Tさんは60代 子宮がんの患者さん

「がん」との付き合いは8年


4年前、治療中の大学病院で「あとは緩和」と言われ

緩和ケア科紹介となった


Tさんは、まだ何か治療をしたいということで

縁あり当院にたどりついた

当院の治療歴はもうすぐ4年となる


ゆっくりと病態は進行し、在宅酸素を導入して数か月になる・・

酸素を使用しないと酸素飽和度が91%位になる(健常人は98~100%)

体重が減り、腰の痛みも出てきた・・

骨の転移かしら?と本人が言う

医療用麻薬を使用している


先日来院した時は

「私ももうそろそろなのかも・・夢見が悪い

死んだ人がいっぱい出てきた・・」と


このTさんをどうイメージするでしょうか?



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Tさんは現役のベテランヘルパーさんとして

多い日は1日に6人もの在宅訪問介護の仕事をしている

食事を作ったり、食事介助をしたり・・


仕事で外出するときは在宅酸素は使わない


仕事が大好きで、お宅に入ると痛みも咳もぴたっと止まる

身体が勝手に動くし、苦しくもなく会話も弾むと


念のため、バックの中に携帯用スポーツ酸素缶を携帯し

利用者さん宅の移動中に吸うことが時々ある


移動は「自転車」

歩かないから苦しくならないと


その日の訪問が全部終わり、家に帰ると在宅酸素を使用する

ぐったりだけど、1日中自宅にいたら病人になっちゃう・・


さすがに進んでいるのはわかる

体重がどんどん減る

まずいと思い、夜寝る前にポテトチップ食べたり

自分なりに努力をしている


自分の身辺整理を始めた

靴や洋服をどんどん捨てている


仕事は出来る限り続けたい

好きだから、辞めたらただの病人になっちゃう


きっと、今普通の病院に行ったら即入院だよね・・

もうダメなのはわかってる

だから先生、このままここの治療を続けさせて

わがままな患者でごめんなさい


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こう言われたら誰も何も止められない


その人の生き方を尊重し、いかに永くその人のやりたいことを支援できるか

医療者側の課題となる


Tさんの発言を聞きながら

「生きがい療法」と結びついた


「生きがい」を持っている人=「欲」のある人=「生きる欲がある」

結果として「長生き」に寄与する


今後も超人Tさんは「生きがい」である仕事を継続し

サバイバー患者として生きていくのではないか


私はそう思う