よろしく ダーリン。♥♥~
~Secret Romance in Palace~
その後は、鏡の前に並んで立って、それぞれ自分の跳ねた髪を直した。
お互いのはね具合を指摘し合ったり、
少しずつ濡らすことを面倒くさがったユンホが大胆に髪を濡らし、
髪から滴り落ちる水滴に気付いたジェジュンが、
慌ててタオルをユンホの髪に押し当てて服が濡れないように手伝ったりした。
それなのに、ユンホからはドライヤーの風を顔に当たられるいたずらをされた。
他愛のないじゃれ合いを繰り返しながら、ジェジュンは、
“結婚したら、こんなことを毎朝するのかなぁ”と想像して、
1人で照れて、にやけてしまった。
緩んでしまう頬を両手で押さえていると、
「なにしてるんだ?」と、ユンホに不思議そうな声で突っ込まれた。
とにかく、ジェジュンにとっては、
お弁当作りで慌ただしかった数日間とは違って、
ドッキドキの、“ときめきモーニング”だったのだ。
何度も反芻するように思い出して、ヘラヘラと笑ってしまっていた。
そんな幸せ気分だったので、特別棟側から聞こえてきた男子の話し声に、
何の警戒もせずに、期待を込めた視線のままパッと振り返ってしまった。
しかし、その視線の先にいたのは、ユンホではなく、
同じ2年生の…ある意味で有名な3人組みだった。
急にジェジュンが振り返ったので、その動きが却って
3人にジェジュンの存在を認識させてしまったようだった。
ジェジュンがじっと静かにたたずんでいれば、たとえ気が付いたとしても、
3人は会話を止めることもなく通り過ぎて行ったのかもしれなかった。
しかし、ジェジュンは、振り向きざま、
3人の真ん中を歩いているキム・ジョンウンとしっかり目が合ってしまった。
ジョンウンが不快な表情になり、言葉を途切らせたので、
それに気付いた他の2人もジョンウンが睨んだ視線の先に顔を向けた。
そこで、この2人とも目が合ってしまった。
3人は、典型的な“虎の威を借る・・・”というか、
王族という身分と家が財閥であることを鼻にかけたお坊ちゃま達だった。
まずい3人に見つかってしまった…。
そう思ったジェジュンが、さりげなく視線を外し、窓の外へ視線を向ける。
しかし、楽しみを見つけた3人が見逃すわけもなく、
にやりと笑い合って目を合わせた3人が、ジェジュンに近づいてきた。
「おい! キム・ジェジュン。」
ジェジュンは、ごくりと唾を飲み込み、身を固くした。
ゆっくりと振り返ると、3人の顔を見つめた。
身長や体格は、ジェジュンとそう変わらない。
しかし、王族や財閥の生まれという自信が態度に現れているせいか、
相手の方が大きく感じられた。
最初にジェジュンの名前を呼んだのは、
ホン・イルジョンという王族末裔の1人だ。
ユンホとは小学部からずっと一緒だと事あるごとに口にし、
冗談も言い合える間柄だと、友達であることを自慢している。
その隣に立つキム・ジョンウンは、大手の電気メーカーで、
ホテルや劇場などもたくさん経営している財閥の息子だ。
もちろん、王族にも親類が多い。
この3人の中では、リーダーと言える。
自分以外の者が何かで一番だと言われるのを嫌い、
ユンホのことも気に入らないが、表立っては悪口も言えず、
友人の1人だと言っているが、その実、ライバル視していることは
誰もが知っていた。
残り1人は、イ・ジョング。
王族か両班の家系で、食品メーカーの息子だ。
3人のうちでは、一番おとなしく無害に近い存在だ。
しかし、2人と一緒だとあまり良いことをしない
周りに影響されるタイプだ。
「こんなところで何をしてるんだ。」
「お前には、無縁の場所だろ?」
ジョンウンとイルジョンが、さも場違いだと言わんばかりに聞いてきた。
「あ…、その…」
“ユンホを待っている”とは言えず、ジェジュンは言葉に詰まりながら、
3人から視線を逸らし、握りしめた両手に視線を落した。
つづく