むむっ、「年越しそば」ならぬ「年超えてしまったレポ」になってしまった。
新年になってまでその前年のクリスマスの話題でいくというのは、ちょっと無粋な気がしないでもないが、どうか許していただきたい。このまま積み残したままでは前には進めないからね。


12月24日のuncle-jamの風知空知クリスマス・ライヴの後半戦は、「かじりかけのトースト」から。
8月7日のuncle-jamのライヴで初めて歌ったときに比べると、ずいぶんとロックっぽい感じになってきた。

ドラム&ベース入りでエレキで演るからロックとはかぎらない。ぼくらはパブロック・ユニットだから、爽やかであっても、どこか骨太なグルーヴを大切にしたいと心掛けている。
ドラムやベースがいなくても、たとえアコギでも、しっかりとしたノリを自分の体で作りだしていかなくちゃ。ザクザクザクザク、ジャッジャッジャーン。さあ下北沢の夜に響け、僕らのストローク! 

前半戦の最後にそれぞれの世界をそれぞれに披露したuncle-jamが、休憩後はふたたび一体となり、さらに一丸となってノリのいいシャッフル・ビートの「Dream Again」へ。


11) かじりかけのトースト
12) Dream Again ~ ラジオからP. S. I Love You


そしていよいよ、我らuncle-jamお手製のクリスマス・ソングをご披露する時間となった。
まずは黒沢君がメインとなって作った「光の花」。オールディーズのロッカ・バラードを思わせる八分の六拍子。透明感のある詞も黒沢君らしい、美しい曲だった。
曲作りリハーサルのとき、いつものように、黒沢君の歌にべったりとコーラスをつけようと試してみたが、どうも言葉を殺してしまう。その繊細なメッセージを生かすために、ここはソロっぽく黒沢君を押し出して、要所要所にやさしくそっと色づけするようなコーラス・アレンジにしてみた。

リハーサルというものはどんなに時間を費やしても、やっぱりステージに上げて見ないと、それがうまくいっているのかはわかりにくいものである。
僕たちが歌い出すと、そこにクリスマスの夜のホーリな気分が自然に醸し出てきたような気がした。サウンド・オブ・サイレンスとでも例えればいいのか。慎重にていねいにコーラスを考えてよかった。


13) 光の花 (黒沢クリスマス・ソング)


「光の花」を既成のクリスマス・ソングに例えると、たぶん「聖しこの夜」。
続いてuncle-jamがお届けしたもう1曲のオリジナル・クリスマス・ソング、「誕生日がクリスマス」は、たとえるなら「ジングルベル」的かも。

クリスマス・ソングを作ろうと思い立ったとき、すぐに僕の中から、このメロディーがするするっと全部出てきた。
どこかクリフ・リチャードの「サマー・ホリデー」と、ボビー・ヘルムスの「ジングル・ベル・ロック」が合体したような感じ。まったく意識はしていなかった。
僕の中で長年かけて、潜在意識が勝手につなぎあわせていたのだろう。さて詞はどうしよう?



数あるクリスマス・ソングの中で一番好きかも。モメカルとも歌ったことがあります。


過去に3曲もクリスマス・ソングをレパートリーに持っている僕だから、また新たなメッセージを考えるのは大変かとも思ったが、意外と詞のアイデアもすっと出てきた。ここまではラッキーだった。

まず、自分にとってのクリスマスのことを思ってみた。

僕は12月24日、クリスマス・イヴに生まれた。だから子供の頃からいつもプレゼントもケーキもひとつ。グリーティング・カードには必ず「Happy Birthday & Merry Christmas」と書かれていた。

だからといってすごく損をしているという気持ちもなかった。ただのかんちがいなのだろうが、クリスマスで盛り上がっている世の中の空気が、まるでみんなで僕のことを祝ってくれているように思えたからだ。
そこまで考えたとき、できてたメロディに「誕生日がクリスマス」とあててみると、なんとぴったんこ。
もうできたようなものだった。まだラッキーは続いていた。


だがよく考えてみると、誕生日がクリスマスの人よりも、圧倒的に誕生日がクリスマスじゃない人たちのほうが多い。そうか、これではみんなに共感してもらえない歌になるのではと思いいたり、たちまちラッキーは消え去り、どっと暗礁に乗り上げてしまった。

意気消沈していてもしょうがないので、「気がつくとクリスマス」とか「想い出のクリスマス」とか、「クリスマス」だけ残して、いろいろちがう言葉をその前に当ててみるけれど、「誕生日がクリスマス」以上にインパクトのあるものが出てこない。
はたと困ったところに急に浮かんだのが、むかし山下洋輔さんのライヴの打ち上げで見た、フォーク・シンガーの三上寛さんの、青森県警の警察学校のミサキ先生の物真似だった。



2分31秒あたりからごらんください。


三上さんはフォーク・シンガーになる前、警察官をめざして警察学校に行っておられたらしい。そのときの刑事担当だったミサキ先生の物真似をされたのだが、もちろんその場にいた誰一人として、そのミサキ先生に会ったことがないはず。なのに、誰もがなぜか似てると思って大爆笑になった。

極端に個人にふり切ったものは、みんなで共有できるものになってしまうのでは ... 。
もう四半世紀近く前のこの体験が突然現れて、「誕生日がクリスマス」の背中を押してくれたのである。


14) 誕生日がクリスマス(銀次クリスマス・ソング)


結果は? ....
受けたよ。よかった。喜んでもらえた。
ちょっと細部を工夫したからね。

ちょっと工夫でこのうまさ by 神田川俊郎なんてね。

パーティー気分な、uncle-jamがもっとも売りとしている「ウキウキ」気分をさらに盛り上げることができた。そして実はこの曲が大盛り上がりへの導火線。
さあここからが真のウキウキ・タイム。そのままノリノリのエンディングへ、どどっとなだれ込みだ。


15) Heroes
16) I Will
17) うきうきミュージック


この最後の3連発、uncel-jamのライヴに参加されたことがあればよくご存知のように、定番の最終コーナー。たぶんこのままでもみなさん十分に満足してくださる「うきうきトライアングル」だと思うのだが、前回にも書いたように、この日はuncle-jamのライヴ、クリスマス、僕の誕生日が重なって、メン・タン・ピン三色ドラドラばんばん、あっ、悪いね、それ当たり、ロン! というスペシャルな日だから、大感謝祭につき最後までこれでもかの出血大サービスで行くんだもんねと心に決めていた。


前回も書いたように、直前まで黒沢君も僕も忙しくて、クリスマスソング以外で新境地を開くことができなかった。
uncle-jamにはいつも目が離せないぞ、まるでおもちゃ箱のように何が出てくるのかわからないぞ、という期待感を来年もみなさんに持っていただきたいと思いながら、風知空知に向かって下北沢南口商店街を歩いていたら、突然ひらめいた。

「Heroes」の間奏で僕はブルース・ハープを吹いている。これまではその小節数が決まっていたが
、これをフリーサイズにして、ワンコーラス吹き終わったら、そのまま吹きながら客席に降りていき、お客さんの間をねり歩きながら、吹き続けるというのはなかなか面白いのではとひらめいたら、俄然うきうきしてきた。



我が敬愛するリトル・ウォーター。僕は彼の足下、いや、つま先にも及びませんが ... 。


ただひとつ心配なのは、マイクを持たずにステージから降りると、ハーモニカの音が聞こえなくなるんじゃないかということだった。黒沢君に話すとおもしろそうですね、やってみましょうよとノってくれたので、当日のリハーサルのとき、試しに、まだ誰もいない客席に降りて、お店の中を歩き回りながらブルース・ハープを吹いてみた。
やってみたからわかったよ。ハーモニカってこんなに大きな音が出るんだ! 
マイクなしでもしっかり聞こえるじゃないか。

ひとしきり吹き終わって、風知空知のスタッフにどう?とたずねてみたら、目をきらきらさせてサイコーですとのグッドなリアクション。よーし、これで今日はいやが王でも長嶋でもなでしこJAPANでも盛り上がること請け合いだ。士気はさらに高まった。

そして本番、「Heroes」の間奏になった。ワンコーラス吹き終わってさあ、客席へ。

あきらかに想定外だったのか、おーっの声が耳に入る。
と、降りてすぐ左の席にご両親と連れ立ってきていた小学生らしき少年が目に入った。目を見開いて驚いてはいるけど、体を動かしながらノってくれている。うれしいじゃないか。よい子の最年少パブロッカーを発見。

その男の子の前に足を運んで、顔の真ん前で思いっきり「プゥワワワワーッ」とブルース・ハープの洗礼をおみまいしてあげた。その子はうわーっの声で返してくれた。オーケー、僕のブルースをちゃんと受け取ってくれたね。


僕の父親は大のクレージー・キャッツ・ファンだった。いつも正月は梅田コマ劇場でやるクレージーキャッツの新春公演に連れて行ってくれた。出演はクレージーキャッツに加えて、当時の人気歌手がゲスト出演。前半はお芝居、そして後半が歌謡ショーの二部構成。
事件はその歌謡ショーのときに起こった。

おめあての植木等さんたちが出る前に、水原弘さんが何曲か歌われた。小学生ながらレコ-ド大賞を取った「黒い花びら」はよく流れていたので知っていたが、好みでは坂本九さんが好きだっただから、それほど一生懸命見ていたわけではなかった。
忘れもしない「男なら」という曲の最後で、水原さんが、二階の最前列でみていた僕を指差してなんと「男ならやってみな」と歌ってくれた。もちろん僕に向けて歌ってくれたような気がしただけだ。

たまたま水原さんが2階席に向かってパーフォーマンスとして歌いかけただけで、そこに誰がすわっていたかをわかっていたわけではないと思う。いま振り返ればそう納得できるが、あの時の銀次少年の目と、水原弘さんの目はまちがいなく合ったのである。それはまるで、大人の彼から直接「男だろ、男ならやってみな」と励まされたような気分でドキがムネムネしたことを今も忘れることはできない。

はじめてライヴのマジックを知った一瞬だった。そのとき僕は知らずに水原さんから何かを受け取ったのだとおもう。
あの男の子は大人になったとき、あの出来事をふりかえるときどんなことを思うのだろうか?

さらに客席のあちこちで、「プゥワワワワーッ」攻撃を繰り返す。うるさい音のはずなのにみなさん喜んで「プゥワワワワーッ」の洗礼を受けてくれた。みんなとブルースを共有できてよかったよ。



「うきうきミュージック」を歌う前に、「もう最後の曲です。」と告げると、えーっの合唱が ... 。
ありがとうございます。この日の「うきうきミュージック」は、お客さんの手拍子も今まで以上に、ノリがよく、さらに黒沢君もいつもよりパワフルでグイグイ押してくる。いいね。今年最後にふさわしいエンディング・ナンバーになった。





そしてアンコール。大感謝祭のとどめは、僕らが敬愛して止まないロイ・オービソンのこのナンバー。
いまやリチャード・ギアとジュリア・ロバーツが主演した同名の映画で知らない人はいない。
芦屋でサンデーズと演ってから、すっかり味をしめちゃったのであった。

そのまま「I Don't Want To Spoil The Party」へ。この曲も「Baby It's You」と同じ、オリジナルのビートルスとはまた空気感のちがうuncle-jamの持ち歌に成長してきた感がある。


18) Oh, Pretty Woman (ロイ・オービソンのカバー)
19) I Don't Want To Spoil The Party (ビートルズのカバー)


いつも最後はエヴァリー・ブラザースの「Take A Message To Mary」の定位置だったが、今回はスペシャル。とんでもないことが起こっていまだに収束しきれないままに終っていこうとしている2011年の締めくくりにこの曲を選んだ。
僕らのさまざまな思い、深い心の奥にそれでも燃え続けている明日への「意志」を、みなさんに風のように伝えて2011年の終わりとしたかった。その役目を背負ってくれたのが「夢の続き」だった。


20) 夢の続き


継続することが何よりも大切なことを、僕は2011年、黒沢君とuncle-jamをやることで痛感した。
このノリをまた今年はさらに大きなノリにしていこうと心に誓う新年であった。

風知空知に足を運び、uncle-jamのクリスマス・パーティーに参加して盛り上げてくださったお客さんたち、そして風知空知のスタッフのみなさん、おいしい料理とお酒、そして温かいおもてなし、ありがとうございました。uncle-jamからの心からの感謝の気持ちを捧げさせてください。ほんとにどうもありがとう。


そしてあらためてあけましておめでとうございます。
今年も応援よろしくお願いします。