先週末は、こんな研究会に参加するため
大阪まで行ってきました。
Body DWI研究会
おそらく、放射線科以外は初めて耳にする医師も多いと思います。
[DWIとは]
DWIは、
”Diffusion(拡散)”
“Weighted(強調した)”
“Imaging(画像)”
という意味で、
MRIの撮影条件では
拡散強調画像
と言われています。
MRIをある条件で撮影する時に、
水分子のランダムな動き(拡散)を捉えるのですが、
生じたばかりの脳梗塞やがんは
正常組織と比べて拡散速度が遅いため、写り方が異なります。
拡散強調画像は、主に脳梗塞の診断に使用されていましたが、
MRIが進歩し、全身を一度に表示できるようになったため、
東海大学工学部 医用生体工学科
高原 太郎 教授ら
が全身のがんへの応用法を開発しました。
この方法を DWIBS(ドゥイブス)法 と言います。
または、全身DWI とか Body DWIとも言います。
高原教授らの2008年の論文です。
悪性リンパ腫の治療前後で、
PETとDWIBS法を比べたものです。
DWIBS法は正常リンパ節まで写ってしまいますが、
経過をみる分には問題ありませんし、
PETと同等以上にクリアな画像となります。
また、DWIBS法にはPET-CTを比べて
このようなメリットがあります。
・放射線被ばくがない
(PET-CTは、PETとCTの二重被ばく)
・ブドウ糖を使わないので、糖尿病の人でも撮影できる
(PET-CTは糖尿病の人は撮影できません)
・食事制限がない
(PET-CTは禁食があります)
・尿路系の腫瘍も描出することができる
(PET-CTでは腎~膀胱の病変は分かりません)
・MRIなので3割負担で7000円前後と安価
(PET-CTは3割負担でも約3万円です)
・2~3か月毎に撮影可能なので、経過観察に使える
(PET-CTは、最低でも半年空けないと保険適応とならない)
・骨転移や悪性リンパ腫などは、PET-CTよりも描出できる
デメリットは、
・以下のようなMRIが撮影できない人には施行できない
高度の閉所恐怖症
ペースメーカーなど金属機器が体内に入っている
刺青が入っている
・撮影可能なMRIが少ない
・知名度が低い
・撮影と読影の技術がまだ途上である
・MRIの機器による差がある
・エビデンスが少ない
などです。
がん治療の経過観察には、
将来はDWIBS法を使用する機会が増えてくると思います。
DWIBSを導入しているあるがん拠点病院では
手術後の経過観察として
DWIBS 3か月おき
PET-CT 1.5年おき
というのがルーチンになっているそうです。
費用や被ばくを考えたら、理想的だと思います。
当院近くの画像検査専門クリニックで
このDWIBS法での撮影を行っているので、
当院では積極的に撮影するようにしています。