uncle-jamのライヴ・レポ、遅れ遅れになってスマンの涙でした。

12月24日は今年最後のuncle-jamのライヴでもあり、世の中的にはなんといってもクリスマス・イヴであり、さらに、個人的には僕の誕生日ときていた。
麻雀ならば、メン、タン、ピン、これでドラが2枚つけば、立派な満貫である。
この喩えでよけいに、なんのことやらわからなくなったきらいもなきにしもあらずだが、まあ、めでたいことにはちがいないのだ。

この「サンデー銀次」をずっとご愛読くださっている、よいこのパブロッカーのかたたちは、もうだいたい予測がつかれると思うが、子供の頃から祭り好きの僕は、こうなるともうひたすらがんばっちゃうのである。いやが王でも長嶋でもダルビッシュでも、はりきらずを得ない性分なのであった。

いろいろあった今年、ずっと僕たちを応援していっしょについてきてくださったみなさん、ほんとにありがとう。今回はいやが王でも長嶋でも浅田真央でも、出血大サービスの大感謝祭としたかった。
ありがとう、完全燃焼しました。ありがとう、おかげで僕は悔いなく燃え尽きることができました。それではその燃え尽きレポを始めましょう。


この晴れがましい日を祝ってくれるかのように、東京はものの見事な快晴だった。
黒沢君も僕も日頃の行いがいいというか、これでますますuncle-jamが、まちがいのない「ダブル晴れ男ズ」だということが証明されたかのような好天であった。

今回の目玉企画はなんといってもクリスマス・ソング。それもピカピカの新曲で、しかも2曲もお届けしようという大盤振る舞い。
打ち合せ段階で気持ちだけはすっかりドカンと行っていたのだが、もともと黒沢君には来年早々に配信されるソロの新曲のレコーディングがあったり、僕は僕で、サンデーズとのライヴや「話し出したら止まらナイト」の台本作り&本番、suzumoku君との打ち合せなどがあったりしたところに、イッツ・ノットアンニュージュアル、よくあることで、予期せぬスケジュールが横入りしてきたりして、なんだかんだで結局、土壇場になりあわただしい曲作りに追いこまれることになってしまった。今にはじまったわけではなく、よくあることなのだったが。





それぞれ曲作りが始まったのはほんとにギリのギリ。ライヴ前1週間をきっていた。

それでも心が微動だにせず淡々と作業をすすめることができたのは、すでに一度、お客さんからのお題をいただいての曲作りコーナー、「パン」の歌ができず、次の回の「キャンドル」の歌と2曲まとめて作らなければならないという、高いハードルを一度見事に跳びきったという経験値のおかげだろう。

今回黒沢君と僕とで、明らかに色合いのちがうクリスマス・ソングを2曲作ろうというアイデアに至ったのは、来年ソロ活動を再び本格化する黒沢君をフィーチャーする意味もありつつ、二つの強い個性を持つ二人が、「パブロック」というキーワードが蝶番(ちょうつがい)となり触媒となって、uncle-jamという科学反応を起こしているのだということを、みなさんにしっかりと見てもらいたかったからだ。
uncle-jamは「個性」と「調和」の両方を目指しているというところを。

この今日作りが、来年またいい感じで僕たちがスケール・アップするための、ちょうどいい通過儀礼に思えてならなかったのだ。
案の上、uncle-jamを始めてこの1年で、あきらかに僕たちの経験値は上がっていた。
その証拠に、あんなに時間がなかったにもかかわらず、どうにかこうにか見事に、2つのクリスマス・ソングを完成させ、めでたく当日を迎えることができた。パチパチパチパチである。

クリスマス・イヴは誰にとっても特別な日。やはり予想していたように、いつも参加してくださるかたたちが、お仕事の年末追い込みや、家族サービスで欠席されることを聞いていたので、ライヴが始まるまでどんなものかと心配していたが、案に反して、満席となってよかったよかった。うれしいじゃないか。

いつもならよーし! と言う気持ちになると、リキミ過ぎて一人相撲になり、自ら墓穴を掘ってしまう僕。この日はよーしと思っても、不思議なことに心は凪いでいた。熱い気持ちはそのままに、心は透き通るような落ち着きに満たされていた。

いつものように二人で客席を通って、ステージに向かうと温かい拍手が起こる。声はしなくても、そのひとつひとつに「待ってたよ」とういメッセージが聞こえたように感じた。

おもむろにチューニングを始める。今までここ何回かは、お客さんから「出前まだですか?」の声がかかり、曲ができていたら「Chotto Matte Kudasai」を歌うという、わかる人にしかわからないオープニングだった。この日も曲がぎりぎりまでなかなかできなかったので、「サンデー銀次」でその件に関して振ろうかどうしようか迷ったあげく止めにした。
なぜかはわからない。きっとクリスマス・ソングを作ることにホーリーな気持ちになっていたからかもしれない。


01) Baby It's You
02) Crying All Night Long


やっぱりuncle-jamのスタートはこの曲から。もはやシュレルズでもなくビートルスでもない、僕たち独自の解釈が板についてきた。本来あきっぽい性格のはずの僕が、何度歌っても飽きないどころか、歌うたびにそのメロの味わい深さにのめってきている。噛めば噛むほど味のある曲だ。

しっとりとお届けした後は、そのまま「Crying All Night Long」へ。
続く「ストロベリー・ワイン」と共に、今年Majixから配信された記念すべきナンバー。
元々は僕が竹内まりやさんに書いてデュエットまでさせていただいたものが、今では僕たちの持ち歌のように聞こえ始めた。
配信のニュースをまりやさんにお知らせしたら、「この曲は男女よりもピーター&ゴードンみたいに男性デュオでやる方がさらに良くなる曲ですから、楽しみです」とのお返事をいただいた。うれしいお言葉だ。


03) ストローベリー・ワイン
04) 僕たちのキャンドル


どちらも、風知空知でお客さんからお題をいただいて作った曲。もしこの企画を試していなかったら、どちらの曲もこの世にまったく存在していなかったかと思うと音楽の神秘を感じてしまう。

「僕たちのキャンドル」の詞には、意図的に今年の震災や原発事故のことを盛り込んだつもりはなかったが、こうやって歌っていると、どこか今年のその空気感を感じてしまう。きっとあと何年たってもこの歌を歌うたびに、今年のことを思い出すことになるのだろう。その意味でも、この曲は作っておいてよかった。「キャンドル」というキーワードをくださってありがとう。たとえあのことから心が癒えていっても、あのことがあったことは絶対に忘れてはならない。二度と繰り返さないためにも忘れてはならないのだ。

いつのまにか僕たちのレパートリーがどんどん増えてきている。今回は涙をのんでインスト・コーナーははずして、すぐにそれぞれのソロ・コーナーへ。
まず先鋒は、来年本腰を入れてソロ活動を再開する、決意の人、黒沢秀樹君だ。


05) 心の橋 (「明日へ」のタイトルで歌われていたもの)(黒沢君ソロ)
06) 冬時間 (黒沢君ソロ)
07) Happy Birthday & Marry Christmas (黒沢君ソロ)


黒沢君が歌う始めると、たちまち風知空知に、たゆたうような癒しの風が、頬をなでるようにそよぎ始めた。調和とバランスを重んじる、なによりもピースフルな静寂を尊重する黒沢君らしさが、以前よりもくっきりと浮き彫りになってきていた。





耳を傾けながら、日本のエリオット・スミスやロン・セクスミスみたいな世界が彼にぴったりなんではないかなんて、心の中でいつのまにか勝手にプロデュースしている僕がいた。





そしてタッチ交代、今度は僕の番。いつも僕たちはお互いの曲の内容に関して打ち合せをしない。
いつもその日にばっと互いの持ち札をオープンにすることにしている。このへん典型的なB型ユニット。
僕はだいたい黒沢くんがどんな感じで来るか読みをいれて考える。「uncle-jamのR&R Diary」と同じように、黒沢君の上の句に、僕が下の句で答える、あの感じだ。

きっと彼はホーリーな感じでくるだろうから、僕は思いっきりパーティー気分に振り切ろうと思った。
目一杯振り切って、ジョイフルな世界にブレイクスルーしていこうと決めたのだった。
その決意の結果の選曲がこれだ。


08) うきうきWATCHING (銀次ソロ)


「うきうきWATCHING」はとりあえず今のところ、僕が書いた曲では一番有名な曲。
それだけに自分のライヴで正面切って歌うことには、いまいちちょっと遠慮があった。
はじめてのお客さんが多いアウェイなイベントなどに出るときは、しかたなく自己紹介がわりにサワリを歌うことはあっても、フル・コーラス歌うことは封印していた。
でも今日は大感謝祭である。かっこなんかつけていられない。ジョイフルな世界にブレイクスルー!
シャレや酔狂な気分ではなく、自分の持ち歌のつもりで、マジに歌ってみることにした。
よかった! みんなとても喜んでくださっていて、いちかばちかが表と出て、冥利につきたよ。


09) ほこりだらけのクリスマス・ツリー (銀次ソロ)
10) 幸せにさよなら (銀次ソロ)


アルファのオムニバス・クリスマス・アルバムに収録されている「ほこりだらけのクリスマス・ツリ-」のイントロは、当時自分のデモ・テープ作りのために購入した、YAMAHAのDX-7というキーボードで作った。
ほとんどの曲はギターを使って作ってきたが、この曲のイントロや「愛をあきらめないで」や「ロックン・ロール・ドクター」などは数少ない、鍵盤でつくったものだ。
買ってすぐの頃、バイエルやツェルニーなどを買ってきて運指練習していたが、いつのまにか、慣れ親しんだギターに戻ってきてしまったが、キーボードにトライしていなければこの曲は生まれなかったわけだ。

そんなわけで鍵盤で作ったあのイントロをギターで弾くなんて発想のないままに、今まではバンドの演奏をバックに、あるいはモーメント・ストリング・カルテットの伴奏で、楽器を持たずに歌ったことしかなかった。まさかこの曲をギターでの弾き語りするなんて不可能だと思い込んでいた。

それが不思議なもので、2008年から始めたギター弾き語りツアー「I Stand Alone」のために、かってバンドで録音された曲をどうにかしてギター1本で再現できないかと工夫しているうちに、アコギがすっかり僕のオーケストラに成長してしまっていた。

試しに「ほこりだらけ ...」のイントロをギターでなぞってみると、指が勝手に動いて弾けてしまった。
驚きであった。いつのまにか僕流の左手の押さえかたができあがっていたようだ。
過去にいろいろコピーしたものが、醸成され、必要にかられ表出した、僕独自の弾き方。
人間は成長したいと思う気持ちがあるかぎり、その成長が完全にとまることはないのだと実感した。
自分の潜在意識と経験値を信じているかぎりまだまだがんばれる。

とはいえまだまだ演奏回数の少ない曲。というかアコギ弾き語りでは初演だったので、まだ指がしっかりおぼえていなくて、ちょっとあぶなっかしい箇所があったのは、スマンの涙です。
うーん、そのリベンジは来年のクリスマスまで待たなければならないのか ... 。
ちょっと反則ですが、もし1月の20日の西荻TERRA、28日の大阪フラットフラミンゴで、みなさんからの熱烈なリクエストがあれば歌いますが、いかがでしょうか?


ソロ・コーナーの最後は、僕のレパートリーの中の王道中の王道、「幸せにさよなら」。
来年はナイアガラ・トライアングル vol.2の30thアニヴァーサリーだから、その話をして歌うつもりがすっかりその話題を忘れてしまったのが残念無念。





この歌も年を経るほどに自分の中に新しい発見のある歌だ。この特別な日に特別な気持ちで歌わせてもらった。

なんとか下の句を締めくくることができて「ほっ」、ここで前半戦の終了だ。
しばし休憩が入って、後半戦はいよいよ、そのクリスマス・ソングの発表だ。

つづく