「妻を看取る日」
~国立がんセンター名誉総長の喪失と再生の記録~
これは、長年がん治療にかかわってきた医師
(国立がんセンター名誉総長、垣添忠生先生)が
妻をがんで亡くし(自宅で看取る)、絶望の淵から立ち上がり
再び何とか歩み始めるまでの記録を書いた書籍です
<前半>
がんセンター名誉総長の愛妻が、「がん」に罹り
がんセンターに入院するも、ターミナルとなり、
「家で最期を迎えたい」という気持ちをくみ、自宅に戻る
自宅に戻った4日後に、たった1人で妻を看取った
この事象だけをみると
・天下のがんセンター名誉総長の家族でも
病院より自宅が良いんだ・・・
・へぇ~名誉総長が1人で看取ったんだ・・
・奥さんは幸せだったね~
となるが、問題はその後の中盤である
<中盤>
妻を失った天下の名誉総長がなんと、喪失から「うつ状態」になる
・大晦日に永眠したため、たった1人で正月を過ごすことになった
・食事の味がしない。「砂を噛む」ような感じ
・自宅で1人酒浸りの日々
・食欲がない
・眠れない
・新聞を開いても読む気がしない
・妻の遺品をみると涙が出る
・妻と一緒に行った場所に近づくと涙が溢れ出る
・体重がどんどん減る
・生きていても仕方がないと思う
・死ねないから生きている
最初の1ヶ月はこのような状態で、終わりが見えなかった
永遠に続くのではないかと絶望的になった日もあった
しかし3か月ほど経つと、わずかな回復のきざしが見え始めた と
<後半>
悲しみが癒えることはないが、時間とともに和らいでいく
時の流れに身を任せれば良い
こう思えるようになった
時間とともに血は止まるが、傷を埋めるために盛り上がってきた
柔らかい肉芽にちょっとでも触れれば、また血が噴き出してくる
そのうちだんだん傷口に薄皮がはり
皮が厚くなり、そして少し触れたぐらいでは傷つかなくなる
悲しみは永遠に消えないが、急性期の生身をあぶられるような苦痛は
やがてすこしずつ治まっていく。
私は1人で苦しみぬいたが、苦痛を軽減するグリーフケアは
社会的にもっと定着させる意味がある
自分に対しての具体的な取り組みとして
・食生活の見直し
・酒浸りの生活の立て直し
・運動の代わり歩く
・新たな生きがいを見つける
社会的な取り組み
妻の死以降に新たに生じた課題に積極的に取り組みたい として
・在宅医療・在宅死を希望する人たちに届ける整備
・愛する人を亡くして苦しむ人たちが希望するなら
グリーフケアを医療の一環として届け得る体制の実現
総じて、私の感想は
何千人何万人という大勢のがん患者さんをみてきた
天下のがんセンターの名誉総長でも
1番大事な愛する人を失うと
「ただの普通の人」・「悲しみを抱えたうつ状態の遺族」となる
地位も名誉も関係ない「生身の人間」なんだな・・と
遺族が抱える「喪失感」に特効薬はない
心の穴が埋まるには時間がかかる
あなただけではない・・・