12月17日、武蔵小山アゲインの「話し出したら止まらナイト」に足を運んでくださったみなさん、年末のお忙しい中、ほんとにどうもありがとうございました。開始早々、予期せぬ出来事が起こって、皆さんをハラハラドキドキさせてしまいました。これじゃまるで「話し出したらハラドキ・ナイト」。スマンの涙です。なんとかかんとか持ち直して、無事ママパパ後編のゴールにたどりつけました。実に4時間もの僕のおしゃべりにおつきあいくださり、誠にありがとうございました。


$伊藤銀次 オフィシャルブログ 「SUNDAY GINJI」 Powered by Ameba


忙しかったにも関わらず、おもいのほか順調に原稿も仕上がり、当日のリハーサルでも何も問題がなかったのに、エルヴィス・コステロも歌っているように、アクシデントは起きるものだった。何事も油断大敵。第6回ママス&パパス後編にして、銀流フォークロック伝史上はじめての、ハラドキなオープニングとなった。



このモノクロの水玉模様のシャツがいいねえ。


銀流フォークロック伝、はじめてのかたもいらっしゃったようなので、これまでの大きな流れをおさらいして、それでははじまりはじまりと、勢いづけにママパパのナンバー・ワン・ソング「Monday Monday」のYouTubeから行こうとしたら、何と音はすれども映像が映らない。

まさか「話し出したら映らナイト」になるとは思ってもみなかった。

あわてるアゲイン店長の石川さん。しばし試行錯誤される石川さん。いつも「止まらナイト」でのCDやDVD、YouTubeの操作は石川さんにお任せしている。今までも毎回二人三脚でイベントを進めてきた。

But 待てど暮らせど映像が映ってくれない。しかもその原因がわからないまま。
そこで持参していた僕のMacBookでも試してみたが、僕のにはFire Wireがついていないのでつなげない。
万事休す。始まったときにはなごやかだった客席に、やにわに霧のようにひたひたと不安がたれこみはじめた。

冒頭で、ジャーニーメンを解散したジョン・フィリップスが、のちの彼の奥さんとなりママパパのメンバーにもなるミシェル・ギリアムと、マーシャル・ブリックマンとで、ニュー・ジャーニーメンを結成するところからはじめて、このマーシャル・ブリックマンが在籍したタリアーズを紹介しつつ、そのタリーズ創立メンバーにいたエリック.ダーリングが後に大ヒット「Walk Right In」を放ったルーフトップ・シンガーズを作ったことや、映画俳優のアラン・アーキンが同じくタリアーズの創設メンバーにいたことを紹介するつもりだった。
いきなり冒頭からトカチェフとコールマンのあとに、伸身新月面宙返りを決めようとしたやさきでの、このアクシデントだったのだ。



向かって左がダーリング、中央のリード・ヴォーカルがアーキン。


アーキンは「キャッチ22」、「暗くなるまで待って」、「ロケッティア」などの数々の作品に出演している名優。2006年の「リトル・ミス・サンシャイン」ではついに第79回アカデミー賞助演男優賞を受賞した。あのコロンボのピーター・フォークと共演しているこの映画ならごらんになったことがあるかも。



邦題は「あきれたあきれた大作戦」いきなりの登場が彼。どこか僕と同系統の顔なので親しみを憶えます。


「レミング物語」や「カウンセリング熊」などの童話作家でもあったりもする実に多才な人。残念ながら2巻とも現在絶版。昔ファンクラブの会報で紹介したこともあった。

おっと、いまでこそこんなにのんびりと脱線できているが、あのときはそんな余裕はまったくなかった。なにせ映像が映らなければ、このエピソードの面白みが半減どころかまったくなくなってしまう。
そう思ったら、一瞬にして、あれほど時間をかけて書いてきた目の前の原稿が、ただの活字の羅列にしかみえなくなってしまった。オーマイガー。

なんとか映像なしでお話だけで進行できないものかと、僕の灰色の脳細胞を稼働させ続けた。原稿をあちこちめくりながら、あれこれ頭の中でシミュレートしてみるも、こりゃやっぱり無理だとなった。

いよいよ絶体絶命かと思われたとき、突然もうひとりの僕が
「おい銀次。お客さんたちが心配して見守っているんだぞ。話し出したら止まらナイトじゃなかったのか?トークでなんとかしろよ。」
と強く肩を叩いて、奈落の底でうなだれていた僕を叱咤激励してくれたではないか。
かって沢田研二さんのレコーディングの初日で、ジュリーにちゃんと挨拶して来いよと背中を押してくれた、あのもうひとりの銀次だ。(2011年7月13日号「ジュリーの笑顔」参照のこと)

時間をかけてせっかく練り上げた一本道の構成が、この時点で破綻してしまったのか、という後ろ髪を断ち切って、ようし、アラン・アーキンのマクラは飛ばして、ママパパ特集だからというわけでもないが、とにかく自分のフォークロックへの情熱の導くママに自分でも驚くほどパパっと切り替えて、とにかくニュー・ジャーニーメンについて話し始めることにしたのだった。

寒風吹きすさむ荒れ野にひとり布切れ1枚で佇んでいるような寂寥感を心から追い払いつつ、しばらく話を進めていたら、なんと石川さんから映像がOKになったという声が。
おおイッツ・ア・ミラクル。うれしくてうれしくて、まるで全滅寸前のアラモの砦に、援軍が大挙して駆けつけてくれたときのデーヴィー・クロケットのような気分になった。



残念ながらアラモの戦いでは援軍は来なかった。主題歌はフォークロック前夜のフォーク・ブームの担い手のひとつ、ブラザース・フォーでした。


また画像がでなくならないことを祈りつつ、なんとか前半を終了。休憩に入った。
2部はお客さんからの質問に答える「銀次の目安箱」のコーナーから。

1部終わりで用紙を配って、休憩のあいだにお客さんに質問を書いていただくはずが、どあたまのアクシデントの修復にエネルギーを使い果たしていた石川さんがこのことをすっかり忘れていた。いつも見事な気の配りの石川さんにしては珍しい。いかに「映らナイト」の衝撃が大きかったのかがわかるというものだ。

僕もまだダメージが残っていたようで、みなさんからいただいた質問にその場で懸命に答えていたら、すっかり、目安箱のコーナーでリクエスト曲「MountainOf Love」を歌うことを忘れて、さっさと2部に入ってしまった。オーマイガー。

2部からが本日のメインイベント。ママパパの「夢のカリフォルニア」の曲の中に残されたあるドラマの痕跡、そしてジョンがビートルズから学習したもの、さらなるママパパのサウンド分析と、フォークロックで読み解けないママパパをヴォーカリーズで読み解いていく大団円へと一気になだれ込んでいった。

音楽仲間の成瀬英樹君は、1部の終ったところで、残念ながら、バーゲンズのライヴに向かわなければならないとのこと。申し訳なさそうにする成瀬君。実は僕もバーゲンズを見に行きたかった。uncle-jamのライヴにいつも来てくれる二人のライヴ、なかなかタイミングが合わなくてひさしく見てない。
しかし、今から後半戦をほったらかしにして見には行けない。成瀬君、僕のぶんまで楽しんで来てねと送り出した。それはそれでいいんだけど、成瀬君にママパパの後半の一連の謎解きを見てもらえなかったのは実に残念だった。

なんとか持ち直してゴールへ。ママパパ解散後の各メンバーのエピソードはこぼれてしまったが、往年に比べるといい話が少ないので、後味を考えると「Once A Time I Thought」、そしてモンタレー・ポップフェスでの「花のサンフランシスコ」あたりで終わっとくのが美しいような気がした。トーク時間も4時間を超えていたしね。





計画通り進めることはできなかったけれど、臨機応変。今回は見にきてくださったかたたちとのやりとりが以前より活発になってきたのが大収穫だった。


音楽プロデューサーでヴィレッジ・シンガーズの小松久さんご夫妻が今回もいらしてくださった。ありがたいことです。なんかの拍子に「あっと驚くタメゴロー」は、浪曲からとられたものだと聞いた話をしたら、即座に小松さんが反応されて、それをミュージシャンが麻雀中に使ったのが起源だと話された。

実は「サンデー銀次」に頻出する「スマンの涙」も僕の麻雀用語。
場に一万と七万を切っておいてのカンチャン待ち、「おっとその四万(スーマン)あたりです。ロン!もうしわけない。♪スマンのなーみーだーです。」とオックスの歌を歌うのが元だった。
小松さんが誘い水になって、この日「スマンの涙」の秘密が、白日のもとにさらされることになったのである。


いろいろあって、まるで嵐の中の航海。お話の舵取りに夢中になっていたからか、すっかり目安箱のコーナーで歌を歌うことを忘れてしまっていた。
前回書いたように、「サンデー銀次」の読者のShinjig!さんからリクエストをいただいていたジョニー・リヴァースの「Mountain Of Love」。うれしいことに今回は参加なっていたので、遅ればせながら、イベントの最後の方に歌のコーナーを作り、ディラン気取りでハーモニカ・ホルダーまでつけて、間奏のブルース・ハープ入りで歌わせていただいた。





昨日歌ったのは :

1) Dream A Little Dream Of Me (ママス&パパスのカバー)
2) Mountain Of Love (ジョニー・リヴァースのカバー)
3) 想い出はとまらない(アルバム「山羊座の魂」から)
4) 地を這うさんま(空飛ぶくじらのアンサーソング)


「Dream A little Dream Of Me」 はママス&パパスのヴァージョン。ママ・キャスのキーだと高過ぎ晋作なので、カポをはめて歌った。
紹介しようと思ってたが、時間の都合でお見せできなかったこの曲のオリジナルがこれ。参加されたかたたちもごらんになれなかったので載せておくね。





東芝EMIイヤーズ・5タイトルの中から、ちょっとフォーキーな「想い出はとまらない」でイベントを終ろうとしたら、なんと「地を這うさんま」のリクエストが、もちゃえもんさんから。
うーん、やっぱりね。もちゃえもんさんがいらっしゃると聞いたときから、これはひょっとしてひょっとするかなと思っていたらやっぱりひょっとした。

水炊週一とモメカルによる「地を這うさんま」の初演に参加できなかったことをとても悔しがっておられたようだからね。そこは以心伝心。ちゃーんと用意してきましたよ。
カルテットといっしょではなかったので、ちょっとさびしい感じの「さんま」になったけれど、いかがだったでしょうか?

これからも「地を這うさんま」は武蔵小山アゲインでのみ歌うことに決めています。
もしお聞きになりたいかたがいらっしゃるようでしたら、今後の僕のアゲインでのイベントに期待してください。
ちなみに次回の「話し出したら止まらナイト」は来年3月17日に決まりました。(パチパチパチパチ)
銀流フォークロック伝、このままダンヒル・レコードのグラス・ルーツあたりに行く予定でしたが、グリニッジ・ヴィレッジつながりで、ザ・ラヴィン・スプーンフル特集にしたいと思っています。

スプーンフルのジョン・セバスチャンやザル・ヤノフスキーは、ママス&パパスの「Creeque Alley」に名前が出てくるしね。


さっそく「話し出したら止まらナイト」においでになられたみなさんからコメントをいただいています。ここ最近みなさんからのコメントにお答えしていないのでそろそろと思っていたところです。とりあえず、アゲインのトークライヴにいただいたコメントからお返事をしていこうかな。


・ ta-chanさんへ

お友達を誘ってくださってありがとう。そのお友達も喜んでくださったようでうれしいです。
題材はマニアックかもしれませんが、あくまでポップス版「プロジェクトX」なので楽しんでいただけるのではと思います。そのあたりいつも苦心しています。
どうか次回もぜひご参加ください。チョコレートはそりゃあもう大好物ですよ。


・ Shinjig!さん

「四万の涙」、バカうけでよかった。僕も人間とはしばらく麻雀してないなあ。
これをもし大瀧さんがお読みになっていたら、あれ?銀次いつから麻雀できるようになったんだと首をかしげておられることでしょう。そうなんです。福生時代は麻雀できなくて、本まで買ってきて27歳頃に憶えました。その頃は点数の数えかたも憶えていたのですが。
「Mountain Of Love」かなり緊張しました。shinjig!さんに加えて、大のジョニー・リヴァース・ファンんの小松さんも目の前で聞いておられましたからね。それにしても奇跡のようなできごとです。
同時にお二人もジョニー・リヴァース・ファンが目の前におられたなんて、生涯ではじめてのことですから。


・寺田秀一さんへ

初めてのご参加ありがとうございます。
楽しんでいただけて幸いです。
そして、きっと奥様もアゲインまでいらしてごいっしょにご覧になっていたのではと思っています。
また次回のご参加よろしくお願いします。



・ 手賀沼靴磨男さんへ

「完投を期待して先発させたエースピッチャーがいきなりKOされたようなオープニング」、なんて見事な当日の出足の描写でしょうか。そこからなんとか立ち直れたのはみなさんから送られてきたプラスの「気」のおかげでした。それにしてもまさかママパパの特集にマンハッタン・トランスファーが出てくるとは思わなかったでしょう?



残念ながらおいでになれなかった、まきぼうさん、タルビーさん、次回はぜひ遊びにきてくださいね。
お待ちしています。

今朝、アゲインの石川さんのブログを拝見したら、まじめな石川さんらしくあのアクシデントがすごくショックだったようで、あとひきになっておられるような内容。心配になって電話したら、一晩休まれてすっかり元気になられていた。よかったよかった。
心機一転、次回の3月17日には、また二人三脚よろしくお願いします。