抗がん剤治療

 

 

膵臓がんに対する抗がん剤治療は、

 

①進行していて手術が出来ない

 

②手術が可能かどうかの境目で

 手術が可能となるよう先行して行う

 

③手術後の再発予防

 

の3つのパターンで使われます。

 

 

 

①、②の場合は主に、

 

 

 

 

 

 

 

 

(FOLFIRINOX(フォルフィリノックス)療法

 

ジェムザール+アブラキサン療法

 

が行われます。

 

 

他にも、

TS(ティーエス)-1(ワン)単独療法

ジェムザール単独療法

ジェムザール+タルセバ療法

などがありますが、

奏効率が劣ってしまいます。

 

高齢で抗がん剤が厳しい方などは、

後者が選ばれることがあります。

 

 

5種類の抗がん剤治療法について

下の表を参考にお話していきます。

 

 

 

ジェムザール
アブラキサン

FOLFIRINOX

TS-1単独

ジェムザールタルセバ

ジェムザール単独

奏効率    

58.8%

38.9%

21.0%

20.6%

13.3%

無増悪生存期間     

6.5か月

5.6か月

3.8か月

3.48か月

4.1か月

生存期間中央値

13.5か月

10.7か月

9.7か月

9.23か月

8.8か月

 

 

 

ジェムザール+アブラキサン療法

 

約6割という高い奏効率が見られます。

 

*奏効率:がんが30%以上縮小する割合

 

 

しかし、無増悪生存期間を見てみると、

6.5か月となっています。

 

無増悪生存期間とは、

がんを増悪させない(=進行を止めた)期間

のことで、簡単に言うと

抗がん剤が効いている期間

のことです。

 

 

6割近く奏功した(効いた)としても、

6.5か月で効かなくなるのです。

 

もちろん、これは平均値なので、

みんなが同じように

半年で効かなくなるわけではありません。

 

効いている人は長い間効いています。

 

 

また、

生存期間の中央値は13.5か月

 

生存期間の中央値というのは、

例えば100人を調べた時に、

生存期間の短い方から長い方に並べた時

51人番目に並んだ人が生きていた期間

のことです。

 

5年生きる人もいれば、

数か月の人もいる中での

ちょうど真ん中なのですが…

イメージしにくいかもしれません

 

 

副作用は、

 

多くの抗がん剤に共通する

骨髄抑制(白血球・赤血球・血小板減少)

肝機能障害

腎機能障害

といった自覚症状のないものをはじめ、

 

自覚するのとして

 

末梢神経障害(手足のしびれ)

脱毛

関節痛・筋肉痛

 

があります。

 

脱毛は治療を止めると戻りますし、

関節痛・筋肉痛は一時的なものですが、

 

手足のしびれは、軽い場合は数か月

重い場合は回復に1年以上かかります。

 

具体的には

手足に刺すような・焼けるような痛みがあり、

スマホの操作や文字化書けないなど

細かい作業がしづらくなったり、

歩きにくさを感じたりして、

日常生活に影響がでます。

 

 

 

FOFIRINOX療法

 

オキサリプラチン

イリノテカン

レボホリナート

フルオロウラシル(5-FU) 

の4種類の抗がん剤をmixしたものです。

 

 

奏効率 約4割

無病悪生存期間 5.6か月

生存期間中央値 10.7か月

 

 

ジェムザール+アブラキサン療法には

全体的に効果は劣りますが、

他の3種類よりは奏効率が高いです。

 

ただ、無病悪生存期間や

生存期間中央値に関しては、

1~2か月程度延びるくらいしかありません。

 

 

副作用は

食欲不振、吐き気、おう吐、下痢など

消化器症状が強く出やすいです。

 

また、こちらも末梢神経障害があり

前者と同じような症状が出て

回復までに数か月はかかります。

 

 

 

膵臓の抗がん剤治療は、

 

従来ジェムザール単独療法が中心で

成績が非常に悪かったものの、

 

2013年FOLFIRINOX療法

2014年ジェムザール+アブラキサン療法

 

が保険適応となり、

奏効例が増えてきました。

 

とは言っても、

肺がんの分子標的薬のような

高い奏効率や無病悪生存期間

(例:タグリッソ 奏効率 80%

  無病悪生存期間 18.9か月)

 

を得ることは難しく、

難治性がんであることは変わりません。

 

 

 

最後に

③手術後の再発予防として

術後TS-1単独療法が行われます。

 

膵臓がんは手術を行っても

2年以内に約7割が再発するという

再発率が非常に高いがんです。

 

手術後にTS-1療法を行うことで、

再発のリスクを下げることができ、

結果として

生存期間 46.5か月

5年生存率 44.1%

を実現することができるとされています。

 

 

手術後の再発予防として

TS-1単独療法ではなくて、

 

奏効率の高いFOLFIRINOX療法や

ジェムザール+アブラキサン療法が

今後は出てくる可能性はありますが、

現在臨床試験中です。