本日の朝日新聞の朝刊に
大阪のホスピスで週1度、患者さんのリクエスト食を提供・・
という内容の記事が掲載されていました ↓
記事によると
「淀川キリスト教病院ホスピス(大阪)は、最後の時を過ごす
患者の心のケアとして「リクエスト食」を打ち出した。
毎週土曜日の夕飯は患者の希望をかなえたものを出す。
ちらしずし、お好み焼き、パフェ、卵焼き。なんだっていい。
「最後の食事」にはさまざまな思いがこめられている。」
その中で、
「刺し身」をリクエストした男性と
「茶わん蒸し」をリクエストした女性の紹介がありました
そして、
「心のケアとして力を入れるのが食」
「命の見通しが短い患者さんがこれを食べたいという気持ちを
大切にしたい」
という、副院長と栄養士さんの言葉で結んでいました。
この記事を読みながら、ある一人の患者さんを思い出しました
長い付き合いの患者さんで、いつの間にか「親戚」のような関係性を
構築していた、女性の患者さんです
彼女は「最期はホスピスで・・」という希望の方でした
娘さんから
聖路加病院の緩和ケア病棟に入院し
主治医から「そう長くはない」と告げられた・・と連絡が入りました
味覚が変わり、食べられるものが限られている・・
比較的苦いものなら少しは・・
どんどん食が落ちて・・という話を聞いていました
三好Drと相談し、聖路加病院に会いに行くことにしました
何か口に出来るものは・・・と考え
私は、コーヒーゼリーを差入れました
彼女は、「苦いものは食べられる・・」と、
ほんの少し口にしてくれました
少し遅れて、三好Drが顔を出しました
「診察室でいつも魚の話をして盛り上がってたから
築地で買って、刺し身にして持ってきたよ~~」と
自ら魚をさばき、刺し身にし、皿に盛りつけ、
わさびと醤油を持参した、三好Drです・・(実は職人級です・・)
私は一瞬、
ホスピスに生ものの差入れ大丈夫なの?と思いましたが
彼女は、
「まあ、おいしいそうね~~先生が作ってきてくれたの?」と
今までとは顔が別人
そして、娘さんも見守る中
1切れ、2切れと口にし
あっという間に1皿を平らげてしまいました
娘さんびっくり 私たちも
呼吸苦が強く、酸素を増やし、時折ウトウトしてしまう彼女のどこに
そんなに「食」に対する意識が存在していたのか
いまだにわかりません・・
ただ、完食した後に「おいしかった~」という言葉と
満足気の顔が見られたことは、事実として残っています
彼女はそれから数日後に永眠されました
あれから数年
娘さんが時々健康管理のためにクリニックに来院されます
診察室では決まって
「あの時はすごかったね~~」と盛り上がります
患者さんはもちろん、家族の心のケアにも
「最期の食事」はとても大事なことを
ずいぶん前に、彼女から教えてもらっています