12月7日、武蔵小山アゲインで我が師、大瀧詠一さんを囲んでのラジオデイズの対談収録があった。
2007年に始まった「大瀧詠一的」というシリーズ企画。大瀧さんを囲まれるのは、ラジオデイズ主宰の平川克美さん、思想家の内田樹さん、アゲイン店長の石川茂樹さん。毎年年末に開かれ今年が5回目であった。実は石川さんから昨年お誘いを受けていたのだが、スケジュールが合わなくて残念ながらパス。
今年はラッキーにもスケジュールが空いていた。アゲイン店長の石川さんの粋なはからいで、今年は最後のほうに、ちょこっとサプライズで参加させていただくことになったのである。

石川さんはほんとにサプライズ好き、大瀧さん達に内緒でいきなり銀次の登場と行きたかったようで、その2日前に、対談は2時から3時の間に終わる予定で、終わり次第携帯に連絡しますとのメールをくださっていた。
そこで2時ちょい前には武蔵小山駅に着くようにして、武蔵小山商店街を散策しながら待つことにした。
石川さんから電話が入ったのはちょうど本屋で立ち読みをしていたとき。OKですの声。ただアゲインに入るときは厨房側の扉から入ってくださいとのことで、テッテ的に「大瀧さんにサプライズを」という作戦が継続中なのであった。

ペットサウンズ・ビルの地下でエレベーターを出ると、聞こえる聞こえる、懐かしい大瀧さんの声だ。
そっと音を立てずに厨房側からお店に入った。こっちもだんだんその気になってきた。

客席から姿をさとられないように、荷物を置いて待つことしばし、石川さんから実は今日は銀次さんがの声。よーしと勇んで入っていったら、内田さんが、平川さんが、そして我が師大瀧さんが温かく迎えてくださった。石川さんの思惑どおりであった。


$伊藤銀次 オフィシャルブログ 「SUNDAY GINJI」 Powered by Ameba


最後に大瀧さんとお会いしたのは、2006年2月13日にキャピタル東急で行われた、ナイアガラ・トライアングル vol.1の30周年にあたってのレコード・コレクター誌取材が最後だったから、実に5年ぶりのことであった。うれしいことに大瀧さんは変らずお元気だった。そしてお話も今までのようにエネルギッシュで痛快このうえなかった。

ちゃんとレポしなければいけないのだろうが、その話題は広範にわたり、しかも深い洞察がつぎつぎと、速射砲のように飛び出してくるので、まったくどこから手をつけていいのかわからないほどだ。
ひさびさに浴びる大瀧語録のスコールであった。
さすが「話し出したら止まらナイト」のお師匠さんだ。大瀧さんに比べたら、僕なんかまだまだひよっこ。
ひさびさのお師匠さんのトークによるカルチャーショックが、いまだに心地よい余韻を引いている。


印象に残っているものを断片的に書くならば、最近の巨人軍の問題や相撲の行司とは何かから始まって、いつのまにか僕が福生にいた頃の話から沢田研二さん、佐野君、杉君、トライアングルVol.2秘話へと話題は広がってゆき、はっぴいえんど、松田聖子さんを経由して大瀧詠一・風の又三郎説まで飛び出した。

その中でも、英語のhurtが「ア」と「オ」の中間で発音されるように、東北弁には豊かな中間音がいっぱいあってそれを大瀧さんが意識して歌に取り入れられていたというエピソードは目からうろこであった。はじめてはっぴいえんどの「ゆでめん」を聞いたときに感じた、大瀧詠一ファーストを聞いたときに感じた、そして「ロング・バケーション」にまでつながって行く、あの日本語なのに日本語っぽくない感覚の秘密がここにあったわけだ。


$伊藤銀次 オフィシャルブログ 「SUNDAY GINJI」 Powered by Ameba


5年前にお会いした時もそうだったけれど、大瀧さんとはブランクがあったにもかかわらず、会った瞬間からすっと話題に入って行ける。初めてお会いした時からずっとそうだった。まるで昨日も会っていて、その続きから話が始まるような感じなのである。

「ウキウキWatchingはミセス・ブラウンのお嬢さんだろ?」とのご指摘。
えっ、それはまったく意識したたことはなかったけれど、そういわれてみればそうかも。
なにせ初めてコード展開を耳コピーしたのがこの曲だったからね。水面下で影響されていたのかな。



潜在意識というのはおそろしいものだ。確かに「いいとも」のテーマに通底するものがあるね。


うれしいことに、一時期、日本映画の探索に出られていた大瀧さんがまた音楽の世界に戻ってこられたようだ。なにやらいまビートルズが登場した頃のブリティッシュ・ポップ・ロックの解明をされておられるようで、来年そのあたりの成果をラジオで放送される予定だそうだ。
アゲインでの僕の「話し出したら止まらナイト」、今進行中のフォーク・ロックが終ったら、そのあたりをとり上げようと僕も今下調べを始めたところだったので、あまりの偶然に驚いた。
でも大瀧さんの方は、直接トニー・ハッチやレス・リードとかとコンタクトをとっての事実解明だというからこれはとてもかなわない。
というか、この大瀧さんの研究成果を押さえておかないと、もうそのあたりについてはしゃべれないということは否定できないということなのだ。
大瀧さんの番組を聞いてからにしますと告げたら、うん、そのほうがいいと思うよとのお返事。
師匠にはかなわなくても、僕は僕のやりかた、銀流で伝えていこうという気持ちをさらに強めた夜だった。

終ったときにはなんと19:00をまわっていた。まさに元祖・話し出したら止まらナイト。
いつまでも聴いていたい、いつまでも続けていたいと思う楽しい集いだった。
大瀧さん、楽しいお話をどうもありがとうございました。とても啓発されました。
来年はナイアガラ・トライアングル vol.2の30th アニヴァーサリー。いつでも声をかけてください。
微力ながら、僕もvol.1のひとりとして何か手伝えそうなことがあったら馳せ参じますので。