「話し出したら止まらナイト」がなんとか終って、ほんとによかった。当初の予定どおりにいったわけではなかったが、あの状況から考えると、それなりに着地できたことは上出来としよう。
ほっとするまもなく。気持ちはもう3月17日のラヴィン・スプーンフル特集へ。まだ3ヶ月も先だというのに、頭の中では「銀流フォークロック伝」モードがいぜん進行中なので、どういう切り口で行こうかなどと、早々と考え始めているのだった。まったくこの忙しいときに ... 。
でもそういう男なのである。



ラヴィン・スプーンフルの名曲。クリッターズのカバーでもおなじみです。


フォークロック伝、まさかこんなに長丁場になるとは思っていなかった。気軽にはじめてみて、この時期がロック史上、とてもエポックなのだとわかってからが、どんどんいい意味で深みにはまっていった感がある。
たぶんあと3回ほどで終了となる予定。その先はいよいよ僕の音楽のどセンターである「マージー・ビート」、60年代ブリティッシュ・ポップ・ロックで行こうと決めた。
仮タイトルは「マージービートでしゃべらせて」とでもしとこうか。


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厳密に言うと、ビートルズをはじめとする62年から66年あたりのイギリスのグループはすべてがリバプール出身ではなかった。なのに当時、ニュー・キャッスルのアニマルズやバーミンガムのホリーズもいっしょに収録された「リヴァプールの若者達」というオムニバスが発売されたりしたように、この当時日本では、イギリスのビート・ポップ・グループを「リヴァプール・サウンド」とか「マージービート」と呼ぶ傾向があった。



「マージー河のフェリーボート」。リヴァプールを流れるマージー側を題材にしたリヴァプール讃歌。
映画化もされました。


たぶん早くて秋あたりから。けっこうバタバタ忙しいのにも関わらず、その下調べもぼちぼち始めている。その中のひとつ、ひさしぶりにハンター・デイヴィスの「ビートルズ」からあたりをつけていこうと思った。


1969年に草思社から出た「ビートルズ」の初版を神保町の古本屋で買ったのは1970代初めの頃だったと思う。それには著者名が、ハンター・デヴィスと書かれていた。そういえば70年代はマイルスのことも「デヴィス」と呼ぶ音楽評論家がいたっけ。しかもヴィで音を上げる、「ライブ」と同じ発音。どう考えてもおかしな発音で抵抗があった。よくエンタテインメントのことをエンタティメントと言う人もいるが、それもかなり抵抗があるのは僕だけか。

定価が880円だからもっと安くで買ったのだろう。もともと古本だったこともあるし、さらに歳月が立ち、紙がすっかり茶色く変色していて、さわっているだけで、なんとなく指先になにかホコリの層ができてくる。指と指をこすり合わせると、なにか指紋が消えたような気がするあの感じ。もしかして新判が出てないものかとかねがね思っていた。

この頃大きな本屋では書籍の在庫を調べることができる検索機がおいてある。ある日思い立って「ビートルズ」で、「あいまい検索」してみたら、これがなんと2010年に文庫化されていたではないか。しかも上下2巻というボリュームになって。ラッキーなことにそのとき上下ともに在庫があった。こういうときは即買いである


増補完全版 ビートルズ 上 (河出文庫)/ハンター・デイヴィス

¥1,260
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アゲインのイベントで僕が必要としているのはどちらかというと上巻のほうなのだが、ここは縁起物で、上下ともに購入した。昔古本屋で買ったヴァージョンでは、訳者のあとがきまで入れても350ページで1巻仕立てだったのが、文庫化された2010年の増補完全版では、上巻だけで428ページ、さらに下巻が449ページとすんごい量になっていたのだ。伝記物がまるで辞書のように改訂増補されていたなんて、想定外。進化をとげる伝記物なんて、これはビートルズ以外ありえないだろう。

それだけで驚いていてはいけない。上巻のどあたまに書かれた「2009年版への序文」がなんとそれだけで111ページもある。ふつう序文なんてものはせいぜい長くても5~6ページ。それがちょっとした短編小説なみの分量。早く本編が読みたいのにと思って読んでいたが、これが実におもしろかった。いわば著者によるメイキング的裏話。この111ページが読めただけでもこの本を買った甲斐がある。おすすめである。

と、余裕のヨッチャンみたいに本の話なんかしちゃって、いかにも忙中閑ありみたいに見えるが、ちっともそうではない。ほんとは忙中ひまなし、たのむコーラスなのであった。


もう目前にuncle-jamの風知空知のライヴがせまってきていた。
今回は12月24日なのでクリスマス・パーティー・ライヴ。せっかくだからお手製のクリスマス・ソングを作ろうということになった。
19日のリハのとき、僕と黒沢君めいめい1アイデアずつ、それぞれの音楽的な持ち味が出たものを持ち寄って、なんとなく骨組みはできたのだけど、問題は「詞」だった。
とりあえずそれぞれでもう少しアイデアを煮詰めてから、再びいっしょに取り組もうということになって、一昨日、昨日は、うんうんうなりながら考えていた。うなってもうなってまだ完成には至っていない。タイトルはもうできているのだけど ... 。

うなれども うなれども 我が詞作 楽にならざり じっと手を見る

手を見てもさっき触ったときの古本のほこりが指にこびりついているだけであったので、手を洗ってくることにした。
果たしてまたしても「Chotto Matte Kudasai」導入となるのか ... 。

そんなさなか、20日の昼過ぎ、東芝EMIイヤーズ・5タイトルを発売しているFLY HIGH RECORDSのレーベル・メイト、玉城ちはるさんと土橋一夫さんとランチをご一緒した。
「サンデー銀次」今年の12月8日号「長ーーーーーい一日」にも書いているように、玉城さんのランチ・ライヴを見せていただいて感じたことを、直接会ってお話ししたかった。
ひょっとして余計なお世話かなとか、「上から目線」な人だなとか思われたらいやだなとか迷っていたけれど、このまま「見て見ぬふり目線」だけはいやだと思って、僕からお願いして時間をとっていただいた。期待を込めつつも、気をつけて、僕の感じたことをただ彼女に投げておくだけにした。後は彼女の心の湖にどんな波紋が起きるのかがとても楽しみである。

そして帰ってきて、音楽仲間に送った24日の招待メールのお返事を書きながらも、またうーんとうなりながら今度はこのブログを書いていたのであった。