よろしく ダーリン。 92 | ねーさんの部屋

ねーさんの部屋

ユンジェの妄想部屋です(時々旅グルメ)



   よろしく ダーリン。♥~
      ~Secret Romance in Palace~



ユンホは、内ポケットに入れていた携帯を
ジャケットの上から押さえた。



隣に座る王妃が、静かな車内に響いた携帯のバイブ音と、
ユンホの腕の動きに気づいて、ちらりと視線を向けた。



ユンホは、さっと携帯を取り出すと、
届いたメールの差出人を見て、わずかに眉を寄せた。



その表情のまま2秒ほどで読み終わると、返信もせずに、
パタリと携帯を閉じてポケットにしまった。



「何か、急ぎの要件なの?
さっきから、何度もメールが届いているでしょ?」



そう、宮殿を車で出発してから30分も経っていないが、
すでに3回は着信を知らせるバイブ音を聞いていた。



「いえ…。」


ユンホが、王妃を振り返って、少し困ったような、
焦ったような、微妙な表情をして言った。



「その……、
メールは…、ジェジュンからなんです。
…どうでもいいようなことを、さっきからメールしてきていて…」



「まぁ、ジェジュンから!
貴方たち、仲良くしているみたいね。
どうでもいいだなんて言い方をして、貴方照れているんでしょ。」



「て、照れてなんかいませんよ!」



ユンホの否定の言葉には耳も傾けず、王妃が楽しげに興味津々と訊ねてきた。



「それで、ジェジュンは、さっきからどんなメールをしてきているの?」



「だから、どうでもいいことですよ。
『今から、王宮内の探検に出かけまーす。
どこか、おすすめはありますか?』とか、
『今、どこですか?』とか、
『今日は、陽が差していて暖かいです。
雪の上には僕がつけた足跡しかなくてわくわくします。
雪が真っ白に輝いていてとてもきれいです。』とか、
『雪景色もいいけど、空もきれいです。
この青空と雲…、すごくいいでしょ♡』ですよ。
ハートマーク付ですよ、ハート!
自分撮りした写真も送ってくるし…。」



苦虫をつぶすような辟易した表情をして、
ジェジュンからのメールの1つ1つを諳んじてみせる。



「あら、あら…。
ジェジュちゃんたら、詩人みたいね~。
それに、すごくマメなのね~。
うふふふ。かわいらしいこと。
それで、あなたは何て返事返してあげたの?」



「何を書けばいいんですか…。
独り言みたいなメールに…。」



「・・・、あなたも冷たいわね~。」



王妃の少し呆れたような指摘に、ユンホが過敏に反応した。



「冷たい、って、何ですか!
私だって、1つくらい返事を書いてやろうって思いましたよ。
『王宮の庭ならどこがいい』とか、
『迷路みたいなところがあるから気を付けろよ。』とか…。
だけど、考えてる間に、次から次に送ってきて、
話題は変わってるし、考えてた返事を打つ間もなくて…。
それでもう…、潔く、返事を書くのを放棄しました。」



鼻息荒く一気に王妃に説明すると、シートに勢いよく凭れ、
フーッと息を吐いた。



「そんなこと言わずに、返事を書いてあげなさい。
ジェジュちゃんは、さみしいのよ。」



「さみしい?
一緒に住んでるし、さっきまで一緒だったし、
学校でだって話したんですよ。」



王妃の話に耳は傾けながらも、腕組して、
フロントガラスの向こうの景色を、憮然として眺めながらユンホが返事する。



「それでも、そうなのですよ。
そういうものなの。
…だって、ジェジュちゃんは、ユンホのことが大好きなんだから。ふふ。」



いきなりの王妃のセリフと意味深な微笑みに、ユンホが目を見張る。



“なぜ、王妃が、そのことを知っているのか!”と、
胸の中では恐慌状態になりながら、
恐る恐る、王妃の方へ振り返った。



「まさか、知らなかった…ってことはないわよね。
だって、ジェジュンの表情や態度を見ていれば、すぐに気づくことですからね。」



ユンホは、ごくりと唾を飲みこんだ。



自分は…、
…きっと、ジェジュンに言われるまで気づかなかっただろう、と思った。



「…い、いつから…、お母様はご存知だったのですか…?」



「最初からよ。」



「――――。」



ユンホは、王妃の言葉と深まった微笑みに驚き、息を飲んだ。




            つづく