まいった!Facebookで気が向いたときに書いていたコラム「伊藤銀次の ポップスこんなん出ましたけど」の第6回を書こうと思って、タイムラインを遡って、第1回を見ていたら、なんとYouTube映像が削除されていた。もう、せこいことするんだから、このご時世に ... 。

まあ、前からFBはタイトルとかで検索するのが簡単ではないので、サン銀に移して、いつでも読みたい方たちに読めるようにしておこうとずっと思っていたので,いい機会になった。
これは2012年2月16日に書かれたものの転載である。
はじめてのかたも二度目の方も、どうかエンジョイ!!
シリーズはまだまだ続くからね。

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伊藤銀次の ポップスこんなん出ましたけど  第1回

自分をトッド・ラングレンに例えるなんてまったく不遜というか僭越なのだが、僕の中にも、彼のバンド 「ユートピア」で展開していたロック・ギタリストの側面と、Hello It's Meのようなポップな側面という、アンビバレントな二面性がある。その「剛」の部分を「銀ちゃんの青春ギター巡礼」で、そして「柔」の部分を、この「ポップスこんなん出ましたけど」で紹介して行こうと思う。
「青春ギター巡礼」と同じで、まったくそのときの気分。山下達郎君の「棚からひとつかみ」みたいなものかな。僕が青春に出会ったすてきなポップス達を気ままに紹介していこうと思う。

このジョナサン・キングの「Everyne's Gone To The Moon」が発表されたのは1965年。アポロ11号が月面に着陸し、アームストロング船長とオルドリン操縦士の二人が、月の表面に降り立ったのが1969年だから、この1965年時点で、この曲の詞はかなりSFチックなものだったということになる。

1965年といえば、ビートルズやストーンズなどのブリティッシュ・インヴェージョン勢、ミッチ・ライダーなどのブルー・アイド・ソウル勢やザ.・シャドウズ・オブ・ナイトなどの60s ガレージ・バンドなどの、ビートの強い音楽が台頭してきた頃。その間をすり抜けるようにしてチャートを上がってきたこの曲のメロディの美しさは、際立っていた。
ところがこんなロマンチックな美メロなのに、全然どこもラヴソングではないのだ。かなり風変わりな詞。当時の英米のリスナーにはどんなふうに聞こえたんだろう? 

むかし70年頃、京都でヒッピーをしていた頃に知り合ったアメリカ人に、プロコル・ハルムの「青い影」はどんなことを歌った歌なのかと聞いたら、即答で「Nonsense」と返ってきた。バロックのような厳めしい旋律にのって語られるシュールでファンタジックなたわごとに近いヨタ話。その曲調と詞の新しい組み合わせによるおかしさが受けたのだろう。同じことがこの曲にもいえそうだ。

辞書を引き倒して意味がなんとかわかったところで、英語を直感的に理解できない僕たちには、そのへんの面白さがリアルにダイレクトに体感できないのがいつも残念だが、とりあえず歌詞の意味がわからなくても、ロマンチックが止まらない名曲だ。
いつかこの「Everyone's Gone To The Moon」の詞のほんとのところの意味を、ピーター・バラカンさんに伺ってみたいものだ。

この曲を発表した時、ジョナサン・キングはなんとケンブリッジ大学の学生だったという。その後の彼は、ジェネシスや10CC、ベイ・シティー・ローラーズを見いだした卓見なるプロデューサーでもあった。