はあるのです。