3秒で終わった今夜の恋…。
心の中で泣きながら、ユンホ君がジェジュンの右隣りの席に
当然のように腰掛ける様子を見ていたわ。
俯いていた顔をちらっと横向けてユンホ君の顔を見上げるジェジュン。
その顔を覗きこんで、そっと、ジェジュンの肩に左腕をまわすユンホ君。
あ~~~あぁ、
見てらんないわよ~~!
ハーーッ。
嘆いた私のため息…、
・・・にしてはデカすぎない?
…ん?
どうやら、ジェジュンの視線に勘違いしていた男どもが、
諦め悪く1人カウンターで佇むジェジュンの様子を窺っていたみたい。
ユンホ君の登場で、現実突きつけられて、
夢破れたため息を私と一緒に吐いたわけね。
「顔色悪いけど、平気?」
「うん…。大丈夫…。
ゴメンね、ユノ。
疲れてるのに、こんなとこまで…。」
“こんなところ”で悪うございました!
今まで一度も聞いたことないようなしおらしい声。
あのジェジュンを、こうも変えてしまう『恋』ってすごいわ。
いえ、“ユノ”君がすごいのかしら。
「気にしないで、ジェジュン。
俺も会いたかったし、ジェジュンに甘えられるのは嫌じゃないし。」
あ~~ん、私もそんなふうに優しく言われてみたい!
「また、そんなこと言って…。
ユノったら、オレに甘いよ。」
「当然だろ、恋人なんだから。」
ユノ君の言葉に、“アハッ”とはにかんで、微笑み返すジェジュン。
も~~~~う!
あんた達、なんなのよ!!
10㎝も離れないで顔くっ付け合って、
じっと見つめ合って会話するんじゃないわよ~~~!
独り身の“オンナ”には、きついわ~~!
ああ~ヤダ! 目の前のこの景色!
いい男が2人、周りも気にせずに“好き”“好き”言い合っているところなんて、
自分に恋人がいる時でも見たくないわね…。
「ジェジュンの甘え方は、桁違いだから新鮮なんだ。
思いもしなかったこと要求してくるから、ドギマギさせられるけど、
…その…かわいいから、許しちゃう。あははは。
(長い指でおでこ掻きかき、嬉しそうに照れ笑い///)
今までの自分だったら、絶対できそうになかったことやっちゃう自分に
あきれるというか、驚くというか…、
そんなことできてしまう自分がいたことに気付かされるんだ。
自分の新たな一面が知れて面白いよ、ジェジュンと一緒にいると。」
「ユノ~…。」
唇に拳を当てて、うっとりとユノ君を見つめるジェジュン。
・・・やさしく微笑むユノ君に、メロメロだわね…。
ふ~~ん…。
ジェジュンは、自分に起きる変化に戸惑っているみたいだけど、
ユノ君は、そこを楽しんでるみたいね~。
ポジティブ思考ってこと?
なるほど、マイナス思考のジェジュンとは真逆なわけね~…。
「ジェジュンは、迎えに来てほしくなさそうだったけど、
俺は、ずっとこの店のことが気になってたから、
1度来てみたかったんだ。
ジェジュンは、なぜか、かなり嫌がってたけどね。」
「だって…、この店…変わってるし…、
変な客や、変わったオーナーしかいないし…。
ユノに、なんて思われるだろう…って心配だったから…」
はん、変な客と、変わったオネー…、いや、オーナーで悪かったわね。
あんたもそのうちの1人でしょ!
「あはははは。
そんな、変な店じゃないよ。
変わった人なんて…」
店の中をくるりと見回したユンホ君とバチッと目が合っちゃった!
驚いたユンホ君が「あ…」ってちょっとだけ目を見開いたわ。
“あ…、いた…!”って感じでね。
アハ~~ン、そんなの見逃さないわよ~~。
「改めまして、こんばんは~。
貴方が噂の、“ユノ君”ね。
私、この店のオーナーのチャルで~す。
“チャルママ”と呼んでね。」
握手を求めて、私が両手を差し出すと、
ジェジュンの肩にまわしていた左腕を解いて、
左手を出してきたユノ君。
あら、もしかして、左利き?
「うわ~ぉ、指が長くて、男らしくて素敵な手~!
怖がらなくていいわよ。取って食ったりなんてしないから。うふ。」
や~ん、大きな手!
指が長くてちょっと節ばってて、そこが男ぽくって素敵!!
久しぶりにときめかせてくれた若い男の手触りを楽しんでいると、
横からジェジュンが手を伸ばしてきて、ユノ君の左手をもぎ取ったの。
「長い!」
人にはそんなこと言っておきながら、
自分は、ユノ君の指に指を絡めたのよ!
ばっちり見たわよ!見逃さないんだから!
カウンターの下にユノ君の手を引きずりこんで、
しっかり指からめて握りこんでたでしょ!
つづく