80代の肺がん患者さんがいました
高齢なので抗がん剤は勧められないといわれました
独身の娘さん(Yさん)は公務員でした
自分のお金を全部使っても、母を長生きさせたい・・
何か負担の少ない治療は無いかと探しました
陽子線治療が該当しそう・・と相談に行きました
自由診療で300万円です
長生きしてほしい・・と母に懇願しました
母は、「この歳まで生きられたからもう治療しなくていい・・
私のためにそんな大金使わなくていい」と言いましたが
娘に何度も懇願され、折れ、治療を受けることになりました
その後経過は良好で、定期的な経過観察を繰り返していました
海の見える暖かいところで静養したほうが良いだろうとという
Yさんの発案でリゾートマンションでの生活が始まりました
母の「がん」はおとなしくしていました
食べ物に神経を使いました
無農薬野菜を届けてもらい
高額なサプリメントも試しました
患者さんは90歳になりました
Yさんは定年退職をしました
これからはもっと母と一緒に居たいと思いました
退職金で家を建てました
引っ越した数か月後、患者さんは老衰で亡くなりました
せっかく母のために家を建てたのに・・とYさんは嘆きました・・
90代の患者さんが亡くなった数か月後、Yさんから電話がありました
咳がでるので病院に行ったら、母と同じ肺がんが見つかった
結構大きくて驚いた
手術はしたくないので、鹿児島の自由診療の放射線治療を受けてくる・・と
その後定期的に経過報告の連絡がはいりました
次から次へと自由診療の治療を受けました
銀座から近いところの免疫クリニックに行ってるの・・と
立ち寄り報告を受けることもありました
母のときから数え、約10年もの付き合いの方です
多くの情報を入手し、自分の治療を模索します
保険診療より自由診療の治療のほうが新しく
より期待の持てる治療と思い込んでいる様子でした
当院でも保険診療で少量抗がん剤治療を行っているのに
見向きもしない感じでした
再発した・・
もっと高い免疫療法を試す・・など報告が入ります
電話報告の間隔が長くなりました
動けなくなりつつあり、在宅診療を受ける・・と報告がありました
それから数か月後、Yさんの姉から電話がありました
自宅で永眠し、明日がお通夜です・・と
10年来の付き合いということもあり
三好Drとお悔みに伺いました
生涯独身で母のために尽くし、親孝行のYさんでした
母とYさん自身の治療費、そしてこの家
Yのお金を全部使っちゃった・・と話す姉
すっからかんになり
そして3人で過ごした家にあっという間に1人きりになった・・と嘆く姉
このお金の使い方もYさんならでは・・だと思いますが
高価な治療 = 効く治療
必ずしもそうでないことを知っておく必要があると思います