恋してもいいですか? 6-4 | ねーさんの部屋

ねーさんの部屋

ユンジェの妄想部屋です(時々旅グルメ)


「あんたはね、顔がきれいで人付き合いいいところもあるから、
オープンでフレンドリーな人だと誤解されてるけど、
ほんとは臆病者なだけなのよ。
自分から近づいて行かなくても回りが先に寄って来るし、
ちやほやされて、それを足蹴にして平気な顔してるから、
クールな性格だと他人ばかりか自分自身さえ勘違いしてるみたいだけどね。
ただ、来るもの拒まず、去る者追わず、なだけ。
嫌われるのが怖くて何でも受け入れて、離れていかれたことを自覚するのが嫌だから
後は追わない。…そう、傷つきたくないだけ。

 

 

扉はいつも開いてて、近づいてくる人は中に受け入れるんだけど、
自分から外には出て行こうとしないの。
欲しいものがあっても、自分から取りに行く勇気はないの。
自分は傷つかない場所で外を眺めながら扉の内側で待つだけ。
扉の奥まで来てくれる人に捧げる愛情をたっぷりとため込みながら、
じっと待ってるだけ。
今までと同じことしてたら、いつまでも同じことよ~。
傷つかない場所にずっといるだけじゃ、欲しいものは逃げちゃうでしょう。
外歩いてる人には、中にいるあんたの気持ちなんて分かんないんだから~。
失いたくないんだったら、自分の殻から飛び出さないとね。」

 

 

「・・・・」

 

 

「あんたのことは昔から知ってるけど、
こんなに自信のないセリフを聞く日がくるなんて想像したことさえなかったわよ。
ましてや本気の恋をして怖気づくジェジュンなんかまったくね。」

 

 

大きく煙を吐き出したチャルママは、
短くなったたばこを灰皿に押し付けて火を消した。

 

 

グラスの水滴をなぞりながら、言い返すこともせずに
ぼんやりとカウンターテーブルの上を見つめているジェジュンの
意識を覚醒させるように、チャルママは、パンッと1つ大きく手を叩いた。

 

 

びくっと肩を揺らし顔を上げたジェジュンに、チャルママは言った。

 

 

「ほら、もう、帰んなさい!
で、ユノに迎えに来てもらいなさい!」

 

 

「・・・・、
エエーー!!」

 

 

3秒ほどの通信障害があったかのように、ジェジュンの脳に、
チャルママの言った言葉の意味が伝わるには時間を要した。

 

 

*   *   *

 

 


数回の呼び出しコールの後に電話がつながった。

 

 

「ジェジュン?」

 

 

ユノがジェジュンのアパートに泊まらない日は、いつも寝る前、
(“今日”が終わる頃に)電話で話す。
だから、こんな中途半端な時間の電話に、“どうしたのか?”と
不思議そうな気持が現れたようなユノの声だった。

 

 

でも、“ジェジュン”と呼ぶ声には愛情が滲んでいる。

 

 

ユノの一声を聞いただけで、ジェジュンは切ない気分になった。

 

 

だから、つい、最初の一言から、なんだか甘えた言い方になってしまう。

 

 

「…何してた…?」

 

 

チャルママが、両手で口を覆ってのけぞるのが目の端に入って、
自分が、きっとすごく甘えた声を出したのだと思った。

 

 

酔いではなく、恥ずかしくて一気に顔が熱くなった。
しかし、今更言い直すこともできないし、・・・その気もない。

 

 

ユノは、練習から帰ってきて、洗濯しながら、
レポート用の本を読んでいたと話してくれた。

 

 

「…そう…。
えっ、オレ?
…オレは、飲みに…、うん、1人で。
だ、大丈夫、今日はそんなに酔ってないから。」

 

 

「ちょっと、迎えに来てもらえって言ってるでしょ!」

 

 

チャルママが、ユノに聞こえるように
ジェジュンの携帯に顔を近づけてしゃべった。

 

 

ギョッとしたジェジュンは、顔をしかめると、
さっと、携帯のマイク部分を手で覆って、
チャルママの声が入らないようにした。

 

 

しかし、しっかりとチャルママの声を聞き取ったらしいユノが
ジェジュンに「迎えに行くから場所はどこか」と聞いてきた。

 

 

「大丈夫だって、ちゃんと帰れるよ。
タクシーも拾うし。
…エッ? 
“代って”って、誰に?
えっ、ママに?!
いや、でも……、
それは・・・・・・
…わかった、代わるから…。」

 

 

ジェジュンが、チラリとチャルママを振り返って、携帯を差し出す。

 

 

「何よ?」

 

 

「ママに代われって…。」

 

 

「・・・・」

 

 

まさかの急展開に、なにを言ったものか内心焦りながら、
チャルママは、黙って携帯を受け取って耳に当てた。

 

 

 

 

               つづく