「私ががんになって、長いこと治療してきたから
子供の教育費や成人式の費用を使っちゃったんです・・」
そう言って、携帯電話の写真を見せてくれた患者さんKさん
そこに映っていたのは振袖姿の娘さんの写真でした
「まぁ、素敵ですね・・写真撮られたんですね・・」と尋ねると
「写真屋さんでは1枚だけ・・
本当は何枚も撮ってあげたかったけど、お金が・・
早い時期に撮影すると安いっていうし
ほら、私も成人式まで生きられるかわかんないから
早いうちに・・と思って」 と
「子供たちに、ごめんねって言っても、いいよ・・いいよ・・って
きっと我慢してるんだよね
でも、もう少し生きたいし・・ホントにゴメンしか言えない・・」
母としては子供の成長を見届けたい
それには治療費がかかる
そうすると教育費や成人式のお金を削ることになる
苦しい胸の内・・
「子供のこと考えたら病気の母親が生きてるのと
母はいないけど、まあ進学を気にしなくて済むのと
どっちがいいんだろうね・・」 悲しい笑顔で話すKさん
そしてまた、口数の少ない、不器用そうな夫が
遠方からの通院に一生懸命に付き添う・・
いつの日からか、車いすをも上手に押して来るようになった
これらは愛情がなければ出来ないこと
生きてほしいから続けている・・
子供も、がんを患っても一生懸命に生きている母の姿を
見続けてきた
「生きる」って綺麗ごとじゃないことを体験した
母はがんばった・・
すごい・・ と胸に残ったはずである