それまで独歩で通院されていた患者さんが
ある日、車いすで来院されました
自宅で転倒し、ふらふら危ないので
外出は車いすを利用することにした・・と
賛成です、外で転倒し、骨でも折ったら
がん治療が継続できなくなりますもんね・・と私
ただ、問題は
初めて車いすを押す夫が、勝手がわからず
段差を力づくでガンガン進んだり、坂道を早いスピードだったり
乗っててまぁ、怖いこと怖いこと・・と患者さん
押す側のご主人は
このビルの入り口、段差があるから介助者1人では無理でしょう
もう普通ではないんですね
歩けないってことは、もう とすっかりネガティブ
あまりに 「車いす」 = 「もう駄目」 を連発するので
「帰るときに、このビルの段差を練習しましょう
一緒に行きますから」 と私
意外に素直に
「よろしくお願いします」 という返事が返ってきました
その日の治療が終わり
車いすに乗った患者さん、押すご主人、そして先生役の私と
3人でビルの下まで降りていきました
当院のビルは歩道との間に15cm位の段差があります
車いす初心者には、「この段差があるから無理~~」
じゃ、私が押すのでご主人見ててくださいね
降りるときは後輪から・・
まず声をかけながら、「後ろが下がりますね・・」
そして残った前輪をゆっくり降ろします
ご主人は 「ほぉ~~」 と言いながら見ています
次は段差を上りますね、テコの原理を使います
後下についてる鉄の棒(テッピングレバー)を足で踏むと
前輪が上がるんですね
前輪を上げ、段差に乗せ、そのあとで前に進みながら後輪を上げます
このくらい(15㎝)の段差は問題なく上れます
これも、患者さんの角度が変わるので、いきなりではなく
「前が上がりますね~~」 と声をかけてやってくださいね
「おぉ~~」 とやたら感動するご主人
じゃ、やってみましょうと、ご主人にバトンタッチしました
真剣な顔で車いすを操作します
集中するので、声掛けが出来ません
「声かけましょう」 と私が言うと
「前が上がります」
「う、後ろが下がります」 と他人行儀な言葉
それでも、自分で「もう一回」と言いながら
こつをつかむまで繰り返し練習していました
不器用で・・でも、ほほえましく・・
練習ののち「ありがとうございました」と帰られました
次の来院時に「車いす大丈夫でしたか?」と尋ねると
「先週教えてもらったので大丈夫です
もう電車に乗って、問題なく来れますよ」 と自信満々のご主人
ネガティブ発言から一転していました
経験は力です
がんばったご主人に