Fさんは婦人科がんの患者さん
腹水が急に溜まり、動けなくなった・・という電話相談から始まり
セカンドオピニオン→当院での治療開始となった方です
腹水穿刺や腹膜還流(CART)を行いながら
休眠療法(低用量抗がん剤)を行い
要介護5(1番重い)・車椅子での通院状態から
海外旅行に行けるまでになりました
介護が全く必要なくなったFさんは女友達との外出を楽しみ
介護休暇を取得したご主人は、主不在の自宅でゲーム三昧とか・・
数か月の介護休暇取得後、ご主人は職場に戻り
Fさんは1人で通院・・帰りに映画を観たりと
そんな生活が数か月続き、そして再び腹水が溜まるようになりました
1人での通院が辛くなり・・
ご主人が会社を遅刻しながら車での通院となりました
家事が出来なくなりました
日中1人で自宅で居ることが不安になりました
友達がシフトを組んで日中自宅に来てくれることになりました
ヘルパーさんや看護師が在宅に入ることになりました
通院のたびに
「岡田さんが時間があったら・・」と呼ばれるようになりました
点滴中にベッドサイドで話をするようになりました
頑張り屋のFさんは、ご主人のことを気遣い
・仕事と家事、介護でつぶれないか心配
・全てに一生懸命なので手抜きするよう話してほしい
・家事で手荒れがひどくなっている
・自分が何もできなくて申し訳ない
・介護休暇を取ったあとなのに、遅刻や早退をさせてしまっている
・休日は少しは自分の休息の時間をとってほしい
・私は友達もいるから大丈夫
など、強がる発言をしていました
さらに数か月、体力が落ち、自宅で居ることの不安を訴えるように
なりました
緩和ケア病院に入院したい・・と相談を受けました
いつものようにベッドサイドに呼ばれると
強気なFさんが、ホントは・・・と話してきました
・1人で自宅に居るのが怖い
・友人が来てくれるけど、友人は元気だから私の気持ちが
わからない
・ヘルパーさん来てくれるけどいつも忙しそうで・・
・死ぬのは怖くないって言ってるけど、ホントは怖い
・このままどうなっちゃうんだろう私
・誰にも頼れない・・夫しか居ない
・ホントは夫に仕事休んで1日中一緒に居てほしい
・無理・わがままなのは知っている
・不安で不安でおかしくなりそう
私に本音をぶつけてきます・・Fさんの頬を涙がつたいます
私はFさんに
今の話、ホントは全部ご主人に話したいんだよね
私が聞いちゃったけど、ご主人ここに呼ぼうか? と話すと
Fさんは泣きながらうなずきます
待合室のご主人をベッドサイドに呼びました
Fさんは堰を切ったように話し出します
ホントは怖いの・・一緒に居てほしいの・・
会社に行かないでほしいの
ずっと一緒に居てほしいの
わがままだと知ってるけどそうなの
会社に行かないで・・1人は怖いの
泣きながら声を荒げて話します
我慢していた気持ちをぶつけます
どこにそんな力が残ってるんだろう・・という気迫です
ご主人は頭を撫でながら話を聞いています
それはFさん最後の来院日の出来事でした