当院で治療している「がん患者さん」は
自宅から通院されている患者さんです
長い期間、自宅から通院治療ができれば
「自宅」という自分の居場所で
自分の好きなことが出来ます
自分らしい生き方ができます
時間を自由に使えます
好きなものに囲まれた生活が続けられます
食べたいものを食べたい時間に食べられます
会いたい人に面会時間関係なく会えます
自由に外出ができます
気兼ねなく過ごせます
一方、「入院」すると規則に縛られた生活になってしまいます
特に「がん患者さん」が入院するときというのは
自宅で生活することが難しくなった場合や
緊急事態のことが多く
緩和ケアやホスピス入院であれば
なおさら「入院したら最後」「最期の時間」 となり得ることが多いです
多くの患者さん・ご家族が口にするのは
「できるだけ長く自宅に居たい」
「入院したくない」 の2つです
少数ではありますが「入院したい」と口にされる方がいます
自宅に居ることが不安で不安で仕方ない方です
私が以前経験した患者さんをご紹介します
50代の女性です
2時間ぐらいかけて通院していました
うつ傾向にあり、午前中の不安が強い方でした
抗がん剤治療の帰りは決まって帰りの電車で吐き気がするというので
ある時から「魔法の吐き気予防点滴」と称して
「ビタミン点滴」を追加しました
その日から帰りの吐き気はなくなりました
「魔法の吐き気止めが良く効いている」と満足そうでした
小康状態が続き、通院継続をしていましたが
徐々に進行し、通院が難しくなりました
当院に治療に来られたある日、その方の一声目は
「入院したいです、今日このまま入院出来ませんか?」
不安が強く、自宅では気が狂いそうだと言います
入院の荷物を持ち、当院に来院しています
患者さんの顔が訴えています
当院がお願いする病院に、三好医師が電話を入れ
その日から入院させてもらうことになりました
それから数日後、入院先病院に様子を見に行きました
衰弱していないと良いな・・と思いながら病室を開けると
元気な顔の彼女が居ました
訪ねた私を「来てくれてありがとう」と迎え入れ
饒舌にいろんな話を聞かせてくれます
明るい顔で数日前とは別人です
何より驚いた言葉は
「ここは天国・・お医者さんも看護師さんもいて
なにもしなくても決まった時間に食べ物が出てくる
なにも考えなくていい・・
今までは考えてたから不安だったんだと思う」と・・
多くの方が「入院したらきっと帰れないから、入院したくない」と言う中
入院し、安心を得ることで穏やかに過ごせる患者さんもいる・・
10人10色の生き方を、改めて考えさせられた症例でした