いつも家族と一緒に来院されるAさん
診察室を出て、点滴室に向かうと
付添の家族が「先生ちょっといいですか・・」と、内緒話
このところ母が落ち込んでるように見えて・・
いろいろ調べたら 「がん性うつ」 じゃないかと思うんです・・
確かに覇気がなく、いつもより元気がないよう・・
Aさんの様子をうかがいに点滴室に向かいました
「このところどうですか・・
寒くてなかなか外出できないですよね・・」などから切り出し
世間話に持ち込むと
自分の生い立ちから、仕事の話・・
結婚して子供が生まれた・・
それでも仕事を優先して、子供にかわいそうな思いをさせた
夫が独立し、仕事を始めた、手伝った・・
忙しくなり、子供を十分に構ってあげられなかった
今まで誰よりも体が丈夫だった
無理をしても、夜なべをしても大丈夫だった
幸せだった
それなのに、今は人の手を借りないと十分に出来なくなった
もうこんな状態なら生きててもしょうがないと思う
でも、家族が頑張ってくれる
私のために、自分の時間を割いてくれる
申し訳ない・・
そう思うとまだ死ねない
子供に手をかけてあげられなかったのに、子供がこんなに尽くしてくれる
ありがたい・・私は幸せ・・
生かされてるのかしら・・
週に1回の通院以外は、自宅で家族と過ごすAさん
家族以外との交流が無く、口数も少なくなっている様子
家族だけだと、あうんの呼吸で会話がなくても生活が成立するので
必要最小限の会話になってしまう
ましてや、役割がどんどん無くなっていくこの頃
自信喪失、自己否定
TVをみてもつまらなく
本を買っても、気力が続かず読めない
んんん~~やることもない
どんどん
他人が家の中に入るのは嫌 というけれど
家の中に入らない他人と話をするのはどうかしら・・
話をすると、昔のこと思い出したり、TVや新聞の話題になったり
頭が活性化しますよね・・
声も大きくなり、笑ったりで顔の表情変わりますよ・・
血行が良くなって、ほら、頬がピンク色になっています
通院で外に出るのも悪くないですね~~
そんな話をしました
また来週来ますね
話を聞いてくださいね
Aさんはそう言って、帰られました
頬はピンク色でした