いろんな患者さんが来院されます


ご高齢の方、若い方、遠方の方、稀少ながんの方


毎回家族総出で来院する方


そしてひとり暮らしの方・・



今回は私が出会った印象深いひとり暮らしの患者さんを紹介します



Tさんは60代の乳がんの方

独身で仕事をバリバリこなし、定年後も慰留されて

嘱託で働いていました


朝一番で当院の治療を受け、終わり次第に職場に向かう生活を

継続していました


人生を謳歌されてるようで、趣味の話や旅行の話

そして今の若い人は・・など職場の話も良く聞かせてくれました


数年間、安定した状態が続いていましたが

ある時から病状が進行し、体がきつくなり

さすがに仕事を引退させてもらったと・・


引退後はカジュアルな格好で通院され

いつまで通院できるかしら・・と弱音を吐くことが多くなった


 kuro-baがん患者歴が長い

 kuro-ba人に迷惑をかけたくない

 kuro-ba自分のことは自分で決める


しっかりした自分を持っているTさん


できるだけ長く自宅(持ちマンション)で生活したいということで

介護保険を導入し、ヘルパーさんに家事をお願いすることになった


呼吸が苦しくなり在宅酸素を導入した


1度だけ当院から往診で点滴に向かった

私も同行すると、Tさんの自宅にはお友達が3人・・


お友達に、買い物や銀行・・分担して外回りをお願いしているの・・という


リビングに介護ベッドが設置され

横になっていたTさんに点滴を行った


几帳面な性格のTさんの自宅は

いつどうなってもいいように・・ときちんと整理整頓されていた


通院が難しくなり、訪問医療を導入することになった


数日後離れて住むTさんの兄から電話があった

治療を継続したいというので、離れて住む兄2人が通院同行することになった

よろしくお願いしますと


今まで1人でがんばって通院していたTさんが

兄2人に支えられるようにして通院すること数回


1人でがんばって「キリッ」としていた顔が

甘えん坊の「妹」の顔になっていた


ホスピス入所を決めたので

マンションを売却する、手続きに兄がいて良かった


このままいくと、自分としてはあとこのくらいと思うので

来週当院の治療をしたその足でホスピスに入所する


着々と、淡々と、身辺整理をしていく



そして当院最後の治療日

車椅子で来院し、すべてのスタッフに「ありがとう」と言った


会計が終わり、本当の最後になった


診察室の三好Drも見送りに来た

スタッフ総出で「いってらっしゃい」と送り出した


車椅子のTさんは、片手を振りながら

「ありがとうございました・・行ってきます・・」 と当院を出ていった


数週間後兄から電話があった


「先ほど亡くなりました・・穏やかな最期でした

兄がいうのもなんですが、立派な妹でした

今まで本当にありがとうございました」




「ひとり暮らしの方は全て自分で決めなければならない」 が


「全て自分で決めることが出来るのがひとり暮らしのメリット」でもある