よろしく ダーリン。 97 | ねーさんの部屋

ねーさんの部屋

ユンジェの妄想部屋です(時々旅グルメ)


   よろしく ダーリン。
      ~Secret Romance in Palace~



スウェット素材のパンツに、
胸にブランドロゴが縫いこまれたポケットがついたTシャツ、
ミリタリー調の黒いニットカーディガン。



ズボンを脱ぎ始めたユンホに気付いて、
キャー!とひと騒ぎして、ユンホがズボンを着替える間、
部屋の中をぐるっと一周して戻ってくると、
へらへらと嬉しそうに笑って、
着替えを済ませたユンホの全身を眺めるジェジュン。



「では、お茶をお持ちいたしますが、
こちらのお部屋でよろしいでしょうか?」



チョン女官が部屋から下がりながらにこやかに聞いてきた。



「そうだな…。
…ジェジュン、お前は、俺が帰ってくるまでは何をしてたんだ?」



「あ…、僕は、リビングで…」



「じゃ、リビングの方に頼む。」


ジェジュンの話が終わらないうちに、ユンホがチョン女官に命じた。



チョン女官が部屋を出て行くと、ジェジュンを振り返って声をかけた。



「ほら、リビングに行くぞ。」



ユンホは、机の上に置いてあった手提げ袋を手に持つと部屋を出て行った。



ジェジュンは、慌てて遅れまいと後を追った。



リビングには、ソファーが四方を囲む大きなソファーセットと、
6客のイスがついた丸いティーテーブルがある。



どうやら、ジェジュンは、そのティーテーブルの方で何かをしていたようだ。
テーブルの上には、本が積み上げられ、ノートが広げられていた。
それに、イスが1つだけ立ち上がった時のままにテーブルから離れた位置にずれていた。



ユンホの帰宅を聞いて、急いで席を離れたことが想像できた。



ユンホが近づいてテーブルの上を見ると、
王室の行事が書かれた本と、王室用語の解説書が開かれたままになっていた。
広げたノートには、丸っこい文字にピンクのマーカーが何本も引かれ、
カラフルなペンや携帯が無造作にノートの横に置かれていた。



「なんだ、また、勉強していたのか?
ドラマでも見ていたのかと思ったのに…。」



ユンホは、自分で言った“ドラマ”という単語に、内心ドキリとした。
学校でのチャンミンからの冷やかしを思い出したからだ。



確かに、こいつなら、喜んで『ダ~リ~ン♡』と言いそうな気がする…。



ジェジュンを振り返って、ちらりとそんなことを考えてしまう。



「だって…、明日から、本格的な宮中教育が始まるんです…。
少しでも、予習をしておかないと……。
今日だって、チャンミンから教えてもらわなかったら、
外で食事をするのだって、どれだけ大変なことか知らないままでしたから…。」



ユンホは、テーブルの上に手提げ袋を置くと、
ジェジュンの座っていたイスから1つイスを挟んだ2つ目のイスに
腰を下ろした。



ジェジュンも、ゆっくりイスを引くと、腰を下ろした。



「焦っても、しょうがないと思うけどな。
…で、王宮散策はどうだったんだ?
さんざんメールしてきただろ。」



しゅんとなりかけていたジェジュンが、パッと顔を上げた。



「そうですよ~。
僕が、何度もメールしたのに、ユンホッ…は、
1回きりなんですから~。冷たいですよ~。」



「1度すれば充分だろ、あんなメール。」



「あんな…って、ひどいですよ~!」



「“あんな”、だろ。何を返事書けって言うんだ?」



「今、なにしてますか?って聞いてるんですから、
今は、なにをしてるよ、って返事してくれればいいじゃないですかぁ。」



「いちいち、書いていられるか…、めんどくさい…。」



「全然、まめじゃない…。」



「ああ、そういう性格なんだ。
それで、温室には行ってみたのか?」



「はい。
せっかく、ユンホ…から教えてもらったから、行って来てみました。
知らない花や大きな南国の木があって面白かったし、
温かくて気分が良かったです。
この前みたいに凍えなくてすみました。うふふ。」



「そうか…。
で、さっきから、俺の名前を言う時に詰まってるのはどうしたんだ?」



「あ…、そ、それは…、
その~…、…“ユンホ様”っていう癖を直そうと思って…、
まだ、意識しないと言えないというか、
ここしばらく、ずっと“ユンホ様”って言っていたから、
よけいに意識しないと無理っていうか…
温室に向かって歩いて行ってる間とか、ずっと練習したんです。」



「練習?」



「ハイ。
ユンホ、ユンホ、ユンホって何度も繰り返して言ってみたりして。
だけど、ユンホ様…、あっ…、ほら、今みたいに、つい出ちゃって…」



「…恥ずかしいから、人の名前何度も繰り返すな。」



何度も名前を連呼され、気恥ずかしくなったユンホが眉を寄せ、
ぶっきらぼうに言った。
そして、いきなりテーブルの上に置いていた手提げ袋を掴むと
ジェジュンの前に腕を突き出した。



「ほらっ、お前にやる。」



「え?僕に?
…ありがとうございます?」



ジェジュンは、両手で紙袋を受け取ると、
そっと中を覗き込んだ。



「あっ…、かわいいー!」




            つづく