一夜物語 5 ~ One ~ 前 | ねーさんの部屋

ねーさんの部屋

ユンジェの妄想部屋です(時々旅グルメ)


“一夜物語”は、その名のしめす通り、1日、一夜の出来事、
物語、という理由でもあるのですが、私の筆が順調に進んだ時が、
“一夜で書き上げる物語”でもあるからです。



このお話も、「つまづくジェジュン」でつまづいてる
ダーリンシリーズは横に置き、
日曜日(1/27)の残業帰りの車の中で、
“One”を聞きながら思い浮かんだお話です。



思い浮かぶってほどの話でもないですが、
つらつらと一晩で書いてしまうくらいには、
しっかりと思い描いたということですかね。



昨年のジェジュンの誕生日には、何を書いたかと思い出してました。



なんだったかな?



確か、「チャンミンのしれん10」で、ドロドロで、
暗くって、私自身苦しんで書いていた頃でしたよね。
あの話では、読んでいる皆さんもだいぶ苦しまれたようで…。
「先が気になって眠れない」などと言うコメントまで
いただいた記憶があります。
1年前のあの頃は、そんな話が思い浮かぶほど、
“ユンジェの間の距離”をみんなが心配した時期でしたね。



それが、1年後の今は、どうでしょう。
しっかりと時間は過ぎていき、新たな道が開けている気がします。



ユンジェ・リアル!を信じ、
いつか、“マジで結婚して!と願いつつ、
ジェジュンの誕生日記念のお話をお送りします。



いつものごとく他愛ないお話ですけどね。
(あ、そうだ。ヘス姉、生きてますよ。ちょびっとだけ登場します。)



              By 安寿子








一夜物語 5 ~ One ~ 



玄関の扉を開ける音、内鍵を閉める音、
部屋までの廊下を歩く時も、はやる気持ちを抑えながら、
できるだけ音をたてないように気を遣った。


そして、目の前のドアのノブも…。



真っ暗な室内の、良く知ったベッドの位置にそっと近づく。


暗闇に慣れ始めた目には、ベッドに大の字に眠る人の形が

しっかりと見えていた。


自然、ジェジュンの顔に微笑みが浮かんだ。



すぐに、カバンを床に置くと、ウールの帽子、ダウンジャケット、
ニットパーカーを脱いで、床にそのまま落していく。


お気に入りのクラッシュ加工のブラックジーンズを下ろしながら、
靴下も一緒に脱ぎ捨ててしまう。



カットソーとボクサーパンツ1枚の姿になると、
ベッドの左側から、大の字の人物の眠りを妨げないように、
そっと掛け布団をめくって、隣りに滑り込んだ。



大きな身体に寄り沿うように寝そべりながら、
だらりと伸ばされた左腕をゆっくり持ち上げ、
ジェジュンは自分の首に巻きつけた。



そして、その人の肩にそっと頭をのせ、
右手で、首にまわした長い腕を引っ張るように、その手を握った。



節のある長い指…。


確かめるように、もう1度握り直した。



しっかりとした肩を包むコットンのTシャツに右頬を擦りつけながら、
身体の向きをさらに温もりの主の方へ傾け、
左腕を厚い胸板へ巻きつけるように抱き付く。


それと同時に、左足も、彼の左足に絡める。



ジェジュンは、やっと、落ち着いたように息を吐いた。



「…おかえり…、ユノ…。」



ジェジュンは、ここしばらく言えなかった言葉をささやいた。



2人とも忙しく、互いの家を訪れることも、
直接会うこともできない日々が、
この数週間続いていた。



ジェジュンの誕生日も、もちろん一緒には居られなかった。



電話越しの「おめでとう」の言葉と、メールをもらった。



今夜も、もう無理かもしれないと半分以上あきらめかけていた。




ソロコンサート後の打ち上げ会場で、2時間余りが過ぎても、
スタッフの盛り上がりは続き、楽しげな笑いが大きく響いていた。


緊張から解放されたスタッフの楽しげな姿を遠目に見ながら、
ジェジュンも口元に微笑みをたたえていた。


今日のソロコンサートの無事な成功を一緒に喜んでいた。



…と、思っていた。


ねーさんの部屋-5-1


「ジェジュン…。
顔が、『早く、会いたい。』って、言ってるわよ。」



耳元で聞こえたセリフにギョッとして、ジェジュンは、横を振り向いた。



アルコールのせいで、少し頬を赤くしたキム・ヘス姉が、
いつの間にか横に座り、にんまりと笑ってジェジュンを見ていた。



「ふふん。
ジェジュン、目の前の苺見ながら、切ない顔してるんだもん。
ばればれよ~。」



苺やメロン、リンゴのカットフルーツが盛られた皿の中から、
赤く熟れた大粒の苺を摘み上げながら、楽しげにヘス姉が、
パッと顔を赤くしたジェジュンを冷やかす。



「え~?!
い、苺なんか見てたつもりないけど…」



「なぁに、じゃあ、無意識に見つめちゃってたわけ~!
“イ・チ・ゴ”見つめながら、この“イ・チ・ゴ”が大好きな人のこと思い出して、
そんな切ない顔してたわけ~~!
この~~~、万年乙女め~~!」



肩に抱き付かれ、頬をつねるヘス姉を、
必死に引きはがそうともがくジェジュン。



「ちょっと、ヘス姉~~!」



ジェジュンより、力強いことをたっぷりと見せつけるように、
ジェジュンの頭を胸に抱き込むように腕をまわしたまま、
ヘス姉が、ジェジュンの耳元でささやいた。



「会いたいなら、会いに行きなさいよ。
同じソウルに居るんだから。」



ヘス姉の囁きを聞いて、ジェジュンは、
動きを止めると、ヘス姉を見上げた。



「…でも……。」



打ち上げだって、まだ途中だし、自分から先に抜けるのは拙い気がするし、
終わる頃には、明け方になるだろう。


そんな時間から、疲れて寝るユノのところになんか行けない…。


ジェジュンが、ちらりとそんなことを考えてると、



「大丈夫よ。
ジェジュンだって、嫌じゃないでしょ。
好きな人が、時間を惜しんで会いに来てくれたら。」



「ねっ。」



ヘス姉が相槌を求めるように、ジェジュンの顔を覗きこんだ。



「でしょ?ジェジュン。」



「…うん…。」



「行っちゃえ、行っちゃえ!
行って、ユノの寝こみを襲うのよ、ジェジュン!」




タクシーにぐいぐいと押し込まれ、
『ファイティ~ン!』と両手でガッツポーズを作るヘス姉に見送られて、
マンションの前に降り立ったのが夜中の3時過ぎ…。



 ☆    ☆    ☆    ☆    ☆




熟睡しているユノの穏やかな寝息を聞き、
その大きな胸が、ゆっくりと上下に動くのを、
胸にまわした左腕で感じる…。



ジェジュンは、急に泣きそうになり、
キュッと目を閉じると、熱くなったまぶたをユノの胸に押し付けた。



そして、くぐもった小さな声でつぶやいた。



「…ただいま…、ユノ。」



すんっと鼻をすすり、ジェジュンがゆっくりと顔をあげる。



目の前のユノの眠る横顔を、暗闇の中で見つめた。




今夜のユノは、熟睡モードなのに、大口を開けて寝ていない。



軽く開いた程度で、男前は保たれている。



…カッコいい…、ユノ……。



緊張感のかけらもない寝顔にさえ、ときめくジェジュン。



乙女のような恋する瞳になると、じ~~っとユノの寝顔を見つめ続けた。




ふっと、『襲っちゃえ!』と言ったヘス姉の声が頭に浮かんだが、
こんなに熟睡しているユノを襲う気にも、起こす気にもなれなかった。


すごく忙しいのも、すごく疲れているのも知っているから
なおさらだった。



でも…、
…キスはしたかった…。



ジェジュンは、身体をそっと起こすと、
枕元に肘をつき、ベッドサイドのナイトランプの小さな灯りを点けた。


オレンジ色の薄暗い明かりに、ユノの寝顔が浮かびあがる。



ジェジュンは小さく微笑むと、ユノの顔へ顔を近づけた。



ユノの頬を包むようにそっと手を添えると、
寝息を漏らす開いた唇に、そ~っと、唇を触れさせ、
…目を閉じた。




                  つづく



(画像はお借りしています)