2008年 5月13日。

高度医療センターでMRI検査を受ける。


全身麻酔をかけるため、前日夜から絶食状態。

朝は水さえ飲ませていない。


予約の10時。

時間どおりに先生が吟を迎え入れる。

そしてあっさり奥に連れて行ってしまった。


数日前、初めてここに来た時は歩けなかった吟。

何が良かったのかわからないが、おとといから何事もなかったかのように歩けるようになっていた。


よっぽど楽しいのか、怖いことを一切されず先生たちに良くしてもらってるのかはわからないが、吟は振り返ることもせずブンブンしっぽを振って入って行った。


先生は目を丸くして驚いていたが、今思えばこれが吟の“おかしな症状”のはじまりだったのかも知れない。


「何かがありましたらすぐにご連絡しますが、麻酔がすっかり醒めるまでこちらで様子をみますので、早くても4時くらいにはなると思います。」

そう言われ、診察室を出た。


出てすぐに受付で“麻酔承諾書”を書き、病院を出た。


今日は息子を一緒に連れてきた。

朝学校に送り出す時間も、お帰りっていう時間にも家にいてあげられない。

吟が検査を受けている間、二子玉川の駅周辺で久々に“二人の時間”を過ごすことにした。

息子は小学3年生。

一人っ子のせいか、とても甘えん坊だ。

急に悪くなった吟の体調に戸惑いながら、息子なりに心配と我慢をしていたようだ。


駅前の高島屋に車を停め、少し離れた別館にあるペット用品コーナーまで散歩がてら歩いた。

途中で携帯が鳴った。


病院からだ。

「吟ちゃん、マイクロチップが入っていますね。

チップを抜かないとMRIに入れないんですが、切開してもよろしいですか?」

いいも悪いもない。

取らないと検査できないなら取るしかない。

今は個体識別より命が大事。


再度先生に「吟をよろしくお願いします」と頼み、電話を切った。


2時頃病院に戻った。

受付に立ち寄り、検査の状況を聞く。

「まだどなたも検査室から戻っていないのでまだかかると思います。

終わりましたらお呼出しいたしますので、4Fにてお待ちいただけますでしょうか。」

お姉さんがにこやかに言った。


4Fで待つこと2時間弱。

放送で呼ばれた。


診察室に入ると、とても元気そうな吟がいた。

後頭部と首にバリカンで剃られた大きなあと。


パソコンのモニターに映し出されたMRI画像を見ながら説明が始まった。


「結論から言います。

何の異常も見当たりませんでした。

念のため、頭部だけでなく首まで撮ってみたのですがおかしな箇所はありませんでした。

数日前の麻痺の状態、関節の腫れから髄膜炎・多発性関節炎の疑いもあったので、後頭部から脳髄液、腫れていた前足から関節液を抜いて調べました。

こちらもとてもきれいな状態で、あれだけの症状が出ていたことの説明がつきません。

血液検査の結果も前回と変わりはありません。

ただ、ここでは分析しきれない専門的な項目もあるので、多少時間はかかりますが外部機関に検査を一部依頼します。

ひとつは“抗核抗体”といって、自己免疫疾患に関わるものがあるかどうかを調べるものです。

もうひとつは“重症筋無力症”であるか否かの判断をするためのものです。

こちらはあいにく国内ではできないため、アメリカに送っての検査になるので時間がかかります。」


聞いたことはあるが、なんだか難しい単語やら病名やらが並ぶ。

ひとつひとつメモをとりながら聞いた。


「なぜ今回のような症状が出たのかはまだわかりません。

ほんの数日でこれほど回復した理由もわかりません。

なので、しばらくは今飲んでいるお薬を続けてみましょう。

また来週来てください。」


受付で精算を済ませ、次回の予約を取った。

しばらくすると先生自ら薬を持って待合室に現れ、処方薬の説明をしてくれた。


この日処方されたのは、

ステロイド剤・・・炎症をおさえるため。

整腸剤・・・・・・・軟便が続いているため。

抗生物質・・・・・ステロイドによって免疫作用が落ちるので、細菌感染を防ぐため。


なんだか煮え切らない結果だが、まずは吟が無事に元気に戻ってきたこと。

脳や脊髄に問題がなかったことを素直に喜びたい。



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