「このおじいちゃんもうすぐ死にますよ」

訪問医が、本人のいる部屋で家族に発した言葉です




Wさんは、当院への通院治療が難しくなり、一時的に入院しました


入院先は、以前他の患者さんもお世話になったO病院です

担当のS先生は当院の患者さんを安心してお任せできる先生です



入院からしばらくたったある日、三好Drと一緒に面会に行きました


Wさんはベッドサイドに坐ってお迎えしてくれました



三好Drが

「下肢筋力が落ちてしまわないように」と
起立着席訓練の仕方を教えると


家族の手を借りながら、数回やって見せてくれました


「昨日までは調子悪く横になっていたんですが

 先生が来てくれるよ~~っ言ったら、急にこの調子で

 立ったり坐ったり出来るし・・

 ゲンキンですよね~」 と家族が話します


がんばった姿を私たちに見せ、疲れたと言い、水を飲むと

ゲホゲホとむせ込む・・


S先生も様子を見ていて

 「入院中に嚥下のリハビリしますね」 と話してくれました



 「退院したらまた銀座に行くのでよろしくお願いしま~す」 と 

Wさん&家族


私たちは

 「思ったより元気そう、眼力があります・・銀座で待ってます」 と

O病院を後にしました



それから数週間後、Wさんは肺炎を発症しました

呼吸が苦しくなり酸素が必要です

危険な状態になりました


本人が「自宅に帰りたい」といいます


家族も、本人の意思を尊重し、家に帰ろうと考えます


S先生に伝えると、意を汲んでくれ

家に帰るためにさまざまな手配を素早くしてくれます


在宅酸素、介護タクシー、ケアマネさんへの連絡

そして、訪問の医師と看護師の導入・・


覚悟の帰宅です


O病院にお礼を言い、介護タクシーで自宅に戻ってきました

住み慣れた我が家にやっと帰ってきました


自宅に戻ったその日に、訪問医が来てくれました


しばらくWさんを診療すると、その部屋で家族にむかい

 「このおじいちゃんもうすぐ死にますよ」 と発します


よくこの状態で帰ってきましたねと言わんばかりの態度です


別の部屋で家族だけに話をするならまだ

本人意識もあるし、聞こえてる状態で、本人の居る部屋で話したと・・



今までどの先生も「意を汲んで接してもらい」ありがたいと思っていた

それが、最後の最後に・・・



 「この状態だから帰ってきたんです

 本人家に帰りたがっていたんです

 最期は家で迎えさせたかったんです

 それがなにか?」 

口には出さずとも、家族はそこまで出かかりました



それでも救われたのは訪問看護師さんです


丁寧に接してくれ、気持ちを読みとってくれ

そして包んでくれたと



自宅に戻った2日目の朝

「ありがとう」と言葉にし、涙を流し

穏やかに息を引き取ったWさん



家族から

「お世話になりありがとうございました

おかげさまで本人が望む生き方を全うすることができました」

という報告とともに




「最後にあったドクハラの悔しさ・・

 それだけが・・・」 と



家族の胸の中で、訪問医が発した言葉が消えません