終活シリーズ②はHさん、女性です

 

当院で治療を開始した時から

「家の片づけしないと死ねないから、もう少し生かしてほしい・・」と

言っていました

 

お子さんは独立し、夫とは死別の1人暮らし

親が残してくれた不動産を管理し

 (ぼろアパートだから修繕費ばかりかかる・・と言いながら)

趣味の活動を継続し、1人暮らしを満喫しています

「子供に迷惑かけないビックリマーク」宣言をし、子供にとってもカッコいい母親でした

 

ゆっくりと病状が進行し、弱音を吐くこともありました

でもそのたびに、「まだ片づけ終わらないから死ねない」と・・

亡き夫の両親のもの、夫のもの、そして自分のもの・・

これを整理して逝かないと子供たちに迷惑がかかる・・だから何が何でも・・

そう言います

 

でも、その言葉とは裏腹に

 今は寒い時期だから片づける気にならない、無理したら風邪ひいちゃう

 親の具合が悪くなり実家に帰る、忙しくなるので片づける時間が無い

 新しくテレビを買ったら夜更かししちゃう・・起きるのが遅いので片づける時間がない

 

そして、実家の親が亡くなり

 母がすごい荷物の中で生活をしていた・・

 遺品の整理が大変、自分は整理して逝く と宣言オー

 

そのあとは

 まだ片づけ出来ない・・

 片づけ出来ないってことは、まだ死なないんじゃない私エヘヘ

 

 すごいポジティブきらきら

 

 

そして月日が経ち

 1人での通院が難しくなりました

 自宅にヘルパーさんが入ることになりました

 訪問のDrや看護師が入ることになりました

 

それでも、1人暮らしの生活を継続したいと思っています

 出来ないことが増えていきます

 そろそろヤバい・・と思います

 子供に迷惑をかけたくないと緩和ケア入院を考えます

 

緩和ケア入院の前日が当院の治療日でした

 

 「たぶん今日が最後だと思うんで・・

 今までお世話になりましたぺこり

 スタッフ皆に挨拶します・・

 付添の娘さんが見守るように微笑みます・・

 

その2週間後、入院先の緩和病院で天寿を全うされました

娘さんに看取られ穏やかな最期だったと・・

 

当院での治療は3年半・・

前医が驚くほどの延命でした

 

お別れの会に出席してきました

母が望む「会」にしました・・と娘さん

 

お花が好きだったHさんらしく

お花に囲まれた「家族・友人葬」

お坊さんも居ず、お経もお線香もない葬儀です

 

親族や指名された友人達が、故人の思い出を語ります

時にはクスッと笑ったりクスで、まるで結婚式のスピーチのようです

 

そして

 母がこれを着たいという着物を着ていますので

 みなさんどうぞ母を見てやってください音譜・・と娘さん

 

棺の中のHさんは、綺麗にお化粧をし、素敵な着物に包まれ、

口角がきゅっと上がり、娘さんそっくり

その側には笑顔の娘さんと息子さん・・

 

なんなんだろう・・この葬儀

 

「こうしたいビックリマーク」という本人の意思と

「こうしてほしいだろう・・」という子供たちの思い

それに、「こう見送ってあげようきらきら」という友人たちが見事にマッチ

 

その後の会食の席もワイワイ、ガヤガヤ・・

挨拶に回る家族に

「よく頑張った素敵なお母さんね・・」と皆声をかけていました

 

 

そういえば片づけどうなりました?と娘さんに尋ねると

聞いてください、亡くなる少し前に「家の整理どうすればいいの?」って聞いたら

もう、声にならない声で

テ キ ト ウ」って言うんです・・

適当」ですよ!!

もう笑っちゃいますよ、あんなに時間稼ぎさせてもらったのに

結局何もやって無くて、あとは適当によろしく・・ですから

母らしいっていうか・・

これから大変です・・

 

大爆笑です爆笑

 

Hさんの終活でした・・