若い患者さんが通院していました
5年前にがんがわかり、手術と抗がん剤治療
その数年後に再発し、抗がん剤と手術
その後色々な抗がん剤を使ってきたけれども効果が無く、治療終了
緩和ケアへ・・と言われていた患者さんです
若い方です
本人はまだ諦めたくない・・治療をしたい・・と
両親も、できるものは何でもトライさせたい・・
その想いに、主治医も見守ってくれました
肺病変の進行が早く、呼吸苦が出現していました
体力も落ち、時間的な余裕の無い方でした
当院の少量抗がん剤治療を開始しました
体調が悪い時は通院を延期し
しんどい時には、一時的に入院することもありました
それでも本人は生きたいと、治療を望みます
皆、葛藤が続きました
呼吸が苦しく、通院が出来なくなりました
緩和ケアに入院しました
酸素の量が増え、医療麻薬も増えました
鎮静剤投与も開始されました
それでも本人は「生きたい」と訴えます
付き添う家族に
「この治療はできないか?あの治療は出来ないか?先生に聞いてくれ」と
声にならない声で訴えます
鎮静剤を増やすことを望みませんでした
昨日は寝た・・
「昨日は鎮静剤で寝たから、今日は寝ない
寝たら死んじゃうから、無理にでも起きてる」 と
そして次の日も 「寝たら死んじゃうから」 と、無理に起きていた
その翌日
「今日なにか起きそうなんだ・・・」と
その言葉を聞いた家族が親しい友人達に連絡を入れました
連絡を受けた友人が次々に病室を訪れます
皆、思い思いに言葉をかけます
彼氏が、「ハワイに行こう・・ ディズニーに行こう・・ 」と話しかけると
目を瞑ったままうなずきます
最後の友人が到着したすこし後、肩で2回息をしてそのまま呼吸が止まりました
そこに居た全員がその瞬間を見届けました
家族から連絡がありました
いままでお世話になりありがとうございました
本人が望むものは、やらせてあげられたんです・・
それでも駄目だったので、仕方ないんです・・
ずっとまともに寝ていなかったので、今やっとゆっくり眠れてると思います
本当にありがとうございました
若い患者さんの旅立ちは、本当に辛いものです
彼女は、最後の最後まで生きたかったのです
《最後までとことん戦いたい》 と思う人が居るという事実・・
彼女の生きざまは、家族や友人、そして関わった医療者に多くのことを残しました